第14話 エルフ領前線基地作成
ステラ達との合同訓練から数日。
エルフ領内に基地を作るにあたり、まずその拠点までの道中の安全を確保する為、捜索をしアンコニュを徹底的に倒していく事となった。
ステラ達とセシリア達を主力とし、フィーユ率いるリュミエール隊とクーデリア率いるバナール隊が上空の警戒に当たる。
また飛行部隊は夜間偵察も行う為部隊を幾つかにに分けて交代で空を飛ぶ。
その中でも俺は何故か深夜帯をやって欲しいという声が大きく夜間飛行を任された。
セシリアやステラ達は反対だったけど今回の前線基地周辺の安全確保に参加した魔法使い達や兵達から強く要望が出た結果俺が深夜帯の飛行を任された。
フィーユが言うには俺が上空に居るだけで地上の主力部隊が安心して眠りに就けるとか何とか。
俺よりかフィーユのが安心して眠れると思うんだけど。
また深夜帯の飛行には共にソフィーとヴィクトリア、それとエミリーと少人数の魔法使い達で一緒に上空を飛ぶ。
また補佐にはベオが付いてくれた。
夜間飛行中は当たり前だけど真っ暗で、けど眼下に広がる暗闇にぽつりぽつりと焚き火の明かりが見えた。
焚き火は見張りの人が起きてるから寝処に燃え移る心配もない。
また見張りがいる理由は上空を飛行して偵察してると言ってもそれは対空中が主で真っ暗な中迫りくる地上のアンコニュまでは発見が遅れるだろうし、幾ら通信機があるとはいえ寝てる人を起こす機能までは無いから。
アンコニュに関しては索敵機能があるから暗闇でも分かるには分かるんだけどね。
まだ大規模作戦が始まった訳では無いが地上部隊は連合国各地から集まった部隊だ。
と言っても総勢300名程で多い訳では無いけど。
そうして前線基地の建設予定地の丘上までの道中の安全を確保したらようやく前線基地の建設が始まる。
ちなみにこの数日間調べた結果アンコニュの支配地域に置けるアンコニュの自然発生は無かったので問題なく基地を建設出来るよ。
もしこれで自然発生してたら色々と問題が発生してただろうから良かった。
部隊を分け、基地建設地の木々の伐採、地面の整地を行う。
またフィーユ達魔法使いには木材等の資材を運んでもらい、バナール隊がその護衛に付く。
ちなみに俺は前線基地の建設予定地で作業する。
「護衛が付いてるとはいえ絶対はないから、最悪の場合は資材を捨ててでも逃げるんだよ」
フィーユ達にはそう伝えた。
作戦を成功させる為に基地の建設も大事ではあるけど何より皆の安全が最優先だからね。
取り敢えず見張りと守備隊を配置しつつ、セシリア達の指示のもと木々の伐採を行う。
伐採した木々は基地の建設材料とかに用いるので別の場所に集めて置く。
またフィーユ達によって運ばれてきた木材も大きさ別に分けて置く。
エルフや魔法使い達がいるから木々の伐採と抜根は難なく終わり、次に地面の整地を始める。
流石に根が飛び出ているままでは少し邪魔なのでこういったものは取り除く。
セシリア達に聞きながらどうしても必要なものだけ残して撤去し地面を綺麗に整えたらいよいよ建物の建設である。
と言っても何から手を付ければ良いか分からなくなるのでセシリア達と話し合い優先順位を付けて建てていくことにした。
まずはアンコニュの攻撃を阻止し自分達の安全を確保する為の防壁の構築。
ここで先程伐採した木々を使うよ。
穴を掘り、掘った穴に木を突き刺し埋めて固めていく。
それを陣地の外に円を描くように配置してその木柱の間に木を横倒しで設置し木柱と結び付ける事で簡易的な防壁が出来る。
その日はこれで日が暮れたので作業を中止、灯りと暖を確保する為に焚き火をする。
俺の所にはセシリアとカナリアさん、ステラ達プリュフォール隊が居る。
フィーユ達は上空の警戒、クーデリア達は魔力補給の為に基地へと帰還、その後眠りに就くだろう。
「今日はお疲れ様」
「エルこそお疲れ様」
プリュフォール隊には個々に別れた上何人かの兵を引き連れてこの周辺の警戒をさせていたから労ったのだけど何故か俺にもサリーネから労いの言葉が返されたから俺は首を傾げる。
「エルさんが直接現場を回って指示を出し、他の方と一緒に作業していたのを知っていますからね」
「セシリア?」
「私は一言も言ってませんよ?」
「カナリアさん?」
「私も言ってないぞ」
2人共笑顔で返答してきた、2人が言ってないなら誰が……?
