第2話 変わる生活
兵士達に保護されて医療施設に入れられてから数日。
俺の斬り裂かれた左目はその裂傷こそ残ったが失明は避けれた。
失明は避けられないと思っていたからその辺は本当に助かった。
鉄格子の中で仲良くなったサリーナとステラとは離れ離れになって俺はシンプルな白装束を身に纏った薄っすらとハゲた小太りの中年男性に引き取られた、話を聞くにここはゲネシス神聖国で目の前の中年男性はゲネシスの重役だとか、どうせお前もロクデナシだろう。(偏見)
「君には私の下、軍部に入ってもらう」
まだ12歳の子供に軍部入れとかどういうこと。
しかも拒否権も無いとか絶対おかしい。
数日経って無事退院した俺はその日からあらゆる事を管理された。
食事は馬鹿みたいに硬いパンが1つと具の無いクソ不味スープのみ、それに対して訓練はまず体力作りとして走り込みに腕立て伏せや腹筋背筋。
訓練内容に対してご飯が酷すぎん?
と思っていたが流石に身体を作るのにこれは無いだろとなったのか次からまともな食事が出てきた。
本来体力作りにそこそこ時間が掛かるみたいだが俺はそれなりに体力があったみたいで次の訓練へ強制的に移行した。
次の訓練は剣や槍、魔力銃などをみっちりと叩き込まれる。
後なんかよく分からんマニュアル読まされた。
なんとなくこいつ俺の居た施設の関係者じゃなかろうか?やっぱりこいつもロクデナシじゃねぇか。
ステラとサリーネが俺みたいな環境に居ないことを祈るばかりだ。
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本日の訓練を終え与えられた自室(と言う名の物置)に向かう最中、夜も遅いと言うのに引き取り人の寝室の扉が少し空いており中の光が漏れている、まぁ俺には関係ないが。
「あの者、自分でロストと名乗ったようですよ」
「ロスト?は、失敗作に相応しい名前じゃないか」
関係ないと思って素通りしようとしたらめっちゃ気になる事話してるんだが。
失敗作ってなに、なんの実験したのこいつら、てかやっぱあの施設の関係者でしょ。
「父親に売られて実験体にされ憐れなものですな」
「その実験も失敗、何の価値もなくなってしまったが消耗品の兵士としてなら使えるだろう」
えぇ……俺って親に売られたのか……しかも実験も失敗とか……。
ここに居てはいけない、かといって逃げる事も叶わんし従うしか無いわけだけれども。
そうして訓練をする日々の中で遂に部隊へと配備される、きっとすり潰しの前線部隊だろ。(偏見)
夜な夜な「所詮は失敗作、消耗品だ」と言って配備してたからやっぱりすり潰しだろ。
俺の配属された部隊はなんと1名、俺1人である、部隊の意味合ってるんだよねこれ?
更に驚きなのがこの部隊?部隊でいっか……の監視人がなんと。
「おっさん!!」
「ここではクランク特務官と呼べ坊主」
あの施設の見張りのおっさんだ。
おっさん改めてクランクさん曰く、捕縛された後頭は処刑、自分も処刑されると思ったが組織の場所を密告したおかげで重鎮の娘が助かった事やおっさんの致し方無い事情から情状酌量を得てゲネシスの過激派に対する歯止めとして起用されたとか。
「坊主と仲の良かった2人もそれぞれ軍部に入ったから何かの任務とかで会うかもな」
「ステラ達も軍部に入れられたの?!」
「落ち着け坊主、あの2人は全然真っ当な所だ、そもそも坊主が過激派に引き取られたと聞いてあの2人も軍部に入ったんだし俺も直接坊主を守る為に上が無理やり配属したんだしな」
守ると言ってもある程度しか無理っぽいがなとクランクさんは苦笑いして答えた。
