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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
第1章 始動

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第16話 墜落した先

エルフ領内の前線基地・指揮所。


アンコニュの大規模攻勢を凌いだと言うのに指揮所内の雰囲気は陰鬱として誰も元気では無かった。

それもそのはず、エルが落ちたのだ。

セシリアを始め全員が気が気でないだろう。

一度直ぐにリュミエール隊がエルの救出に向かったがアンコニュの妨害により救出には至らなかった。

アンコニュの妨害は戦闘行動のみならず墜落現場付近に濃霧を発生させた。

リュミエール隊の一部は今なおアンコニュとの交戦をしている。


「どうすれば……」


「っ……守備隊は私が指揮します!セシリア様たちはプリュフォール隊と共にエル君の捜索へ向かって下さい!」


酷く落ち込むセシリアにカナリアがそう告げる。


「けど、私達が居なくなって守り切れるの……?」


「あの役立たず共でも基地の防衛なら出来るだろう、なにせ自分で1流と言っているのだ、それにもうじきA級に昇級する奴もいるんだ」


サリーネの言葉にカナリアが冷たくそう言った。

カナリアも冒険者達に思う所があるのだ。

そうしてエルの救出の為の部隊が編成される。

ステラ達プリュフォール隊をメインとしセシリアが同伴、フィーユ含むリュミエール隊も対空要員として付いて行く。


だがバナール隊はそうも行かない。

雨により滑走路は泥濘み戦闘機の離着陸が不可能なのだ。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……私が……私が、殺した……」


「しっかりしなさい!彼は死んでないッ!この程度で死ぬ筈がないわッ!!」


酷く落ち込むヴィクトリアにクーデリアはそう告げる。

なんの確証もない、けれどクーデリア達は縋るしかないのだ。

エルが生きているという事に。


「バナール隊、貴方達もプリュフォール隊に同行しなさい」


地上の戦力としては頼りないが此処でじっとしているよりもステラ達に同行した方が彼女達の精神的にも良いだろうと判断したカナリアがそう告げる。

こうしてセシリアとクーデリア達バナール隊、フィーユ達リュミエール隊、そしてステラ達プリュフォール隊によるエルの捜索が開始された。







エルSide



「グッ……クゥ……」


最初に感じたのは痛み。

痛みによって意識が徐々に覚醒する。

ぼやける視界、身体中が痛む中、何とか身体を起こす。

鮮明となった視界、目の前は少量の血が飛び散り汚れている。


「あ、あぁ、俺落ちた、のか……」


ヴィクトリアを助ける為にアンコニュへと接近しその後見たことの無い攻撃を受け試作品のミサイルか誘爆したのを思い出す。


「通信は……駄目だ壊れてる……」


取り敢えず生存報告をしようと思い通信装置に手を伸ばすがうんともすんとも言わない、試作機の原動機が止まっているからかと思って稼働させようとするが試作機の方もうんともすんとも言わなくなっていた。


「取り敢えず離れるべきか……」


動かない試作機の中に居たらアンコニュに見つかった際に一方的にやられるだろうし、仮に動いたとしても森の中では木々が邪魔で飛び立つ事は不可能。

俺がどれほど気を失っていたかは分からないが、キャノピーの外を見た感じアンコニュの姿は見当たらない、アンコニュが現れる前に別の場所に身を隠すべきだろう。


落下の衝撃によってか所々割れてたりヒビが入ってたりするキャノピーを開く。

開いた途端コックピットの中に雨が入り込む。


「クソ……右腕が、可笑しいな」


動かない訳では無いが動かす度に激痛が走る、仕方ないが左腕だけで降りるとしよう。

左腕だけでコックピットの(ふち)に手を掛け、乗り越える。

だが身体が痛み、片腕だけでは満足に支える事が出来ず、また雨に濡れた試作機は滑り転落してしまう。


「ガァァ、グゥ……!」


背中が地面に叩き付けられ、激痛が身体中を走る。身体中が雨で泥濘んだ地面で汚れるがそんな事は気にしてられない。

何とか身体を起こして右腕を抑えつつ足を引き摺るように歩く。

振り向くとそこには大破した試作機。

何とか後で回収して修理できれば良いけど……。

取り敢えず今はこの場を離れる事を優先するべきか。俺は足を引き摺りながら再び歩き出す、途中水溜りを覗くとどうやら頭からも血が流れているようだ、恐らく墜落した時に頭を強くぶつけたのだろう。