「私達と一緒に警戒にあたってた冒険者の仲間からよ」
コップに入った飲み物を飲んだ後ステラがそう言った、少し気になる言葉が出てきたな。
「冒険者ってのは何?」
「冒険者とは私達兵とは違い個人で活動する方ですね、主に冒険者ギルドという組織で依頼を貰い、その達成報酬とかで生計を立ててると思えば良いかと」
「依頼を自分の意志で受けれるのもポイントだよね、依頼主は個人は勿論街や村、時には国からも出るよ、今回はゲネシスからの依頼みたいだから国からの依頼に来てくれた事になるね」
「また討伐した魔物を売ってお金にする事もあるわね、アンコニュが現れてから魔物も数が減ったけれど被害がゼロになった訳じゃないもの」
セシリアの説明にサリーネとステラが追加で説明してくれた。
俺はコップに入った水を一口飲んだ後気になった事をもう一度聞いてみる。
「皆やけに詳しいけど一般常識だったりする?」
「常識っちゃ常識だが、俺達は少なからず関わりが合ったからな、少数精鋭の俺達は手が足りない時に頼ったりしてたからそこそこ仲も良いんだ」
俺の疑問に答えたのはアルドル。
なるほど、常識もあるけれど関わりがあってようやく分かった事もあるのね。
「あっエル、明日の話だけど」
「なにかな?」
思い出した様に聞いてきたサリーネに顔を向ける。
「明日から基地の内部を作っていくの?」
「いや、今の防壁だとまだ不十分だから明日はこれの補強をするよ、ステラ達には今日と同じ様に警戒にあたってもらうね」
木の防壁だけではアンコニュの放つ光線を防げないから明日は裏に石材を積んで固め、表にも土とかを被せて固めようと思ってる。
「さて、そろそろ寝ようか」
皆で話すのは楽しく、時間はあっという間に過ぎていきいつの間にやらに眠る時間だ。
見張りは順番に交代しながら皆で眠る。
最初に俺が見張りをして皆にはゆっくりと眠ってもらうことにしよう。
勿論ステラ達から反対の声が上がったが事情を知るセシリアの擁護もあり問題なく俺が見張りをする。当たり前の様にセシリアがもたれ掛かって眠りに就く。反対側にステラがもたれ掛かって、サリーネは膝枕。おかげで動けなくなりました。
まぁ敵襲があれば起こすから動けなくても良いんだけど……。
俺の次にセシリアが見張りをする、俺が寝れないという事情を知ってるから代わる時には睡眠魔法を掛けて貰い眠りに就く。
そうして何事もなく翌朝を迎え、昨日の続きを行う。
ステラ達が周囲の警戒に出たのを確認した後、冒険者達に指示を出して材料を運んでもらう。
……こうしてみると確かに俺達兵士と違って装備が皆バラバラだね。
運んでもらった石材を防壁の高さで積み上げていき隙間にモルタルを詰めて補強していく。
そうして作業を続けているとクーデリアから通信が入った。
Kudelia《方位255にアンコニュの集団を確認しました》
Sarine《方位255……?》
「西の方角、より詳しく言うなら西南西だね……場所的にサリーネが1番近いか、了解した」
方位255とかは俺達くらいしか使ってないのかサリーネは分からなかった様なので通信機を手に取って方角を教え、少し考えた後指示を出す。
「柵の外で作業してる者は直ちに柵の中へ入りアンコニュの侵攻に備えて、サリーネ達もラインを下げて迎撃して、もし迎撃が厳しそうなら基地まで下がって、バナール隊、リュミエール隊は共にそのまま上空の警戒を」
指示を出した後俺は返事を待たずに持ってきていたライフルを背負って駆ける。
通信機が無い人も居るから全て見て回り誰も外に居ないことを確認する為だ。
だが俺の身体は走って数秒後に宙に浮いたことで前にも後ろにも進むことが出来なくなった、その理由はというと。
「エルっ!1人で行かないで下さい!」
「ご、ごめん……」
いつの間にやらに俺の背後に居たセシリアに抱きかかえられていたからである。
可笑しいな、セシリアとは居た場所が別々の所だったと思ったんだけどな……。
その後セシリアにしっかりと両手で抱きしめ抱えられながら一緒に柵周りを見て回り外に誰も居ない事を確認しつつ西側の柵に向かい、到着後セシリアに降ろして貰って柵に張り付き顔だけ出した後双眼鏡で覗く。
「サリーネ達の姿とアンコニュの姿を確認、まだ戦闘状態では無いみたいだね」
「互いに様子を伺ってるみたいですね」
「だね、バナール1よりバナール隊各位へ、周辺に敵の増援らしい姿は見えるかな?」
Kudelia《バナール2よりバナール1へ、方位255で確認した集団の他は見当たりません》
「了解、引き続き上空及び地上の警戒を頼むよ」
banalTeam《了解》
「サリーネ達はそのまま様子見で、ステラ達は周囲の警戒をお願い」
