第11話 部隊設立と初任務
クーデリア達の訓練開始から早1年。
彼女達は今日に至るまで1人も脱落する事なく技術を身に着けた。
そして今日、全ての訓練を終えたクーデリア達は初めて、自分達に与えられた戦闘機、一式空中戦闘機に乗れる。
「これで君達も立派な戦闘機乗り、俺も不要になったね」
「何言ってるんですか隊長」
「え……?まって隊長って」
「貴方には私たちの部隊の隊長をやってもらいますよ、大丈夫、ちゃんと試作機の改修や修理、整備も手伝います!」
「「「「「その為の技術も得ました!」」」」」
どうやらまだまだクーデリア達の面倒を見なければいけないようだ。
「分かったよ、それよりもほら、ようやく訓練も終えて1人で飛べるようになったんだから、自分達の戦闘機に乗って空を飛んできなよ」
「「「「「はい!」」」」」
俺がそう言うとクーデリア達は待ってましたと言わんばかりに元気良く返事して自分達の機体へと乗り込む。
クーデリアの機体を先頭にゆっくりと格納庫から滑走路へと進む5機の戦闘機はそのまま滑走路にて待機する。
Cecilia《セシリアよりバナール2へ、離陸を許可します》
通信機からセシリアがクーデリアに離陸許可を出したのが聞こえる、コールサインがバナール2って……俺の考えた部隊名って事はセシリア達もクーデリア達を俺の部隊とする事に賛成してたみたいだね。
ちなみにだけどクーデリア達にも俺の本名は伝えてある。セシリアやクランクさん達と相談して教えても良いことになったから。
今やこの基地でロストは偽名でエル・ヴァルドリンが本名である事を知らない人は居ないだろう。
けど俺の記憶の件や親に売り飛ばされた件を知っているのはセシリア等極一部である。
ちなみにクーデリア達にはこの事も教えている。
Cecilia《バナール5の離陸を確認、バナール6離陸スタンバイ……バナール6、離陸を許可します》
そうこうしている間に最後の一機、テレサが空へと上がった。
滑走路から飛び立ったテレサは上空で旋回して待っていたクーデリア達と合流を果たし、それから皆で楽しそうに空を思いのままに飛んだ。
Kudelia《エル!エルも上がって来てください!一緒に飛びましょう!》
Cecilia《お呼びですよ、エル》
「……分かったよ、今行く」
クーデリアからのお誘い、セシリアからも声が掛かったので俺も試作機に乗って空を飛ぶ事にした、格納庫内に保管されている試作機に乗り込み滑走路へと向かう。
Crank《バナール1、離陸スタンバイ》
Cecilia《セシリアよりバナール1へ、離陸を許可します》
離陸許可が出たので滑走路を走りクーデリア達が待つ空へと上がる。
空へと上がればクーデリア達は自然と俺の後ろへと付くと俺を先頭に1、2、3機と三角形の編成を形成した。
「……悪くないな」
こうしてクーデリア達と空を飛ぶのも悪くない、そう思った。これは後で分かったがこの時自然と口から出ていたようでその言葉は通信機を通じて皆に伝わっていたようだ。どうりでこの時皆嬉しそうな声を上げたと思ったよ。
そうしてクーデリア達全員と初の部隊飛行を行っていた最中、通信が入った。
Crank《ゲネシス上層部より命令だ、ヴィンセント魔法大国の国境付近にアンコニュを確認、直ちにヴィンセント魔法大国へと向かい偵察しろ、だそうだ、命令を受けたのはエル1人だがどうする?》
Kudelia《私は行きますよ!》
james《勿論俺も行くぞ!》
Sofie《僕も行くよー!》
Victoria《私も行く》
Teresa《わ、私もっ!》
次々と通信機から声が上がる。
全員参加、つまり部隊設立の今日、初飛行から初任務を行うと言うことだ。
Beo《良し、編隊を維持しつつ方位345に機首を向けて飛ぶんだ》
ベオの指示に従い俺達は機首を方位345、北北西へと向けて編隊を崩さないように向かう。
速度はクーデリア達がまだ自身単独での飛行に慣れてないだろう事から何時もより少し遅め、まだ戦闘にはなってないのかベオを通じてフィーユに連絡をすれば問題ないとの事、それで連絡してもらった所フィーユは《ゆっくり来てね》と言ったそうだよ。
