第19話 エルフの国奪還作戦始動
皆の家族や親しい人達が訪れて1週間が経った頃。
ゲネシスの基地、その会議室にて俺達は集まっていた。
俺は後ろの方に座っていて隣にセシリアとサリーネが座り頭の上にキューちゃんが乗っかってる。
今からこの会議室で行われるのは作戦会議、そうエルフの国奪還作戦が始まるんだ。
「知っての通り明日いよいよ大規模な作戦が行われる。そう、エルフの国の奪還作戦だ」
前で喋るのはクランクさんだ。
クランクさんは片手で束となった書類を持ちながら俺達の方を見て話す。
「手始めにエルフ領内の前線基地のある北東部の制圧を行う。その後北東部の防衛と南東部の制圧の二手に分れる予定だ。そしてエルフ領東部完全制圧してようやく、要の地神秘の泉の奪還を開始する事になっている」
「何故直ぐに神秘の泉を奪還しないんですか?」
「背後からの挟撃を防ぐ為だ、またエルフ領東部の前線基地が本作戦の要であるためそこを奪われると本作戦は根本から崩れることになる」
質問に答えたクランクさんが言ったようにエルフ領内の前線基地が今回の要だ。
あの基地に設置した神の結晶苗木による魔力の回復が可能になった事があの基地の存在意義を大きくした、それこそエルフの国の奪還を現実的にするくらいに。それ程までに魔力の存在は大きいんだ。
元々連合上層部が提示していたエルフの国の奪還作戦は無理難題、今まで魔力に頼っていた者たちが魔力無しで取り返すなど不可能に近かっただろう、魔力無しで取り返すことが可能なら国が奪われる事も無かっただろうし。
東部の制圧は挟撃を防ぐ為、要の地の攻略中に背後を攻撃され部隊が瓦解、全滅等したら取り戻せる物も取り戻せなくなる。
今回の作戦に参加する人数も大きく失敗したら次は無いと思っていた方が良いだろう。
「また本作戦は地上、空中、どちらも重要だ、特に制空権を取らなければアンコニュから一方的に地上部隊がやられかねん。空中戦力の要はリュミエール隊、バナール隊だ、両隊気を引き締めろ」
「了解」
「「エル?」」
クランクさんの言葉にフィーユ達リュミエール隊とクーデリア達バナール隊が返事をした。
だが同じバナール隊の俺だけ返事をしなかった事から隣に座るセシリアとサリーネが不思議そうに顔を覗き込んできた。
また俺の近くで話を聞いているステラやエミリー達も振り返って不思議そうに俺を見た。
普段の俺なら必ず返事をしているから不思議に思われたようだね、けど俺はそれに答えない。
何故なら今まさにクランクさんが俺が返事をしなかった理由を言うからだ。
「また……今作戦にバナール1の参加及び交戦許可は降りない」
「えっ……」
クーデリア達から驚きの声が上がる。クーデリア達は勿論ステラ達も俺も参加すると思っていたから非常に驚いたようだね。
驚いて此方を見るのは仕方ないけどまだ作戦会議は終わってないから前見ましょうね。
クーデリア達に前向いてねって手で合図すると不服そうに前を向く、テレサ?頬を膨らませても決定事項は覆りませんよ?
そうして作戦会議も終わり会議室を出る。
自室に戻ろうかと思ったがセシリアとサリーネに両腕に抱き着かれている為動く事が出来ない。
暫くそのまま廊下の隅で動けないでいると会議室の出口からクーデリア達が出て来きて真っ直ぐと俺の所に来る。
「エル、参加しないなんて聞いていませんが?!」
頬を膨らませ、納得いきませんっ!と言いたげな表情をしたクーデリアが詰め寄る。
なんならソフィー達は勿論、フィーユやエミリー、ステラやユースティア達も明らかに不満を募らせている。
「所属がバナール隊とはいえ俺の本来の役割はテストパイロットだからねぇ、失敗作には任せられないんいひゃい」
「次失敗作と言ったら頬を引っ張りますよ」
「もうひっひゃってましゅ!」
どうして俺が参加できないのか端的に告げたらセシリアに頬を両側から引っ張られた。笑顔が怖いです。
「ごめんなひゃい」
謝罪をする事でようやく俺のほっぺは解放された。
「まぁ今回は俺は参加出来ないけど、クーデリア達なら問題ないでしょ。ただ焦らず連携を崩さないよう気を付けるんだよ」
以前はそれで危機に陥ったからね、焦りさえせず的確に対処出来れば問題ない。
それに今回はフィーユ達リュミエール隊の他にも魔法使い達が大勢居るから大丈夫でしょう。
「ほら、昼から出発でしょ?皆準備しないと」
「帰ってきたら覚えていて下さいね」
「何を?!」
帰ってきたら俺はクーデリアに何をやられるの?!