それにしても包帯や武器は勿論食料も無い。

墜落後の事も考えて備えた方が良かったな……。


取り敢えずは雨を凌げる所があれば良いけど。

雨に打たれながら歩いていると奥に白い何かが見える。

近付くと白い鱗に包まれた生物だと分かった。

大きさ的には俺の指先から肘程の大きさ。

種族は分からないな、なんかトカゲみたいに見えるけど。


白いトカゲは俺が近付いても動く気配がない、死んでいるのかと思ったが微かに身体が動いていることから生きてはいる。

より近くで見てみるとその身体は酷く損傷している、縄張り争いか何かで負けたのだろうか。


「……治してみるか」


白いトカゲの近くで膝を付いてしゃがみ込む、足が汚れるが今更なので気にしない。

左手を白いトカゲの上に翳し力込めれば数秒後に赤い光が灯る。

リュミエール隊のお姉さん達を癒してから上手く奇跡の行使が出来るようになってきたね。

白いトカゲの傷がみるみる癒えていく、そして完治したのを確認したら立ち上がる。

白いトカゲは癒せたけど何故か自分はあまり癒せていないな……。


足を引き摺って歩き出しその場を離れる。


「キュー」


後ろから何かの鳴き声が聞こえ足を止めて振り向けば先程まで地に伏せていた白いトカゲが此方に振り向いていた。


「怪我は治っただろ?ほら、早く親か仲間の所に帰りなさい」


そう言って俺は再び歩き始める。

言って思った、人の言葉が理解できるわけも無いかと。

身体中が痛いし自棄になってるのかな。


「キュー」


数歩歩いた後、またあの鳴き声がした。

足を止め振り向くとあのトカゲが此方に歩いて来ていた。

たまたま行く方向が同じだけなのだろう、となると此方にあのトカゲの仲間が居るのか。

取り敢えず進路を変えよう。


「キュー」


また鳴き声が聞こえた。

振り向くと同じ様に進路を変えたトカゲの姿が見えた。

まさか付いてきているのか、そう思って立ち止まっているとトカゲは4本足でゆっくりと俺の足元まで寄って来たかと思えば顎を足に擦り付けた。

なんか猫みたいだな。


「……一緒に行くか?」


「キュー!」


なんとなくそう告げると鳴いた、先程よりも元気な気がするけど気の所為だろうか。


「キュー、キュー」


終いにはトカゲは立ち上がり前足2本で俺の足にしがみついてくる始末。猫かな。


「分かった分かった、連れてくよ」


「キュー!」


さっきと同じ様にしゃがみ込んで左手でトカゲを抱きかかえる。重くなくて良かった。

さて一緒に過ごすしトカゲと言うのも悪い、何か名前を……そうだ。


「【キュー】、キューって鳴くから【キュー】、安直だけどどう?」


「キュー♪」


気に入って頂けたのか、鳴いた後頬を舐められた。


「よろしくね、キューちゃん」


「キュー!」


その後キューを抱きかかえながらゆっくりと歩く。抱きかかえてて思ったけどキューが滅茶苦茶大人しくて助かる。


そうして雨を凌げる場所を求め歩き始めて数分後、再び奥に何かが倒れている。

黒い何か大きさはキューの倍以上ないかなあれ。


「まさかの人……?」


近付くとそれは人の形をしていた。

泥濘みに倒れる藤色の長髪に黒色とんがり帽子と黒色のマントを羽織った綺麗な女性。

マントや帽子は所々破け、衣服などに血が滲んでいる。

よく見ると右腕がなくなっててそこから血が大量に流れている。


「大丈夫ですかっ!」


「…ぅ……」


キューの時と同じ様にしゃがみ込み、キューを降ろして女性に話し掛ける。

薄く開かれた瞼から綺麗な水浅葱みずあさぎ色の瞳が覗くが直ぐに閉じられた。

呼吸も荒い。このままでは不味い。

俺は急ぎキューに先程やった様に左手を翳し力を込める。

右腕は未だに動かすと激痛が走る為左手だけで行使する。

左手に赤い光が灯り目の前の女性を包み込む。

より強く、眩しい程に光が灯り収まった後女性をみれば右腕は欠損が元通りに治り、所々負傷していた怪我も完治した。

苦しげな呼吸も表情も安らかになったのを確認出来ホッとした。


後はこの女性を取り敢えず目が覚めるまで安全な所に連れて行かないと。

女性の腕を肩に回し動く左手で女性の身体を支えて歩き出す。

足が引き摺られて汚れるけどそれは我慢してもらおう。


「キューー!」


「付いてこいってか?」


「キュ!」


降ろした時に何か探しに行っていた様だ。

女性を支えて歩きながらキューの後を追うと洞穴を見つけた。


「助かるっありがとう!」


「キュ!」


洞穴に入り女性を横たわらせる。

とんがり帽子とマントは外させて貰った。

マントの下はネックラインが深く大きくカットされ肩と胸の上部を露出した黒いドレスだった。

雨により水分を吸った事で体のラインが分かるほどまでにドレスが肌に張り付いてる、何とか乾かさないと。


「さ、寒い……」


暖を取れるもの探していたら女性がそう呟き、自分の身体を抱きしめ震え始めた。