「俺達の顔合わせもこれくらいにしてほれ行くぞ」
「行くって何処へ?」
「坊主と共に訓練する部隊にだ、本来坊主は別の所に行く予定だったんだがまだそこが完成してないらしく、完成するまでの間は今まで通り体力づくりが主らしい」
そうしてクランクさんに連れられ訓練場へ訪れる。
訓練場は円形で作られており、円形の石壁の上にちょっとした観客席が設けられていた。
観客席の上に軍服を着た人が数人、訓練場で模擬戦をしている新兵達を見下ろし様子を見ていた。
その人達はクランクさんに気付くと立ち上がり会釈をした、それに対してクランクさんは片手を上げて応えた。
「クランクさんもしかして偉い人?」
「クランク特務官だ、言うほど偉くはないがまぁあれだ、複雑な立場なんだよ、そんな事よりもほれ、自己紹介しろ」
「あっ、ロストです、よろしくお願いします」
挨拶すれば向こうからも挨拶が帰って来るが、なんだろう、あまり歓迎されてないような気もする。
「この部隊の大半が過激派の息が掛かってる、俺も注意するが坊主も充分注意しろ」
クランクさんが小声で教えてくれた。
挨拶もそこそこに皆が訓練へと戻る。
そんな中でただ1人やる気が無さそうに素振りする子が1人。
色白で耳が尖っていて金髪ロングの美少女、確かエルフと言う種族だったかな。
金髪ロングのエルフちゃん。
名前知らんし不真面目なエルフちゃんと呼ぼうか。
「もう少しちゃんとしたほうが良いよ?上層部が見てるから」
「はぁ……貴方よりはちゃんとしてますよ」
話し掛けると面倒くさそうに此方を睨む。
一応素振りする手を止めて此方に向き直ってくれるだけ良いか。
「他の人と模擬戦はしないの?」
「する必要もないので、もう良いですか?時間の無駄なので」
何か慌ててるのか、慌てるような事があるのか不真面目エルフちゃんの視線が更に鋭くなる。
何か訳でもあるのだろうが荒ぶった状態では何事も上手くいくまい。
「そうカッカッしないで、はい」
「な、なにを━━━?!」
苛つく様子を見せた不真面目エルフちゃんの口に隠し持っていた一口サイズのチョコを突っ込む。
急な行動に驚いた表情と指先が唇に触れるという二度美味しいご褒美を頂いた後俺はその場を後にする。
「……変な人」
小声で呟かれた言葉は俺には届かなかったが、一部始終を見ていたクランクさん曰く最後に不思議そうな顔をして見送っていたとの事だから怒ってはいないようで安心した。
ちなみに俺がなんで逃げるようにその場を後にしたかと言うと。
「あれが噂の失敗作か」
「金目当てに家族を捨てたって聞いたぜ?」
「家族を捨て、金目当てで実験を受けた結果が失敗とは哀れな奴だな」
周りからこそこそと聞こえる話し声、聞きたかった不真面目美少女エルフの小声は聞こえないのにこういう聞きたくない小声は嫌にも耳に入ってくる。
周囲からの俺の印象は【大金目当てに家族を捨ててまで実験を受けた失敗作】の様だ。
「なるほど、確かにそっちの方が面白いよね」
真実を捻じ曲げより酷く、彼奴等のやりそうな事だ。
おかげで周囲の奴等は俺の話でクスクスと小さく笑ったり隠すこと無く大きく笑い上げるやつと様々な反応を示していた。
そんな嘲笑に晒されながら俺は1人黙々と木剣で素振りをしたり、腕立て伏せなどの筋トレをした。
訓練と言う名の筋トレを終えて昼食を取りに食堂へクランクさんと共に向かう。
「えっなにこれ全部食べていいの?」
「当たり前だろ」
銀の盆に載せられた様々な食べ物を見て呟いた言葉にクランクさんが呆れたように言った。
いやだってこれ、パンにスープに肉にデザート……!
滅茶苦茶豪華なんだけど?!
