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78 生存競争

「く、くはははっ! スキルの限界点を超えやがったのか。命知らずが……だが見事だぜ、勝利の為ならば全てを捨てる。まさに獣人の誇りそのものだ」


 強化系スキルには、身体を壊さず安全に使えるように効果を制限する限界点というものが存在し、通常はその範囲内で効果を調整するのだが、コーネリアは『獣性解放』スキルの効果をさらに引き出す為に、自らの意思でその限界点を超えた。


 結果、大狼となったコーネリアの身体はプロキオンの大きさを超えて巨大になった。


 だが元の身体を数十倍に巨大化させた反動で身体は痩せ細り、四肢には力強さはなく巨体を支え切れずフラついている。


 一見すれば死に掛けているように見える。


 実際、コーネリアの体力、魔力の全てを消費しているこのスキルも、一分と待たずに解除されてしまい、その後は自力で動けないほどに衰弱して死ぬだろう。


 ここでプロキオンが時間稼ぎの戦いをすればそれだけで彼の勝ちは決定的となる。


 だが倫理観も正義感も持ち合わせず、ただ戦闘の愉悦のみを追求するプロキオンにその選択肢は無い。


 相手が命を懸けて挑んで来るならば、それを真っ向から受けて叩き伏せる。それが獣人の戦いであり、それがプロキオンなのだ。


「最後の一撃か……いいね。来いよ。テメェの命を込めた攻撃が俺の命を食えるのか……試してみろよ!」


 プロキオンが腰を落とし、身構える。


 コーネリアの姿が一瞬消えて、プロキオンの身体に衝撃が走る。


「ぐっ……おおぉおぉおおっ!」


 刹那の瞬間、プロキオンは激しい衝撃に吹き飛ばされそうになるが耐え抜き、反撃でコーネリアの身体を床に叩きつけた。


 気を失ったコーネリアの身体が獣性解放スキルが解除されて元に戻った。


「け、けひひ、かぁ……勝った……ぜ」


 コーネリアの最後の攻撃を受けたプロキオンの半身は吹き飛び、夥しい出血とともにゆっくりと倒れ伏した。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「……んお、ウチ……生きとるん?」


 スキルの反動により深刻な衰弱状態に陥り、昏睡していたコーネリアがゆっくりと目を覚ました。


 プロキオンとの最後の戦い、朧気な意識の中で勝っても負けても無事では済まないと死を覚悟していた筈なのに、徐々に意識が回復していく自分に驚いていた。


「あっ! 起きたか、コーネリア! ミオン教官、コーネリアが起きたよ!」


 床に倒れているコーネリアの横で、ルイが目を潤ませてコーネリアが目覚めた事を喜んだ。


「コーネリアさん、身体は大丈夫ですか~?」

「……あぁダメですね……首から下が無くなったみたい……指一本、動かせないや」


 痩せこけた顔で弱々しく喋るコーネリアをルイとミオンが心配そうに見ている。


「二人は……大丈夫そう?」

「お陰様でな」

「多少痛め付けられましたが、弱すぎてプロキオンの興味を引かなかったようで止めは刺されなかったんですよ」


 本気ではなかったとはいえプロキオンの攻撃を食らった二人もしばらくは動けずにいたが、先に回復したルイがミオンを起こして二人でコーネリアの手当てをした。


 しかし、ありったけの回復薬を飲ませてもコーネリアの反応が無く、ほとほと困り果てていた。その時、ミオンがダンジョンの魔力をコーネリアの身体に注ぎ込む方法をダメ元で試してみると辛うじて回復の兆しを見せて、今ようやく意識を取り戻した。


「プロキオンは……?」

「あそこ」


 ルイが少し離れた場所で血塗れで倒れるプロキオンを指差した。


「あの化け物じみたプロキオンを一人で倒すなんて凄いじゃん!」

「でも勝てなかったよ……ウチが先に倒れたし……生き残ったのも、二人が治療してくれたからだし……ウチの負け」

「なぁに言ってんの。生き残ったんだから勝ちだよ! あたい達は力を振り絞って生き残り、アイツは死んだ。だからあたい達の勝ち!」

「……そう、だね」


 コーネリアはまだ納得出来そうにない様子ではあったが、ルイの言う事も一理ある。


 生死を賭けた戦いで生き残ったのだから、勝者であるのは間違い無い。それを悔やむというならば、次は自力で生き残るように鍛えれば良い。コーネリアは、そう自分に言い聞かせた。


「それより、ミオン教官。早いとこダンジョンコアを操作して魔力を止めようよ」

「そうでした~ルイさん~コーネリアさんをお願いしますね~」


 コーネリアとルイをその場に残し、ミオンは一人部屋の奥へと進む。


 突き当たりの壁には巨大な結晶体が埋め込まれていて、まるで呼吸をしているかのように光りが明滅している。


 この結晶体がダンジョンコアだ。ミオンは壁の手前にある制御盤に手を触れると、目の前に様々な画面が現れた。制御盤を操作して画面を動かし、数ある項目の中からダンジョンの機能を見つけ出した。


「魔力経路~魔力経路~……あった! 魔力経路遮断、実行~!」


 ミオンが制御盤を操作して、ダンジョンコアからダンジョン内へ供給されている魔力経路を一時遮断し、ダンジョンの機能を全て停止させる事に成功した。


 これでダンジョン内で行われている数々の実験は無効となり、ベガの神器作成も不可能となる。


 筈だった。

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