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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
序章 はじまりの序曲

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第1話 はじまりは鉄格子の中で

昼と夜が繰り返す。

夜になれば人々は眠り、昼になれば目覚め、知人達と笑顔を交わし人生を謳歌する。

そうして人々は平和に過ごす。


そんな当たり前でありふれた世界の某国某所。


蝋燭の明かりのみの暗いその場所。

石の台に白い布が引かれその上に1人の子供が寝かせられている。


「後はこの神血を与えれば……そうすれば最後の実験が終わる」


横たわる子供の腕に付けられた細い管から赤い液体が投与される。

投与して数分後、子供は紅い体毛に包まれた悍ましい巨大な異形へと姿を変えた。


「おぉ……我らが邪神よ……我らに神の奇跡を与えたまえ……」


異形の腕を切り赤い鮮血を垂れ流させ器で受ける。

その血を啜る周囲の白装束達、それは新たな力をもたらす為に必要な行為。


それぞれが肉体に漲る力に喜ぶ中、異形の腕がピクリと動いた。



【君達は神々に対して禁忌を犯した】



振るわれる異形の大腕が近くの白装束を吹き飛ばす。

異変に気付いた者たち、ある者はその場から逃げ出し、ある者は得た力で抵抗しようとする。



【神々による報復が始まるだろう】



異形は逃げ出す者から狙いを定める。

その場を飛び逃げ出す者を飛び越え音を立てて着地する、怯える白装束に異形は両手を上げ、組み、そして振り下ろす。

周囲に飛び散る鮮血。



【それでもあなた達は更なる禁忌を犯すだろう】



抵抗する白装束、外から異常を感知し駆け付けた騎士団、その全てが巨大な異形に成す術なく倒されその命の灯火を消す。


「ああ……此処に居たのね……」


そんな殺戮が行われる中、1人の女性が臆することなく異形へと近付き、そして迎え入れる様に手を広げた。

それに対して異形も先程までの荒々しさが嘘のように大人しくその腕へ、胸の中へと顔を埋める。


「私の伴侶……」


蒼い長い髪を靡かせ、白いドレスが血に汚れる事も厭わず優しく異形の顔を抱きしめ、撫でる。


「行きましょう……禁忌を犯した愚か者共に報いを与える為に」


蒼髪の女性は異形の肩に乗り、巨大な異形は首謀者と思わしき血だらけの白装束の頭を掴み引き摺りながら外へと向かう。

壁を、扉を壊して外へと向かう。


全ては禁忌に手を出した愚か者共に、報いを与える為に。


【故に人々は、世界は報いを受けるのだ】



そして、この日世界は確かに滅亡した。









































「ごほっ」



目が覚めた場所は暗く冷たい鉄格子の部屋の中。


到底服とは言えぬボロボロに薄汚れた布1枚に身を包み石畳の上で伏せていた。

部屋の中に光源はなく、鉄格子の窓から差し込む月光のみが照らす。


「起きたっ」


直ぐ傍から聞こえた声に周りを見れば似たように布1枚で身を包んだ子供が複数居た。


「君っ大丈夫?」


そんな中傍に居た2人の少女が心配そうに声を掛けてきた。

青い長い髪に綺麗な碧色の瞳の少女と黒い長い髪に赤い瞳の少女。


「だ、だいじょう、ぶ」


「ウソ、震えてるのに大丈夫なわけない」


そう言って2人の少女が暖を取るためにその小さな体で俺を挟むように密着させる。

多少寒さは和らいだがそれでも寒い事に変わりはない、今は冬なのだろうか。


ここは何処なのだろうか、何故自分はこんな所で寝ていたのか。

そこまで考えてある事に気が付いた。


【なにもおぼえてない】


なにもと言うと語弊があるが、概ね殆どの記憶が無い。

自分が何処で何をしていた?何処で暮らしていた?家族は?仕事は?そもそも働いていた?


そして何より、おれはぼくはわたしはだれ?


自分の名前すら覚えていない。


そんな事など知らず、少女2人は自己紹介を始めた。


「わたしの名前はステラ、ステラ・グラディウス」


「わたしはサリーネ、ただのサリーネ、君は?」


青い長い髪に綺麗な碧色の瞳の少女はステラ、黒い長い髪に赤い瞳の少女がサリーネという名の様だ。

そしてサリーネに名前を教えてと言い寄られる、ご丁寧に手まで握って逃がさないように。


サリーネに手を握られドキドキしながらも必死に頭を回転させ考える。

なにせわたしは名前を覚えていないのだから。


「お、おれは……ロスト……」


考えて咄嗟に浮かんだ言葉を紡ぐ。


ロスト、失ったという意味を持つ言葉。

我ながら自分にピッタリじゃないか?