俺の判断じゃどうにも出来ないからお手柔らかに頼みたい所ですな……。
話を終え、支度をする為皆自室へと戻る。
俺も取り敢えず自室に戻る。
「あ、これを渡さなきゃ」
自分の机の上に昨日の夜、夜更かしして作っていた御守りが置いてあるのを見てセシリア達に渡す事を思い出す。
奇跡の力を込めて作ったから気休め程度の御守りにはなるよね?
皆には大きな怪我とかもなく無事に戻って来て欲しいからね。
御守りの入った入れ物を抱えて自室の外へと出る、準備中に邪魔しちゃ悪いから廊下の隅で待ってよう。
キューちゃんを頭に乗せたまま体感にして十数分待っていると俺の部屋の対面にあるセシリアの部屋の扉が開く。
「あら?どうしたんですかエル」
「セシリア達に御守りあげようと思ってね」
廊下の隅でキューちゃんを頭に乗せて待つ俺に首を傾げて聞いてきたセシリアに両手で持つ御守りを見せる。
「この数を手作りですか、本当に良いんですか?」
「うん、セシリア達に無事に帰ってきて欲しいからね」
「ふふっありがとうございます♪」
御守りを手に取りお礼を言うセシリア、その嬉しそうな笑顔につい見惚れてしまった。
その後順番に部屋から出てきた皆に御守りを渡していく。皆嬉しそうに受け取ってくれて良かった。けどサリーネは喜び過ぎじゃない?抱き着く程に嬉しいかな。
勿論フィーユのリュミエール隊のお姉さん達にも前線基地へと赴く整備員さん達にも渡す。
その後皆で昼食を食べ出発まで間もなくとなった。
作戦参加者はステラ達が来た時の様にコンテナに入りフィーユ達リュミエール隊が前線基地基地まで運搬する。その護衛にクーデリア達バナール隊と他に魔法使い達が付く様だ。
「シャルルさん、前線の指揮、お願いします」
「ふふっお任せ下さい」
シャルルさんとカトリーナさんは前線で指揮を執るとのこと、テレサ達が頑張っているのに自分だけ安全な後方でじっとしてられないと言って申し出てくれた。
ちなみに基地を訪れていた他の人達はちゃんと自宅に帰宅してもらいました。
挨拶も程々にシャルルさん達と別れクーデリア達の下へと向かう。
格納庫の中に鎮座する一式戦闘機のコックピットに入り準備をしているクーデリア達。
クーデリア達は格納庫に俺が入って来るのを見ると直ぐにコックピットから降りてきて俺の方へと駆け寄ってきた。
また此処で今後について皆で話し合っていたのだろう、ステラ達も居て同様に俺の所へ集まった。
「分かっていると思うけど、明日から行われる大規模作戦においてクーデリア達のミサイルの使用は禁止だからね」
「はい、分かってますので大丈夫ですよ」
俺の言葉にクーデリアは頷いて答えた。
「なぜ使用を禁止したのですか?」
無誘導ミサイルを使用しない事にセシリアが疑問を抱き聞いてきた、他にもフィーユやステラ達も頷いた事から気になるようだね。
「俺達の目的はセシリア達の故郷の奪還だ、更地にするのが目的じゃないからね」
無誘導ミサイルは外すと落ちて地上で爆発を起こす。それを考えなしに大量に放ってしまえばたちまち更地になってしまうだろう。
また外した際に地上部隊を巻き込む恐れもある為使用を禁止した。
そもそも試作品だから使わせないけどね、危ないし。
「さぁそろそろ出発の時間だ、全機離陸スタンバイ!」
「了解!」
俺の掛け声にクーデリア達は自身の一式に乗り込む。
「暫しのお別れですねエル、キューちゃんも」
「キュー」
「うん、セシリアも気を付けてね」
「エルも無理はしないで下さいね」
そう言ってセシリアが抱き寄せてきたので俺も両腕をセシリアの背中に回して互いに抱き合う。
数秒、十数秒そうした後どちらからとも無く放せば次にサリーネが抱き着いてきた。
その後ステラ、フィーユ、エミリーと抱擁を交わしセシリア達を見送った後滑走路に出る。
俺は皆と一緒には行けないから最後に見届けることにする。
最初は試作機で先導しようと思ったけどまだ飛べる状態では無いので断念した。
Crank《バナール2、バナール3離陸スタンバイ。離陸を許可する》
