第23話 西部奪還作戦
神秘の泉の機能を取り戻した翌日から俺達は様々な準備をしていた。
ある日は王城付近の防御陣地の建設や前線基地の建設だったり。
またある日は王城周辺の索敵だったり。
そしてようやく防御陣地と前線基地の建設を終え、今日エルフの国の西部奪還作戦が始まる。
俺は何故かそのままセシリア達に連れられ、頭にキューちゃんを乗せて地上を進軍中。
上空はクーデリア達とフィーユ達が居るから安心だ。
地上を進む部隊は何組かに別れている。ちなみに俺の所のメンバーにはセシリア、ステラ、サリーネが居る、四人組だ。
俺の装備はライフルと短剣だ。背負っている大型背嚢の中にライフルの予備弾薬や回復薬や食料が入っている。
神秘の泉が機能を取り戻した事でエルフの森も徐々に緑に染まってきた。
神秘の泉の機能が戻ったからといってアンコニュが消滅する訳では無いから進軍中に何回か戦闘が起こるだろうね。
「contact!!!」
言ってる傍から前方を歩く冒険者から敵と接触した旨を伝える言葉が叫ばれ、次の瞬間には魔法による爆発音が聞こえてきた。
数回爆発した音が聞こえた後、爆発音が止まり進軍が再開される。
こうして魔力を気にせず扱える様になったのはありがたいね。
「ま〜たアンコニュだ」
俺とセシリアの直ぐ隣を歩くサリーネが呟いた。
サリーネが言った通り目の前に数体アンコニュが居た。
既に何人もの冒険者がアンコニュの討伐に向かっているので俺達は後ろで周囲の警戒をする。
アンコニュの討伐をしつつ進み続け昼となり、昼食を摂ることにする。
まぁ昼食と言っても俺は軍から支給された戦闘糧食だけど。
「キュー?」
「え゛、キュー食べるの?」
「キュー!」
「不味いからやめときな?ほらチョコあるから」
「キュー」
「そんなに食いたいか……仕方ない、ほら」
「キュー!」
俺が手にしていたビスケットを一つ頭の上に乗るキューちゃんに差し出すとパクリと食べる。
バリバリ音を立てて食べるキューちゃん。
「グァッ」
あーあー、不味すぎて呻いてる。
口直しで急いでチョコを渡す。
俺は引き続き支給品を食べ続ける。
ビスケットの他に肉と豆のスープを食べる。
このスープの他にミートシチューや卵とハムの惣菜等色々とあり、朝、昼、夜で食べる物を変える感じかな。
しかし不味い。
「エ、エル?良かったら私の食べる?」
「いやいいよ」
「ほら、そのレーション不味いでしょ?口直しで」
「チョコあるから大丈夫だよ」
サリーネが気遣って自分のご飯を差し出してきたけど流石に申し訳無いので断る。サリーネの食べてるサンドイッチは見るからに手作りっぽいし。
それに口直しにはチョコあるから問題はない。
「貴方……よくそれ食べるわよね……」
支給された食糧を食べる俺を見てステラが言った。ステラの言い方からするには彼女達もまたこのレーションを食べた事はある様だ。
「余らせてたら勿体ないじゃん」
ただでさえ物資不足だからね。
というか
「セシリアはレーション食べなくても良いんじゃ?」
「私はエルと同じ物食べたいだけですよ」
俺と同じく無表情でレーションを食べ続けるセシリア。彼女が王族と知り、またエルフの国の半分を取り返した今、この不味いレーションを食べ続ける必要も無いのだがセシリアはそれでも食べ続ける様だ。
「ご飯食べて休憩し終えたら進軍を再開しよっか」
「そうね、エルもそれで良いかしら?」
「良いよ〜」
サリーネとステラの言葉に頷き返す。
レーションを食べ終え水を飲んで喉を潤ませた後その場に横になって休もうかと思った時、セシリアが俺の肩を掴んで自身の方へと抱き寄せてきた。その瞬間キューは頭から飛び降りて俺の膝で丸くなった。
「地べたで眠るより此方の方が寝やすいと思いますよ?」
頬にセシリアの胸に柔らかさを感じ、セシリアの鼓動と甘いその声に次第と眠気に襲われていった。
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セシリアSide
エルを抱き寄せて物の数分で彼から寝息が聞こえてきました。下手をすると一分も経って無いと思うのですが。
私の胸を枕に眠るエルの頭を優しく撫でながら周りを見ればステラとサリーネは何処か羨ましそうに私達を見てました。
「なんですか?」
「良いなぁ私にもそうやって甘えてくれないかなぁ」
サリーネの言葉にステラも頷いています。
「貴女達相手ならエルも甘えると思いますが」
「ん〜、今度試してみようかな」
実際にエルはステラやサリーネ相手なら問題なく眠れる事からかなり信頼を置いているでしょうし。
「それよりも、本当にありがとうございます。お陰で私は、私達は国を取り戻す事が出来ました」
彼女達が居てくれたからこそ、協力してくれたからこそ私はお母様と妹と再会することが出来ました。
「どういたしまして、それとエルにも感謝しないとね」
「無論です」
サリーネに言われるまでもなくエルにも感謝してます。私は私に身体を預けて眠るエルの頭を優しく撫でる。
「エルが試作機で駆け付けてくれなかったらもっと被害が増えてたでしょうね」
ステラの言葉に思い返すのは神秘の泉攻略戦。
第一次、第二次総攻撃を仕掛けたものの神秘の泉周辺に堅固に構築された防御陣地のせいで失敗に終わった苦い思い出。
空も陸もどちらも何人もの人が亡くなりました。
味方の士気が下がり、また魔力が限られている為に強固な防御陣地を攻めあぐねている時、エルが来てくれたのです。
エルが来て空の優位性の確保と強固な防御陣地の破壊をしてくれたお陰で私達は神秘の泉を奪い返せたのですから。