「ロスト……うん、覚えた」


サリーネは未だに掴んでいる俺の手のひらをニギニギと揉み、微笑みながら答える。

サリーナの対面、俺の左横に座るステラはジト目を向けている事から偽名であると気付いたかもしれない。


ビュッと冷たい風が吹き抜ける。

寒さに身を震わせた2人、身体を覆う物が無いか周囲を見渡すがなにも無い。

どうするか考えているとサリーネが握っていた手を引っ張る。


「もっとくっつこ、その方が温かいから」


そう言い終わるや否や自身の方へと更に強く手を引き身体が前のめりに倒れサリーネの胸に顔が当たる。

その後ろから俺同様引っ張られたステラの胸が当たる。


「ね?温かいでしょ?」


「そ、そうね」


サリーネの言葉にステラが照れながら答えた。

俺はサリーネとステラに挟まれてるから声が出せない、サリーネとステラの心臓の音を聞きながらそのまま3人で暖を取る。


少しして鉄格子の向こうに大人が1人現れる。


鉄格子の隙間から袋に入ったパンが投げ渡される。

最初は誰も食べようとしなかったが流石に空腹には勝てず1人また1人とパンを食べていく。


渡されたパンは1人2つで食べ盛りには少ない、俺は内1つを半分にちぎりステラとサリーネへと渡す。


「?!ちょ、わ、わたしは良い!」


「わ、わたしもだいじょうぶ!」


「俺は良いから、ステラとサリーネが食べな」


そう言って俺はステラとサリーネに自分の分の配給されたパンを渡す。

不思議と今は腹が減ってはいない。

そして残った1個はというと。


「おじさん、これあげる」


「ん?良いのか坊主」


見張りのおじさんに半分をちぎって渡す。

痩せていることからこの人も食料に困ってるのだろう。

ちょっとずつ餌付けしこちらに友好になってくれれば儲けもの。


そんな事を繰り返し数日、見張りのおじさんとは少しずつ仲良くなり組織の目を盗んで俺達に少し多めにパンを渡してくれるようになった。

無論多めにもらったパンもおじさんに渡したりしているが。

またパンの他にも暗いからと言うことで蝋燭に火を付けて明かりをともしてくれたりもしてくれた。


ちなみに何故おじさんがパンを少し多めに渡してもバレないのか、それは此処に居る子供の数が減った事で可能になったんじゃないかと思う、もしくはロクに記録を取ってないか。


今は俺、ステラ、サリーネと他に数人居るだけで目が覚めた時に居た大半は大人に連れてかれ戻ってくることはなかった。


パンの他にも毛布やお湯等もくれる、真面目に寒いからこういう物は助かる。


流石に枚数が多いとバレる為に毛布は2枚しか頂けないが、それでも身体が小さい子供なら数人で包まれる事が出来る。


俺とステラとサリーネの3人と残りで別れる。


「これなら今までより温かいね」


「そうね」


毛布に包まれ風の冷たさが和らいだことでサリーネとステラはご満悦のようだ。

また3人で密着する事で更に温かい、これで夜寒さに震える事も無くなるだろう。




「今日、ボス達に内緒でゲネシスの軍に密告した、助けが来るまでもう少し、辛抱しろ」


ある日見張りのおじさんがそんな事を言った。


「大丈夫なのそれ?」


おじさんと同じ様に俺も鉄格子に背を預けて話す

ちなみにステラやサリーネは少し離れた所で此方を見ている、流石にまだおじさんが怖いみたい。


「大丈夫かどうかで言うと組織的には大丈夫じゃない、俺としては別に組織が大事って訳じゃないからな」


「じゃあおじさんは何の為に?」


組織が大事じゃないならこんな明らかに胡散臭い事する必要は無いのでは?

