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81 魔属性

 クレイジーバニーは慣れた手つきで杖を振り回して魔法陣に突き刺した。


「さぁて、まずはゴミ片付けから始めますか」


 そう言うとクレイジーバニーは、胸を貫かれ息も絶え絶えのベガの首を掴むと魔法陣の外へと引き摺っていく。


「や……やめ……ぉ……たしゅ……け」


 口から血を吹き出しながらベガはクレイジーバニーの細腕を掴んで抵抗する。


 そんなベガを見下ろしながら、クレイジーバニーは口の端を吊り上げるようにニヤリと笑い。


「ベ~ガ~さ~ま~。悪足掻きは見苦しいですよぉ……上に立つ者として最後は潔くしましょうよ。ね?」


 殊更、優しく語りかけるクレイジーバニーをベガは目を見開いた。


「わた……し……お前、恩……忘れ」

「えっ? 何ですか?」


 弱々しいベガの小声に耳を傾けるクレイジーバニーにスバルが背後から攻撃を仕掛ける。


「おっと……邪魔しないで欲しいなぁ」

「悪いけど、見過ごす訳にもいかないんだよ」


 ベガの首から手を放し、クレイジーバニーは軽々とスバルの攻撃を避け続ける。


「ソイツは君達にとっても敵だろぉ? 命を取りに来たんじゃないのかよぉ」

「だからってお前の好きにさせるかっ! あの世へ逃げられる前に、まだコイツには聞きたい事もある」


 手を休める事なくクレイジーバニーへの攻撃を続けるスバルは一瞬、ユーリへと視線を飛ばしてユーリが杖の下へ駆けていくのを確認した。


「だいたいお前こそ、何故ベガを殺そうとするんだ。アンデッドであるお前に命令してたって事は、ベガが死霊術で蘇らせたんだろ……」

「ああ、そうさ。ベガが私を死後の世界から蘇らせたんだよ……無理矢理ね。君には分からないだろうけど死霊術での復活ってのは魂にかなりの負荷と苦痛が伴うんだ。そうやってこの世に引き戻しておきながら、コイツは私を失敗作だと言いやがった。死の穢れに塗れ、望んだ結果では無いと言ってね」

「望んだ結果?」

「私が生前、持っていたスキルの事さ。コイツは生前と同様の力を持った私を蘇らせて、死霊術で縛り自由に操ろうと計画したの。でもいざ蘇らせた私にそのスキルが無いと知るとコイツは計画を破棄し、早々に私を処分しようとした……まぁ、戦闘能力の高さを評価して手駒として残したみたいだけど」

「計画……破棄……ッ! もしかして『神兵計画』」

「あらぁ? 知ってたの。情報管理が甘いわね」


 ケラケラと笑いながらクレイジーバニーはベガを嘲笑った。


「ユニークスキル『奇跡』を持つ私を蘇らせたかったみたいだけどそれは叶わなかった。代わりにコイツは神器を作ろうとしたのよね」

「……『奇跡』? まさか、お前は……」


 クレイジーバニーの言葉に、スバルは思わず息を呑んだ。


「ふふ。そう、私は勇者。十年前の魔王との戦いで死んだ勇者、霧島雪華(きりしませつか)


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 スバルがクレイジーバニーを押さえている間に放置されている神器を破壊しようとユーリが剣を振りかぶる。


「今のうちに!」


 剣が杖に触れる直前、反発するように火花を散らして剣が弾かれた。


「また障壁……だったら」


 ユーリが意識を集中させ、スキルを発動させる。スキルの効果を受けて、ユーリの剣が光りに包まれる。


「これで……終わり!」


 ユーリの剣が一閃し、杖が真っ二つに破壊され床に転がった。


 その様子を遠くから見ていたクレイジーバニーはおどけた調子で囃し立てた。


「あっははは! やるじゃない、あの子。神器を破壊するなんて、だいぶ『奇跡』を使えるようになったのね」

「これで神器も使えなくなった。ベガへの復讐も十分だろ……大人しく捕まってくれ」

「あら、嫌よ。これから楽しくなるんじゃない」

「何をする気だよ……」


 クレイジーバニーが指を鳴らすと破壊された神器の先端部分が手元に現れた。


「私が欲しかったのは神器じゃない。この結晶体よ」


 クレイジーバニーが杖の先端から黒く光る結晶体を取り外すと、それを飲み込んだ。


「あっ! お前、何を……」

「くふっ……ふふ、ずいぶん待ったわ……ようやくこの時が来た」


 クレイジーバニーは身悶えするように両手で自身の身体を抱き締めて、身の内から湧き出す強烈な力を感じ取っていた。


「元の計画では、聖人化した命から作られる結晶体はアンデッドの私には取り込めない『聖』属性、だから密かに第二案としてその場にいる者達の命を代用する作戦になるよう誘導したの。そうすれば結晶体の属性は『魔』となる。力だけを求めていたベガは属性の違いなんて気にもしていなかったようだけど……お陰でちょっと追い込まれただけで魔属性の神器を作ってくれたわ。後は適当なタイミングで神器を奪い取るだ~け……所詮、組織の中だけでのし上がった男。命令一つで他人を動かし、全てが自分の為に存在すると勘違いしてくれて、楽勝だったわ」


 クレイジーバニーの身体から黒い煙が立ち上る。


「何を、する気だ……」

「くふっ……ふふふ。そうね、手始めにベガの願った世界でも作ってやろうかしら。神に、勇者に、ステラ教団に救いを求めるように世界中を業火で包み込むの……さぞかし絶景でしょうねぇ」

「お前……この世界は、お前が命と引き換えにして守った世界なんだぞ! それをどうして……」

「さぁ? どうしてかしら、ね……もしかしたらこれが死の穢れってヤツかしら。全てを潰したくて! 潰したくて堪らないの! でも、仕方ないわよね……私を蘇らせたのが悪いんだから」


 クレイジーバニーの両目から黒い涙が零れ、口の端から黒炎が漏れ出る。

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