銀の盆を持ってクランクさんと向かい合う形で席に着く、どうせ俺の近くなんてクランクさん以外誰も来ないだろ「隣失礼しますね」……えぇ……。
ご飯を食べていると隣に訓練場で少し話ただけの不真面目エルフちゃんが座ってきた。
「なんで「たまたま私が座ろうと思った隣に貴方が居ただけです」う、うん……」
なんでわざわざ俺の隣に、と聞こうと思ったら不真面目エルフちゃんが早口で捲し立ててきた。
「それにしたって物好きでしょエルフちゃん」
「……何ですか、エルフちゃんとは」
「え?いや、君の名前知らないから」
「ああ……そう言う事でしたか」
不真面目エルフちゃんはそう呟くとスプーンを置きこちらに向き直る。
「セシリア、私にはセシリア・フォン・セレスティアと言う名前があります、特別にセシリアと呼ぶ事を許可しますよ」
ハイライトの消えた瞳で微笑みを浮かべ有無を言わさぬ圧を飛ばす不真面目「セシリア」……。
「セシリアですよ?ほらリピートアフターミー」
「セ、セシリア」
「よく出来ました」
満足気に頷くセシリア、そして手で顔を押さえ天を仰ぐクランクさん。
どうかしたのかと聞けば何もないとの事。
「坊主は知らんか……」と呟いたことだけが聞こえた。
それ以降は特に互いに話をする事もなく黙々と食事を取る。
食事が終われば再び筋トレを行う。
腕立て、腹筋、背筋、スクワット、そして走り込み。
今まで一人で行っていたそれらは今回はお供が居る。
クランクさんとセシリアの2人だ。
まぁお供が居るからといっても会話すること無く黙々と熟すだけだが。
そして夕暮れ、訓練を終え夕食を取り、風呂に入った後自分に与えられた部屋(物置)へと帰る。
ありがたい事に訓練場が自宅から近いから俺はそのまま前の部屋から通える。
最初は何もなかったこの部屋も毛布やら暖房器具やら置いて貰えて助かる。
恐らく裏で手を回したクランクさんに頭が上がらんね。
寝間着に着替えた後、暖房器具を付けて毛布に包まりながら手渡された謎のマニュアルを読む。
「喜べ、何の価値もない、無価値のお前にも価値が出るかも知れんぞ」
と言って笑いながら渡してきた時は余りの酷さについ泣きそうになったのは内緒。
あのハゲ、いつかシバいてやる。
にしてもこの試作機?のマニュアル本当に分からない。
俺は確かに自分の記憶は無いけど、この世界の事に付いてはある程度記憶は残っている。
この世界には大気中に魔素と呼ばれる目に見えない粒子があり、それを集めて魔力と呼ばれる物に変換出来る。
その魔力を用いる事で魔導具が使えるとかそんな程度だけど。
ちなみにこの暖房器具も魔導具だから火事になる恐れは無い、良きかな。
「ん?」
マニュアルを読んでいた時、外で物音がした。
昼間の奴らが嫌がらせに来たのだろうか?火でも付けられたら寝床が無くなり寒空の下で夜を過ごさなければいけなくなってしまう。
安全を確保する為に俺は寝間着の上から防寒具を着て腰に携帯ランタンを括り付け明かりを確保し外へと出て物音のした方へとゆっくりと向かう。
そして物置部屋の壁に背を預け肩を抱いて震えて座っているのセシリアが居た。
「セシリア?」
俺が声を掛ければゆっくりと此方を見るセシリア。
「貴方は……貴方も部屋が与えられなかったのですか?」
「いや……あるけどセシリアは無いってこと?」
「ええ、滅びゆくエルフに与える部屋など無いのでしょう、どうぞお気になさらずに……」
なんか凄いこと口走った気がするけど、今はそれよりもセシリアだな、昼間の様子が嘘のように弱々しいし。
俺は視線を地面へと戻したセシリアのその手を掴む、いや冷た?!
「こんな状態で過ごしたら下手すると死ぬよ?!」
今の季節は冬、いくら防寒着があるとは言え外で一夜過ごせるものではない。
「お部屋はどうするのですか?」
「どうするもこうするもないよ」
俺はセシリアの手を引いて自身の部屋(物置部屋)へと招き入れる。
ありがたい事に毛布は2枚あるからな。
「私などを部屋に入れたら貴方が罰せられますよ」
「生憎罰せられる程気にされて無いんだよね、これが」
失敗作って言うくらいだから別にそんなに気にしてないだろとは思う。
取り敢えず1枚の毛布でセシリアを包み、暖房器具の傍まで連れて行き、ホットミルクを差し出す。
ちゃんと飲めるかどうかも確認した。
「暖かい……」
取り敢えずこれでセシリアが凍死する事もないだろう。