そう思っておじさんに聞いてみた。


「年離れた妹が居てな、ちょうど坊主らと同い年位か……その妹が病気でな……纏まった金が必要なんだが……それでもやっぱり駄目だろって思ってな」


妹さんとの歳が近く、パンを分け与え続けたのが功をなしたのか。

それがおじさんの残っていた良心を揺さぶったのだろう。

もう少し辛抱すればステラやサリーネ、囚われた他の子たちも解放されるだろう。







今日はマッサージをしようと思う。

仲良くなったおじさんから投げ渡された毛布を地面に引いてその上にステラを寝かせる。

ステラに跨り布の下の素肌に両手を滑り込ませて、足先から太腿、腹部と上がっていき胸部、肩腕、掌とゆっくりと全身を程よい力加減で押し込んだり擦りあげる。


「んっ」


ステラから艶かしい声が出るが気にせず続ける。


ゆっくりと痛くないように優しく力を込めて揉みほぐす。


マッサージを終えた後、ステラはというとぐったりとその場で倒れているので取り敢えず抱えて少し横にずらす。


「はい、次サリーネね」


「え?!わ、わたしはいいよ!?」


断るだろうなと思ってたが蘇ったステラにその腕を掴まれ引っ張られて毛布の上に仰向けに倒れる、そしてそのまま両腕を頭上に固定される。

ステラがサリーネの両腕を尻に敷いているからもう逃げられない。


「はぁ……わたしがやったんだからサリーネもやるべきよ、なにも怖くないよ、気持ちいいだけだから……」


息を荒げ頬を染めて言うステラにサリーネは頬を引き攣っている。


「始めるよ」


サリーネもステラ同様に優しくマッサージする。

手のひらから前腕、上腕と順に揉んでいき肩、腹部、太腿、ふくらはぎと下がって行く。


「アァ━━━━━━?!イタタタタタタタァ?!イタイイタイイタイ?!」


悪戯心でサリーネの足裏のツボを強めに押してしまった、体全体に力を入れ逃げようと暴れるサリーネが可笑しくて、更に力を入れてツボを押す。


「アァ━━━━?!ア゛━━━━?!ロ゛ス゛ト゛ォ゙ォ゙ォ゙?!」


と凄く良い反応をしたのは言うまでもない。

ステラもサリーネの様子が可笑しいのか笑いながら身体を押さえていた。


「身体も温まった事だし寝よっか」


「そうしましょうか」


俺が布団の上に転がれば、程なくして2人に前後を挟まれる、サリーネからは恨めしそうな視線を感じていたが程なくして寝息が聞こえてきたから俺も気にせず眠ることにした。







ある日の夜中、騒がしさに目を覚ます。


「なんだろ……?」


隣でサリーネが呟く、ステラも目を擦りながら身体を起こした、俺と同じく騒がしさのあまり目を覚ましたのだろう。


程なくしていつものおっさんと大柄の男の2人が姿を現した。


「頭!早く逃げるんですよ!」


一応おっさんも組織の一員として逃げるフリはするらしい。


「離せ!どうせもう逃げられやしねぇ!捕まるんだったら最後に楽しい思いしねぇとなぁ!」


頭と呼ばれた大柄の男が鉄格子の扉を開けて中に入ってきた、そしてステラとサリーネの手を掴んで外へと向かう。

俺はステラ達を助ける為急いで鉄格子の外へと駆ける。


直ぐそこで大柄の男がステラの上に跨り、その横にサリーネを片手で地面に押さえつけながらステラとの身体を覆う布を剥ぎ取ろうとしていた。


「やめろよ!」


その辺に落ちてた木の棒を持ってその背中を力いっぱい叩くが所詮子供の身体、大した力は無いし倒せるはずもない。

幸いなのは鬱陶しかったのだろう、ステラとサリーネから視線を外し俺を一瞥すると身体を起こして俺へと向き直った。


「鬱陶しいぞ小僧!」


「がぁぁぁぁぁ!?」


大柄の男が隠し持っていた短剣を振るう、刃物なんて持ってないと思ってたから俺はそれを避けれず左腕と左目が斬り裂かれる。


木の棒を落とし右手で左前腕を押さえつつ左手で左目を押さえる、斬り裂かれた場所から流れ出る真っ赤な血は押さえても止まることは無い。


大柄の男は苛立っており持っていた血濡れの短剣を地面へと叩き付ける、その行動に恐怖心を煽られたステラ達は互い寄せ合った身体をビクリと震わせていた。


大柄の男はそのまま俺に近付き腹部に向けて拳を振るう、俺は防ぐ事も抵抗する事も出来るはずもなく腹部に拳を叩き込まれ身体がくの字に折れ曲がる。


「ごっ?!」


「ふんっ!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ぬぅん!」


お楽しみを邪魔された男がそれだけで怒りが収まることは無く、そのまま腹部や顔と連続で殴られる。


頬に裏拳が炸裂しよろめいた所を腹部に2発拳を叩き込まれ前のめりになった所にあごを下から突き上げて打たれる。

身体が宙に浮きそのまま冷たい石畳へと仰向けに落ちる。


「ゴボッ」


血が喉から迫り上がってくる。


「やめて!私はどうなっても良いから彼をこれ以上傷つけないで!」


あまりの酷さにステラが泣きながら割り込み頭を地に付けてお願いする。


「やりすぎだ!」


ステラが気を引き油断した男を仲の良い見張りのおっさんが剣を両手に持って後ろから斬りつける。


「っ?!き、貴様ぁ!」


男の標的が俺から裏切り者のおっさんへと変わる、2人が斬り結んでいる間にサリーネとステラの2人が俺の傍へと駆け寄る。


「ロストっ!?ち、血が」


困惑するステラを他所にサリーネは直ぐに自身の身体を覆う布を破りそれを俺の左目と左腕に巻き付ける。


「もうじきゲネシスの兵が駆け付けてくれる!それまで頑張って!」


泣きそうな声音でサリーネが俺を励ます。


それから直に複数の兵がここに雪崩込んできて頭とおっさんを捕縛し連れていき、俺は手当てを受けつつ運ばれた。

無事に兵に保護された2人の心配そうな顔が俺が意識を失う前覚えてる最後の記憶だ。

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