不味いっ急いで暖を取らなきゃ。


「キュ」ボッ


何とかして女性を暖めようと思ったらキューがいつの間にか集めた小枝に口から火ぃ吹いて暖を確保した。


どう見ても俺の知るトカゲじゃないな……なんだろ……。

取り敢えず女性を暖めるために危なくない位置まで再び移動させとんがり帽子とマントもいつの間にかキューが拾って来ていた枝に引っ掛けて乾かす。


キューが居てくれて助かった……。


安心したらなんか眠たくなってきた。

身体の痛みもあり俺は取り敢えず壁に背を預けて眠る事にした。

疲れもあってか普段なら絶対眠れないであろう状況でも直ぐに眠りに就けた。

そうして目を覚ますとキューの姿も女性の姿もまるで夢のように跡形も無く消えていた……。
























なんて事は無くキューは普通に俺の横で丸まって寝てた。

女性は目を覚ましたらしくとんがり帽子とマントを着用して座っていた。


「起きたみたいね、全く魔女を助けるなんて物好きね、でもありがとう。けどねぇ……魔女の前で眠るのは良くないわよ?」


「はい、次から気を付けます」


魔法使いでも魔術師でも無い、魔女がなんなのか知らないから何がいけないのか分からん……。


「知らなかったみたいだけど……魔女と知って怯えないなんて変わった子」


魔女がなんなのか知らないからね。


「私の名前はオリヴィア、改めて、助けて頂きありがとうございます」


「私はロストって言います、困った時はお互い様なので気にしないで下さい、あ、あとこの子がキューちゃん」


「キュー?」


自分の自己紹介のついでに横で眠るキューを紹介しようと思って左手で抱きかかえ膝に乗せる。

ちょうど俺の影で見えなかっただろうし。


オリヴィアさんはキューを見るや否や目を丸く見開いて驚きを顕にした。


「はっえっ古龍種!?」


古龍種って何?、というかやっぱりトカゲじゃなかったよ。

まぁ龍種という事だけ分かってればいいか。


「警戒心が高い古龍種の子供が懐くなんて、君何したの?」


「懐くなんて、ただ怪我治しただけだよ、それにそんな警戒してないでしょ、ねキュー?」


「ガルルゥ!」


「めっちゃ威嚇してるぅ……」


俺の膝上にいるキューはオリヴィアさんに向かって牙を剥き低く唸って威嚇してる……。

えぇ……なんでぇ……。


「色々と聞きたいことがあるけどまずはどうやって私の無くなった右腕を治したのかしら?」


「奇跡の行使です」


「ごめんなんて?」


「奇跡の行使です」


「キュー」


なんだろ、オリヴィアさんが頭を抱えてしまった。訳が分からずついキューと顔を見合わせてしまった。


「そ、そう、あ、ありがとうね」


「?いえいえ気にしないで下さい」


「そのぉ……対価は何をお渡しすれば……」


「?いえ何もいりませんよ」


どうしよう、また頭を抱えてしまった。


「ち、ちなみにだけどどうして自分には使わないの?」


「使ったんですけど効果がいまいちなんですよね」


本当になんでか知らないけど自分に対して回復の奇跡を行使しようとすると出来ないんだよね、他人には問題なく出来るのに。


「雨も止んだ様ですし僕はこれで失礼しますね、それでは」


オリヴィアさんにお別れの挨拶をして壁に寄りかかりながら身体を起こし歩き出す。

キューも俺の歩く速度に合わせてくれてる。


「こーら、待ちなさい」


お別れだと思ったら何故か左腕を掴まれた、かと思ったたらオリヴィアさんは自身の首に俺の左腕を回し、右手で俺の腰を支える。


「そんなボロボロの身体じゃ歩くに歩けないでしょ、助けて貰ったお礼に送ってってあげる」


そう言ってオリヴィアさんは俺の歩く速度に合わせて俺の身体を支えながら歩く。

助けてもらえるのは助かるけど、方角わかんねぇだよね……雨が止んだとはいえ未だに曇り空で太陽見えないし。

その旨を伝えたらため息を付いた後行き先の国を聞かれたのでゲネシスと答えた。

本当はエルフの国なんだけどエルフの国だと多分もうここエルフの国内だし余計混乱するだけだよね。


そうしてしばらく歩いていたら前の方に複数の人影が見えた。

向こうも此方に気付いたらしく駆け寄ってくる。


「あっ皆……」


「エルっ!無事で……?!」


「「「「「「?!」」」」」」


どうやら俺を探しに来てくれたセシリア達と合流出来たけれどセシリアが言葉の途中で固まってしまった。後ろから来たステラ達も何やら固まっている。


視線を追うとどうやら俺の頭の上にいるキューと俺の身体を支えてくれているオリヴィアさんに視線が行っているようだ。

なにはともあれ皆と合流出来て良かったぁ……。


その後再起動した皆とオリヴィアさんも含め一緒にエルフ領内の前線基地へと向かった。

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