ある程度セシリアが回復したら眠りに就こう。
壁に凭れてマニュアルを読みつつ、セシリアの様子を見る。
セシリアは暖かさからか、少し時間が経てばウトウトし始めた。
それから眠りに就くまでは直ぐで、眠りに就いたセシリアをベッドまで運び横たわらせ毛布を被せたら俺も毛布に包まりながら壁に凭れて眠りに就いた。
翌朝、セシリアからお礼を言われたが別に気にする必要は無いと伝え2人で朝食を取った後、クランクさんと合流して訓練場へ。
相変わらず3人で行動していたが昨日と変わってセシリアとの会話が少しだけ増えた。
そして1日の訓練を終えたら当たり前のようにセシリアを連れて物置部屋に籠もる、そんな日々を繰り返す。
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時の流れは速く、あれから月日は1年経ち歳は13歳。
俺の本来の行き先が完成したらしく、今日からそこへ移動する事。
これでこの物置部屋からもおさらばだね……。
またクランクさんのお陰なのかセシリアも俺と同じ所に移動するらしい。
そういう事で俺とセシリアはクランクさんが御者の荷馬車に乗って移動先へと向かった。
行き先はゲネシス南部の外れにあるハーゲン卿の館からゲネシス南西部に新設された実験施設らしい。
実験と言っても俺が受けたような人体実験では無く、武器等の兵器の実験とは聞いている。
恐らく俺に渡した訳の分からんマニュアルに関係ある物だとは思う。
そうして3時間ほど荷馬車に揺られてその実験施設に着いた。
幅広く長細い土の道にその脇に大きな建物が2つある。
取り敢えず荷馬車から降りて荷物を生活のできる方の建物に運んだ後、実験をするであろう方の建物に入る。
真っ暗なその中、魔導具を用いて明かりを付ければ中央に鎮座する鳥の形をした鉄の箱。
【試作空中戦闘支援機】
魔法の扱いが上手くない者、また魔法が使えない者が他魔法使い達と同レベルの支援を行うことをコンセプトに開発。
ちなみにこれ迄は魔法使い達が自身の魔力を消費して作戦地域に移動している。
本機の試験データを見て現在開発中の5機にあらゆる機能を追加する。
これが俺に与えられた試作機。
「やっぱり私に構ったから罰せられたのでは……?」
前例のない試験。
それに俺が宛てがわれた事を自分のせいと思ったのかセシリアが小さく呟いた。
「いや、これに付いてはセシリアを誘う前からマニュアル渡されてるかはセシリアのせいじゃないよ」
そう言えば何処かホッとした様、けれど悲しそうな、複雑な表情をしたセシリア。
自分のせいでは無いにしろ知り合いが未知の試験をやらせれると分かれば誰だってそう言う顔をするだろう、クランクさんも知った時には「止められなくてすまない……」と謝罪してきたし。
取り敢えず今日はゆっくりしよう。
そのまま俺はセシリアと一緒にこの実験棟……生活棟を見て回ることにした。
この生活棟は調理場、浴室、訓練場等が完備されていて便利が良い、それに部屋数もそれなりにあるから1人1部屋で過ごせる。
今までの扱いが嘘の様な高待遇ではなかろうか。
まぁその代わりの実験なんだろうけど。
生活棟の一室、その中でも大きい部屋。
俺達3人はその部屋に備え付けられていたソファや椅子に向かい合う形で座った。
「そう言えば坊主、お前さんは記憶が無いって聞いたが」
「え、記憶が無いんですか?」
クランクさんの言葉にセシリアはきょとんとした様子で尋ねてきた。
「無いよ、自身の名前も、家族も、自分が何をやっていたのかさえも分からない」
俺の話を聞いた2人の反応はそれぞれ。
セシリアは驚き、目を見開く。
クランクさんは小さく「ふむ……」と呟き腕を組んだ。
「なら、坊主の為に現状の説明をしようか」
そうして始まったクランクさんによるこの世界の事に関する授業。
「まず、この世界は滅び掛けているということ」
「いきなりぶっ飛び過ぎじゃないですか?」
記憶が無い、仕方ないから世界の事に付いて教えよう、からの世界滅びかけてますってそうはならんでしょ。
ただ残念な事に真面目なセシリアが苦笑いしている所から本当っぽいんだよね。
「世界が滅びかけているのは、世界各地に点在する世界に安定をもたらす要の地と呼ばれる場所が汚染したからだ」
要の地。
この世界に安定をもたらす、その地が何らかの理由で本来の役割を果たせず、その為に世界が崩壊し始めているということだろう。