滑走路にて待機したクーデリアとジェームズはクランクさんからの指示に従い滑走路を駆り空へと飛び立つ。
続いてソフィー、ヴィクトリア、テレサと続いて空へと上がる。
クーデリア達全員が飛び立つ時に手を降っていたから俺も手を振り替えして見送る。
その後フィーユ達がコンテナを浮かび上がらせ空でクーデリア達と合流しエルフの国へと向かっていった。
「行ってらっしゃい」
《行ってきます》
通信機でそう告げると皆が同時にそう言った。
俺はそのまま皆の影が見えなくなるまで外で見守り続けた。
どうか全員無事に帰ってきますように。
皆を見送った後俺は滑走路から試作機が保管されている格納庫へと足を伸ばす。
翼が千切れた試作機は実際は既に翼の修理は終わっており今は新たに改修を施している最中だ。
改修の内容は武装の追加や部品を最新の物への交換等。
また原動機およびブースターユニットを一式の改良型に変換した為最大速度も加速度も上がり最大加速度では誰も追従出来ないだろう。
武装は今までの機首の機関砲×2門に追加して両翼に12mm機関銃を1挺ずつ装備した。
それと墜落の件から両翼の前面に魔力の刃を展開する装置を取り付けることになった。これにより前の様に翼でアンコニュを引き摺っても魔力の刃を展開することで撃破出来るようになる。
更に装甲材も最新の物へと変えるようだ。
往来の物よりも頑丈で尚且つ軽量化に成功した装甲を付けることで更に速くなっちゃった。
ちなみにだけど整備員は全員エルフ領の前線基地へと行ってこの基地に整備員は今は居ないからセレーネさんとオリヴィアさんと俺の3人で改修を施さなきゃいけない。
と言ってもセレーネさんは奇跡を、オリヴィアさんは魔法を惜しみなく使うから効率が落ちる事は無かった。
ちなみにキューも工具とかを咥えて運んできてくれたよ。
そうして何日も掛けてようやく試作機2型が完成した。ちなみに1型はカインが墜落した後の改修1回目だね。
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奪還作戦開始から数週間。
セシリア達はエルフ領内の南東を奪い返す事に成功したようだ。
また数日前からは神秘の泉のある要の地攻略戦が行われているらしいが戦果はいまいちのようだ。
なんでも要の地へと侵入する為の道に防御陣地を設けていたらしくそれがアンコニュに利用されており中々攻略が出来ないとのこと。
その間俺は改修を施した試作機の試運転をしていた、思っていた通り最大速度や加速度が大幅に向上していた。速すぎてビックリしたから数日掛けてその速度に慣らしたのは言うまでもないね。
そんな俺は試作機の出発前の点検を行っている。
両翼の下に2つずつミサイルを装着した、また胴体の下に魔力貯蔵タンクを追加装備する事で継戦時間を伸ばした、機関砲等の弾丸も補給はバッチリ。コックピット後方にもしもの時のための短剣や短銃、弾丸に緊急医療セットも乗せてあるし食料も少しながら乗ってる。
「準備完了、何時でも良いよ〜」
Crank《よし、それじゃそろそろ発進するか》
クランクさんから許可が出たから格納庫の扉を開ける。
「オリヴィア、貴女後部座席に乗ってエルと一緒に行って来なさい」
「分かりましたよ」
セレーネさんに言われてオリヴィアさんが後部座席に乗り込む、またキューちゃんも俺の服に入り首元から顔を覗かせている。
そんな中、俺は試作機を外へと出し滑走路へと向かう。
さて、俺はこれから何処へ行くのかと言うとエルフの国である。
エルフの国で要の地の攻略に手間取っているセシリア達への加勢だね。
「命令違反だね」
Beo《帰ってきたら3人で始末書でも書くか》
Crank《そりゃ良いな、ついでに補給品でも要請してやるか》
他愛のない話に3人で笑う。
Crank《バナール1離陸スタンバイ》
Beo《ベオよりバナール1へ、離陸を許可する》
「了解」
離陸許可が降りたことで俺は試作機を発進させ空へと飛ぶ。
さぁ、セシリア達を助けに行こう。