「にしてもまさかミサイルを持ってくるとは思わなかったけどね〜」
「そうね、一度あれが誘爆して墜落してるものね……」
「手っ取り早く防御陣地破壊できるのがミサイルしかないと言ってましたね、あと在庫処分したいとも」
エルが言うには使い所に困るらしく、また数もある事で格納庫を圧迫してるのも気にしてるみたいですが。
「そう言えばさ、セシリアってエルの事好きなの?」
「な、なんですか急に」
唐突に話題を変えてきたサリーネ。内容が内容だった為にびっくりして思わず身体が跳ねてしまいました。幸いエルとキューちゃんは眠ったままです。
「私とステラは好きだよ」
「ふふっそうね」
「ちなみにいつからですか?」
ゲネシス最強と謳われるplusfort隊の隊長と副隊長であるステラとサリーネ。
同性の私からしても綺麗で可愛いこの2人なら引く手数多でしょう。そんな2人がいつからエルが好きなのか少し気になりました。
「幼い頃、捕まってた時に助けられた瞬間からね」
そう口にするステラ。
「自分よりも大きくて、敵わない敵だと分かってても見捨てず勇気を持って相手をしてくれた。それで私達は助けられたし、その時のエルの姿は本当に格好良かったわ。その姿を見たあの時から好きね」
頬を染めそう口にしたステラの様子はまさに恋する乙女ですね。
「私は……分かりませんね。気付いたら何時もエルの事ばかり考えて、エルの姿を目で追っていますが……これが恋かは分かりません。なにせ初めての経験ですし」
「あら、そんなこと言ったら私とサリーネも初経験よ?」
「人を想う気持ちなんて人それぞれで変わるんだから仕方ないよ。その気持ちが恋なのかどうかゆっくりと時間を掛けて考えるのが良いかもね」
「そう……ですね。そうします」
今はただ、エルの傍に居るのが心地良いですから。エルの傍でゆっくりと答えを出すとしましょう。
「そう言えば、近い内に聖都で戦勝パレードがあるそうですよ」
「あ~聞いたよ〜、エルフの国奪還成功の戦勝パレードでしょ?」
ゲネシス聖都での戦勝パレード、どうやらステラ達も既に話は聞いているようですね。
「まだ半分取り返せていないと言うのに……気が早いと言うか……」
「要の地を取り戻した事で魔力も不自由無く使える様になった事から楽に取り返せるとでも思ってるのでしょう、上層部が考えそうなことよ」
私の言葉にステラはため息を吐きました。
ステラ達もどうやら上層部には思う所があるようですね。
「そろそろ行きましょうか」
「ええ、そうですね。エル、起きてください」
「エル〜起きて〜行くよ〜」
私とサリーネで耳元で優しく囁けばエルはビクリと震えた後、瞼をゆっくりと開き、身体をゆっくりと私から離します。
「おはようエル、熟睡してた所悪いけれどそろそろ行くわよ」
「はーい」
ステラの言葉に頷いたエルは大型背嚢とライフルを背負いました。エルと共に起きたキューちゃんは既にエルの頭の上に乗っています、本当に仲が良いですね。
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エルSide
セシリア達に起こされ、荷物を背負って再び進軍を開始。
にしても驚くほどぐっすり眠れた。
ステラを先頭に歩き、その後ろを俺とセシリアとサリーネが付いて行く。付いて行くは良いんだけど何故かセシリアとサリーネが腕に抱き着いてるんだけど。
「2人共?歩きづらくない?」
「「全然」」
「そ、そう……」
まぁ確かに俺も不思議と歩きづらくは無いから良いんだけど、ただ2人の胸の感触にドキドキしてしまうんですけど。
それからステラとサリーネが先頭を交代して当たり前の様にステラがサリーネ同様に腕に抱き着いてきたり、アンコニュが出て来ても先頭を進むステラかサリーネに瞬殺されたりするのを見て進む。
「今日は此処に野営地作りましょう」
じきに夕暮れとなる為、今日はこれ以上の進軍をやめ野営地を作る事とした。
野営地を作るのにもかなりの時間を要するのだが魔力を気にせず使える様になった事で魔法によって大幅な時間短縮が可能となった。
セシリア、ステラ、サリーネの3人が魔法で野営地を構築している間俺はキューちゃんと共に見張りを担当。ついでに言うとフィーユ達も上空で見張っててくれてたからだいぶ助かった。
穴を掘り半地下とし、木々で屋根を作りその上に草木を被せ偽装することで空からアンコニュに狙われにくくする。
空の優位を確保して尚且つ魔法使い達が警戒に当たっているとはいえ備えておいた方が良いだろうからね。
そうして夜になって小枝を集めたらセシリアに火魔法で点火してもらうことで灯りを確保する。
火が付いたからこの上に鍋とかを置いてステラが何やら調理をするようだ。
その間俺はレーションのビスケットを齧っている。
「出来たわよ、はいエル」
「ありがとう」
ステラから差し出されたスープの入ったお椀を受け取り、一口口に付ける。
「うっま」
滅茶苦茶美味い、キューちゃんが首を傾げた事から気になった様なので頭から手で抱え直し、口元にスープを運ぶ。
ペロリと一口舐めたら美味しかったようで今度は飲み出した。
キューちゃんが気に入った様で私は嬉しいです。
夕食を終え、俺はセシリアと共に布団に入る。
また見張りは交代制で俺とセシリア、ステラとサリーネで最初はステラとサリーネが見張る様なので安心して眠りにつけそう。
「おやすみエル」
「おやすみなさい、セシリア」
セシリアの鼓動を聞きながら俺は直ぐに眠りに就いた。