Beo《エル以外はファースト・ソロによる初めての空の旅だ、満喫するのも良いがいつ何処でバンディットと遭遇するか分からん、気を抜かないようにな》
「また知らない単語が出てきたぞぉ?ファースト・ソロってなにかな?」
Cecilia《ファースト・ソロは単独初飛行の事ですね》
Kudelia《確か飛行訓練を始めたばかりの訓練生が一人で離陸、短時間の飛行を行った後、安全に着陸する行為の事を言うんでしたよね》
Teresa《ファースト・ソロ、ソロフライト、ソロイングとも称されるんでしたっけ?》
「いやまって、なんでセシリアどころかクーデリアやテレサも知ってるの?」
皆《ベオから教えて貰いました!!!!》
「また?!また僕に教えず皆に教えてたの?!」
Crank《ちなみに元々は魔法使い達の間で使われていた言葉だから知っている奴は知っているぞ、俺達は知らなかったからベオが教えてくれた訳だが》
「へぇそうなんだ……じゃなくて僕にも教えてよ?!」
その後嬉しそうな声音でセシリアが教えてくれた。
なんでもフィーユやエミリーの様に空を飛ぶ魔法使い達は最初は教官役と共に飛行し、慣れてきたら今の俺達のように単独で空を飛ぶそうだ。
始めから1人で空を飛んで何らかの理由で地面に落下したら大怪我では済まない、その為新人の魔法使い達は空を飛ぶ際に不測の事態に対処する為に教官役と共に飛ぶのだそうだ。
そう思うとカインの件が悔やまれる、恨まれようと小言を言われようと1人で飛行させずに俺が徹底的に教えてあげればカインが墜落して亡くなることもカインの家族が悲しみに暮れる事も無かっただろうに……。
そうして時折後ろを振り返りクーデリア達がちゃんと付いて来れているか確認しながら飛び続けヴィンセント魔法大国へと到着、方位を修正し西に向かう。
そしてヴィンセント魔法大国の西側国境付近へと差し掛かった時、通信機からフィーユの声が聞こえた。
fille《待ってたよエルー!!》
通信機から聞こえたフィーユの声は上機嫌で嬉しそうに聞こえた、そしてその数秒後フィーユが俺の乗る試作機のコックピットのすぐ横に着地する。
チラリとクーデリア達の方を見やればクーデリア達の一式にも左右に1人ずつ魔法使い達が乗りその取っ手に片手で掴まっていた。
fille《エルも自分の部隊持ったんだね!》
「うん、そこでお願いなんだけど実戦になったらクーデリア達の事を見てて欲しいんだ、これが初めての単独飛行だからさ」
笑顔のフィーユに実戦になった際にクーデリア達の事を見てもらおうと思いそう伝えると返答はフィーユ以外から返ってきた。
|LumièreTeam《リュミエール隊》《エル君のお願いなら聞いてあげる!お姉ちゃん達に任せて〜♪》
fille《一応僕が隊長なんだけど?》
フィーユが率いる部隊だから通信に表示される名前はフィーユの姓を取ってLumièreTeamにしたみたい、それはそれとしてフィーユが顔を逸らして自身の部隊の人達に話したけどその声音は不機嫌、ここから見えるフィーユの横顔も一目で不機嫌と分かる。
LumièreTeam《そう言ってフィーユちゃんも聞いてあげる気満々でしょ?》
fille《隊長って呼べぇ!!!》
「はははっ」
fille《エルゥ?なぁにが可笑しいのかなぁ?》
フィーユとその部隊の人達のやり取りが面白くてつい笑ってしまった、キャノピーの向こう側のフィーユの笑顔に圧を感じるから顔を逸らす。
fille《エルゥ?聞いてる?聞こえてる?お〜い?》
コン、コン、コン、っとフィーユがキャノピーをノックしてくる、ちょっと怖い。
LumièreTeam《そんなことして怖がらせてるとエル君に嫌われるわよ?》
fille《えぇ?!ごめんエル怖かった?!》
「少しね、大丈夫だよ」
驚いたフィーユに苦笑いで応える、それと同時にベオから通信が入った。
