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09 夜が明けて

「ふあぁ~、よう寝た……おぉスバル、早いな」


 夜が明けて馬車から起き出したゴートンが朝食の準備をしているスバルを見つけて近寄る。


「おはよう、ゴートンさん」

「……ん? オースト達はどこ行った。それにそっちの嬢ちゃんは誰だい?」


 護衛を任せたオースト達の姿が見えない事を不審に思い、スバルの傍にいるコーネリアについても質問する。


「実は……」


 オースト達が盗賊とグルで、昨夜に正体を現し襲ってきた事、スバルの知り合いだったコーネリアと協力して撃退した事を説明した。


 説明を聞いたゴートンが盗賊と災禍の盾の死体を確認した。


「んん~……コイツら、かなりの賞金が掛かった盗賊どもじゃねぇか。知り合いが何人も犠牲になってたんだ……くそ、護衛役が裏切ってたんだな」

「コイツらの話だと何度もやってたらしいんだけど、もっと早く冒険者ギルドが正体を見破れなかったのかね?」

「多分、今回のスバルみたいにギルドを通さず護衛依頼を受けたパーティーに後から臨時メンバーか何かで潜り込んだりしてたんだろ。依頼人も依頼を受けたパーティーも皆殺しにすれば、災禍の盾の犯行だとギルドにバレないと踏んだんだな」


 これまでの犠牲者の事を思い、憤懣やる方ないといった様子で顔を歪めていたゴートンがコーネリアに質問してきた。


「ところでそっちの嬢ちゃんは本当に無関係なのか? スバルの知り合いって話だがダグレスで知り合ったばかりなんだろ? 信用出来るのか」

「信用出来るよ。実際に一緒に戦ってるし、命の恩人でもあるしね」

「ウチの方こそ、コロッと騙されてスバルを攻撃してゴメンよ~」


 コーネリアが盗賊側にいたのはオーストが冒険者ギルドの密偵を騙り、禁制の品を密輸する商人の馬車を強引に取り押さえ証拠の品を見つける手助けを頼まれたからだった。


 当初はオースト以外の護衛はゴートンが金で集めただけのならず者だと伝えられていて、見張りをしているスバルを襲った時も証言を得る為に殺さないようにしろと指示されていたそうだ。

 実際はスバルに返り討ちにあうか、頃合いを見てオースト達が始末する手筈になっていたと思う。


「まぁ何にせよ、これで犠牲者が増える事もあるめぇよ。お疲れだったな二人とも」

「ところで全滅させちゃったけど、コレ後で問題になんないかなぁ……私達が逆に賞金首とかになんない?」


 元々賞金首の盗賊達は兎も角、表向き『災禍の盾』は冒険者ギルドに登録された歴とした冒険者なのだ。

 相手側の生存者がいない以上、こちらの言い分の正統性を疑われやしないかと心配事している。


「あぁ~スバルは盗賊退治とか初めてなん?」

「うん、そうだね。魔物しか討伐した事ないよ」

「街の外では自分の安全は自分で確保するのが基本なんよ。だから外で命を落としてもそれは死んだ者の責任、よほどの事が無い限り生き残った者が罰を受ける事はないんよ」

「付け加えると人を殺したならギルドに報告しといた方が良いな。ギルドの裁定を受けとけばお前達に非が無いと証明されるだろ」


 冒険者ギルドには証言の真偽を確かめる事が出来るスキル持ちがいる為、後々面倒なトラブルに巻き込まれないように受けておく事を勧められた。

 証拠品の一つとして『災禍の盾』の冒険者登録証のタグを回収しておいた。


「ここからは私とコーネリアで護衛を引き継ぐよ」

「うん。ウチとスバルはセントナードまでだけど」

「構わねぇよ、セントナードの冒険者ギルドで新しい護衛を雇うからさ。セントナードまでよろしくな」


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 朝食の後、ゴートンが御者台に乗り出発した。


「セントナードかぁ……かつて勇者様が修行をしたって街だよねぇ。そん時の修行法が今でも残ってるって話だよ」

「へぇ、コーネリアは詳しいね。やっぱり勇者様には憧れがあるの? 前に占いがどうとかって言ってたけど、それだけが星騎士を目指す理由じゃないでしょ」

「うん? ん~……まぁ確かに子供の頃から勇者様の活躍は伝え聞いてたし、占いが出たのも後押しされたけど……でも、ウチが星騎士を目指すのはもっと個人的な理由だよ」


 コーネリアの話を聞いて、スバルは少し意外だと思った。

 昨夜の戦いでスバルの危機に身を挺して守ってくれたコーネリアは、素性を隠して星騎士を目指す自分などよりよっぽど星騎士に相応しい振る舞いをしているとスバル自身思っていたからだ。


「昨日見せた『獣性解放』ってスキルなんだけどさ。獣人族の中でも使いこなせるのは、ほんの一握りの戦士だけなんだ。未熟な奴が使うと理性が飛んで暴れ回る危険なスキルなんだよ」

「うん、聞いた事があるよ。でも、コーネリアは使いこなしてたよね」

「今は、ね。でも昔、このスキルの制御に失敗して多くの同胞を傷付けてしまったんよ……」


 昔を思い出しているのか。少しばかり気落ちしたコーネリアが溜め息をつき。


「暴走するウチを止めようとして大怪我を負い、戦士として戦えなくなった者まで出てしまった。皆は気にするなと言うけど……ウチは」

「コーネリア……」

「ステラ教の秘術にはどんな傷でも治せる魔法があるっていうし、特殊な薬が手に入るかもしれない。星騎士になって手柄を上げれば、そういった恩恵を受けられるかもしれない……それがウチの理由。幻滅した?」

「まさか……仲間の為に、戦う道を選んだコーネリアは立派だよ。ただ星騎士に憧れて目指す私とは大違いさ」

「目指す理由は人それぞれ、思いの強さなんて比べようが無いって」


 二人を乗せた馬車の先に城壁に囲まれた都市が現れた。

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