「その地を汚染している原因は、異形の生命体がその地を奪い取ったからだ」
「異形の生命体って?」
「異形も異形、見たことのない生命体であり、全くの未知、だからまだその生命体の呼び名も無い、そいつらが現れたのは1年ほど前だったか……」
ふぅ……と一息つくクランクさんは椅子から立ち上がりコップに水を入れ一口飲んだ。
「はぁ……そしてその異形の生命体が現れたのはここゲネシス神聖国から遥か西の地、最初は新種の魔物と思われた奴等を侮った西の周辺諸国は揃って滅んだ、こう言っては悪いがそれだけならまだ良かったんだ、だが奴等は周辺諸国を滅ぼしただけでは留まらず侵攻を開始、遥か東のこの周辺までその勢力地を伸ばした訳だ」
再びクランクさんがコップに口をつける。
「俺の知る範囲……と言うかこの周辺で残った国はゲネシス、北のフィーニス帝国、北西のヴィンセント魔法大国、フィーニスとヴィンセントより更に北のイコル聖王国位だろう」
「え……それだとエルフはもう滅んで……?」
「正確には滅んではいませんよ、異形達に侵攻され国は無くなりましたが今も数多くの同胞が荒廃し枯れた木々の土地で戦っています、だから私は友好国であるゲネシスに助けを求めたんです」
セシリアはそう言いながら両手を強く握りしめた。
「けれど世間は甘くはありませんでした、エルフの国を滅ぼした異形達はその牙をゲネシスとその周辺諸国へ向けたんです、だからゲネシスの軍部もエルフを助ける約束をした上で私をゲネシスの軍部へと招集した、結果私は援軍を呼ぶ事も出来ずただゲネシスを守る為だけの兵に成り下がったわけですが」
つまり、今のゲネシスに他国を救う余裕はなく、助力を乞いに来たセシリアを【エルフの国を助ける】と言う約束を利用しゲネシス守らせる兵にしたと。
「ちなみにゲネシスだけじゃなく北の3カ国も異形の侵攻を受けている」
「「あっありがとうございます」」
セシリアの話が一区切り付いたのを確認し、クランクさんが話す。
長話になるのだろう、俺とセシリアにも水の入ったコップを手渡してきた。
「異形の侵攻が予想以上に強く速い為、ゲネシスは勿論、北の3カ国もその領土を幾らか失っている、その危機感から周辺諸国は連合軍を発足した、普段ゲネシスと仲の悪いフィーニス帝国やイコル聖王国でさえ連合に加わったんだ、そして対異形の反攻作戦の一つが坊主に与えられた試験っぽいな」
「は?」
そんなに重大な作戦なのこれ?
「異形共の侵攻を受けた4カ国、連合は資源も限られている、だから試験機は坊主の1機のみ、他の開発中の機体も5機しか現状作れんのだろう、坊主の持ってたマニュアルや資料をみた限り試験機と現在開発中の物は連合がそれぞれ資源を出し合ってようやく足りるみたいだからな」
滅茶苦茶重要じゃん……どうしようやりたくなくなってきた。
「魔法使いや魔術師も動員しているが、戦場に出るのは基本魔法使いばかりで魔術師は国のお偉いさんが自分の傍から離したがらんからな」
「質問」
気になる事があり一度クランクさんの話を遮り手を挙げる。
「どうした?」
「魔法使いって何?あと魔法使いと魔術師の違いは……?」
「ああ、そうか悪かった、魔法使いと魔術師の違いは主に魔法の熟練度の差だ、魔法使いは魔法の使える歳若い娘、主に15歳〜20歳を指すはずだ、魔術師は魔法に精通した者で歳は特に決められて無いはずだ、魔法についてはそうだな……セシリア」
「はい、これが魔法です」
クランクさんに促され、セシリアが応じて右手を胸の前へ出し手のひらを上へ向けた。
するとセシリアの手の上で風が集まり球体状にぐるぐると回りだした。
「っとまぁ表向き結構重要な試験ではあるんだが、正直に言って上の連中は期待していない」
「だろうね」
「え……?」
クランクさんの言葉に俺は納得したがセシリアは理解できて居ないようだった。
「上の連中はあくまで異形の侵攻を遅れさせさえすればそれで良いんだ、自分が死ぬ迄、自分が楽しく過ごせれば後は知らんって感じだろうよ、試験機のテストパイロットに坊主が選ばれたのも失敗しても損失が無いって判断からだろう」
そこまで言ってクランクさんは大きく息を吐いた、やはりクランクさんとしても面白くないのだろう。
そうしてこの世界の事もある程度知れてなおかつ一度に多く聞いても分からんだろうっと言うことで今日はお開きとなりそれぞれの自室へと戻って移動の疲れを癒すこととなった。