Beo《全員お喋りはそこまでだ、前方にアンコニュの集団を確認した、バナール隊は全機エルかフィーユの指示に従え、実戦になる可能性が極めて高い》
fille《バナール隊……後でどういう意味か教えてよ?エル》
「覚えてたらね」
その言葉を最後にお喋りは終わりにし俺とフィーユは互いに目の前に集中する。
そして数分後。
Beo《バナール隊、リュミエール隊交戦を許可する》
「バナール1、交戦」
俺達はアンコニュと交戦状態に入った。
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クーデリアSide
初めての大空、初めての接敵、そして初めての戦闘。
Eru《倒そうなんて考えるな!お前達は生き残る事だけを考えろ!》
通信機から聞こえるその声音は普段のエルからは想像もつかない圧を感じました。
LumièreTeam《彼の言う通りよ!貴女達は生き残る事だけを考えなさい!》
james《でも隊長が!》
LumièreTeam《良いから言う事を聞きなさい!彼には私達の隊長が付いてるから大丈夫よ!》
リュミエール隊の方達はそう言いますが既にエルとフィーユさんは離れ離れになってます、あれでは援護出来ないのでは……。
そう思って見ているとエルは多くの異形、アンコニュを引き付け急上昇、その後フィーユさんの近くに急降下し後ろを付いてくるアンコニュをフィーユさんが魔法で殲滅してました。
「な、慣れてますね……」
LumièreTeam《1年くらいずっと共に戦ってきたもの。まぁ戦い方というか、ああやって囮になるのは私もフィーユちゃんも少し気に食わないところはあるけれど》
fille《エル!いい加減その戦法やめなよ!》
Eru《こっちのが手っ取り早いでしょ!》
LumièreTeam《それでああやって言い合いになるまでがセットよ》
リュミエール隊の方は呆れたようにそう言いました。
確かに引き付けて無防備な所をフィーユさんに倒してもらえば簡単かもしれませんが……。
にしてもどうやって引き付けているのでしょうか……?
それが気になりエルの動きに注視すると急降下の際に響く風切り音、それが発生した途端アンコニュがエルに狙いを定めたのがなんとなく分かりました。
「まさかあの風切り音で……?」
LumièreTeam《恐らくね、あの試作機が現れてからアンコニュは相当数が討伐されてアンコニュも危機感を感じてるんじゃないかしら、それで私達魔法使いとは明らかに違うあの風切り音を特別警戒してるのかしらね?》
Victoria《見た限りでは聴覚がある様には見えないけど》
Sofie《見た目に囚われるなって奴だね!》
そんな風に話してる間も多くのアンコニュの殆どをエルとフィーユさんが倒していく、私達の方に来たアンコニュは両翼に待機するリュミエール隊の方が魔法で倒してくれてるので特に問題無さそうですね。
fille《にしても月女神のエンブレム……あの人も独占欲が高いのかな》
Teresa《どなたでしょうか?》
fille《セレーネ・ジュテーム様》
banalTeam《は?!》
Teresa《えぇ?!エル兄さんのあのエンブレムってセレーネ様直々なんですか?!》
「と言うか付けるのに許可要りますよねあれ?!貰ったんですかエル?!」
Eru《いや付けてって言われたから……と言うかそんなに有名人なの……?》
banalTeam 《えぇ……》
教皇様にしてゲネシスの頂点に君臨する方が直々に付けて……。
というかエルは当然の様に把握してないんですね……。
Eru《と言うかクーデリア達も何回か話してたじゃん、ほら白い外套を着た女性で俺に奇跡の修練つけてくれる人、あの人がセレーネさんだよ》
banalTeam《》
エルからとんでもない真実が投下されました、まさかあの人が?!何してるんですか護衛も付けずに?!
私達との会話に嫌な素振りはせずそれどころか嬉しそうに、楽しそうに聞いてくれてた事から良いお姉さんだなぁとは思ってましたしエルもセレーネさんと呼んでましたがまさか教皇様とは思わないじゃないですか?!