Sarine《分かったよ〜》
Stella《分かったわ》
ステラ達との通信を終え、俺とセシリアも警戒にあたる。
結果としてアンコニュが襲ってくる事は無くそのまま引き返した。
アンコニュが居なくなり安全が確認出来た後、再び防壁の補強作業を始める。
作業人数が多いため防壁の補強は日が沈む前には終わったよ。
翌朝。
今日は基地内部の建設。
何を建設するかと言うと兵士や冒険者達が休む所とか指揮所だね。
建設は他の人達に任せて俺とセシリア、ステラ、サリーネ、フィーユの5人で今後の話をする。
内容は大規模作戦について。
エルフの国の奪還作戦はここ北東部から始まる。
理由はここ北東部はゲネシスと唯一の陸繋がりで侵入が容易であるため。
南東部は海に面していてまた絶壁で上陸が困難。
そう考えれば今行っているこの基地建設も大規模作戦の一環とも言えるね。
「休憩場と指揮所の建設が終わったら防壁……防御陣地をもう少し拡張しようか、ここが大規模作戦の要にもなるだろうし」
「賛成ね、奪還作戦の実行中に退路が断たれて包囲されるのも困るもの」
俺の言葉にステラ達も賛成してくれた。
実際奪還する為にアンコニュの支配地域の奥地へと向かう訳だし、その際に前線基地が落とされ退路を断たれたら目も当てられないからね。
それに背後の安全が確保されてれば目の前だけに集中できるし。
「これで後は魔力補給が出来れば文句無いんだけどなぁ」
いくらアンコニュを押し返して前線基地を建てれたと言ってもここはまだアンコニュの支配下のままで大気中の魔素は無いに等しいまま。
ここからゲネシスの基地まで片道おおよそ2日。
往復で4日掛かると考えるとわざわざ基地まで戻って魔力を補給するのも時間が掛かりすぎるし……。
「それならおあつらえ向きのがありますよ」
魔力の事について皆で頭を悩ませていた時、ちょうど通りかかって聞いたのだろうユースティアが声を掛けてきた。
ユースティアは懐から蒼白く輝く結晶の苗木を取り出し俺へと渡す。
「神の結晶苗木と言うもので地面に埋める事で苗木を中心に小範囲でアンコニュに支配された土地の支配権を奪い元の姿へと戻す物です、また魔素も放出してくれるのでそれにより魔力の供給も可能となるはずですよ、より簡単に説明するならこの苗木が簡易的に要の地みたいな物ですね」
なにそれ知らない。
周りをみればステラは勿論セシリアもサリーネも知らない物の様だ。
埋めた所を中心に小範囲で要の地を構築するって凄くない?
ユースティアから貰った神の結晶苗木を基地の中心部に植える。
「エルさん、そのまま優しく両手で包みこんで下さい」
「?こう?」
ユースティアに言われたように苗木を優しく両手で包み込む、セレーネさんの様な暖かさを感じる、次第に苗木からの暖かさが強くなり蒼白い光を放つその瞬間。
「えぇ……」
苗木を中心に周囲の土から緑が芽吹いた、なにこれ怖い。
「相性抜群ですね、セレーネ様が直々に渡してと言った意味が分かります」
「なんでセレーネさん?」
「それ作ったのセレーネ様ですので」
まさかのこのとんでもない苗木作ったのセレーネさんだった。
通りでセレーネさんの暖かさを感じるわけだ……となるとこの苗木も奇跡を用いて作ったのかな。
神の結晶苗木を植え、その効能のお陰で魔力が即座に回復する様になった事で作業効率が大幅に上がった事でみるみる内に基地の建設が進んでいった。
その後苗木の所にも空からアンコニュに狙われても大丈夫の様に屋根と壁を設置した。
また何箇所かに固定式機関銃を設置する事で迎撃能力を上げる。
「エル、滑走路を作りますよ」
セシリアが突然そんな事を言ってきた。
いや確かに指揮所と休憩場の隣に不自然に空いた長方形の空き地が合ったけどまさか滑走路作るつもりだったとは思わないじゃん?
話を聞いた所、リュミエール隊と同じ様にバナール隊の補給基地として滑走路は作るつもりだったらしく、けど魔力の供給が出来ないと意味が無いことから中断してたみたい。
それが苗木によって魔力供給の目処がついた事で計画を再開したとの事。
そして進められる滑走路の建設、その横にはちゃんと一式戦闘機を整備する為の格納庫まで作られた。
また小範囲しか効果の無い魔力供給をより効率化する為にゲネシスの基地から魔力貯蔵タンクを運び込み予め魔力を貯蔵しておく。
これにより現状少数しか出来ない魔力供給を魔力貯蔵タンクを用いることでより多く迅速に供給出来るようになった。
無論格納庫にも幾つか置いとく事で一式への補給も迅速に可能となる。
後でゲネシスの基地から整備員さん達を連れて来てより機能的にすれば良し。
そうしてエルフ領北東部の前線基地は完成した。