そんな衝撃の事実を聞かされ、気が付けば戦闘も終了しエルとフィーユさんが此方に合流しようと向かって来ます。
そんな時私達とエルの間を何かが通り抜けました。
そしてそれを視線で追った先に居たのは━━━━
黒い5機の一式でした。
それらが現れた瞬間エルから通信が届きました。
Eru《っ!手を出すな!直ぐに撤退しろ!》
その声には今までの余裕はありませんでした。
エルはフィーユさんと別れた後直ぐに機首を上げてあの5機の後を追います。
Cecilia《……バナール隊、直ちに撤退を、フィーユはエルの補助に、リュミエール隊はバナール隊の撤退を援護してください》
「でもエルが!」
Cecilia《良いから!これは命令です!!!》
「っ……分かりました」
悔しいですが、今の私達では足手まといです、命令に従うしかありません。
「どうかご無事で……」
振り返り遠くなるエルの姿を見てそう祈りを捧げました。
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エルSide
アンコニュの掃討を終わらせいざ帰ろうとした時目の前に例の5機が現れた。
どういう原理かは分からないが俺達の索敵を擦り抜け目の前を急上昇、今の所攻撃して来るような様子は見受けられないがクーデリア達の安全の為にもあの5機の後ろにピッタリと張り付く。
この1年で何度も遭遇したこの5機の実力は良くて俺と同等、最悪俺以上の腕前を持つだろう。
故にクーデリア達では為す術無くやられてしまう。
fille《周囲にアンコニュの気配は無いけど余りに遠くに行っちゃダメだからね!》
「分かってるよ!」
既に遠く離れたフィーユから周囲の情報を教えてもらう。
にしてもこの5機の目的が分からない、製造元もそのパイロットも何もかも不明な奴ら。
分かるのは俺とは敵対しない、アンコニュと敵対してる、過去に何度かアンコニュとの戦いで助けて貰った事はあるけど敵対された事は無い、俺が敵対されてないのか人類が敵対されてないのかは分からないけど。
けど仮にこの5機が敵対するとなるとクーデリア達が危ない訳でやっぱり警戒しない訳には行かなくなるよね。
それから数分、互いに旋回したりして様子を伺っているとベオから通信が入った。
Beo《バナール隊、リュミエール隊双方の戦闘空域離脱を確認、エル、戻るんだ》
「了解」
クーデリア達が戦闘空域を離脱したことが分かったから5機を追い掛けるのをやめて俺も空域を離脱する、後ろを確認しても5機は此方を追ってくる事はなくそのまま彼方へと飛び去っていった。
途中でフィーユと合流し、キャノピーを開けて後部座席に座らせる。
「なんとか無事に終わったね」
「お疲れ様、フィーユ」
「そっちこそお疲れ様、エル」
その後安全空域で待っていたクーデリア達と合流し、久々と言うことでフィーユ達も連れて基地へと帰還する事になった。
「ひっさしぶり~!エミリー!」
「わっわっ?!」
基地に着陸後、フィーユは外で待っていた友人のエミリーとの久々の再会に文字通り飛んで抱き着いて喜びを露わにした。
俺もコックピットから飛び降りてセシリアに抱き留めてもらう。
「お疲れ様エル」
「あっセレーネさん」
どうやら俺達が飛行中にセレーネさんが来ていた様だ。
「「「「「あ……」」」」」
そしてそんなセレーネさんの姿を見て固まるクーデリア達、その様子に俺とセレーネさんは互いに顔を見合わせ首を傾げた。
そこにフィーユがやってきて「バレましたよ」と小さくそう言った。
何がバレたのだろうか。
「いつかバレるものよね」
そう呟いたセレーネさんの声音は何処か寂しそうであった。
「丁度良い、皆で記念写真撮るぞ」
クランクさんがカメラを一つ持って外に出てきてそんな事を言った。
「写真撮るの?」
「ああ、こう言う辛く大変な仕事には楽しい思い出が必要だからな」
そう言ってクランクさんは笑って俺の頭を撫でた。
そして何故か俺を中心にして皆で集合写真を撮ることになり、その後隊ごとに別れて撮ったりした。
けどどの隊にも俺が映るの可笑しくない?
ちなみに、セレーネさんに対するクーデリア達の対応も本人によるお願いから次第に軟化し元に戻ったよ。
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