72 地下ダンジョンへ
「大星師ベガの企み。それが何なのかは~分かりませんが~早急に潰してしまわないと被害が~拡大してしまいます~」
「……とは言え、いきなり大星師の命を奪っても私達がお尋ね者になるだけですし、失敗すればより悪い状況になるだけですよ。少なくともその企みとやらの中身を掴んでおかないと……ミオン教官、何か心当たりは無いんですか?」
スバルに問われたミオンは部屋のベッドに腰掛けて、記憶を探っている。
(『神兵計画』について聞いてみるか……ベガの企みは、破棄されたその計画と関わりがある筈……だがそうすると私の正体も追及される。今はまだ早いか)
人知れずスバルが塔に侵入して得た情報を提示しようかと悩んでいると、ベッドの上で唸っていたミオンが不意にある事を思い出した。
「そう言えば~塔の地下ダンジョン……」
「地下ダンジョンって、前にあたいの隠し部屋と繋がったあのダンジョン?」
「ええ~あの頃はベガの指示で~秘密裏にダンジョンの拡張を~行っていたんです~。表向きには~訓練の難易度を上げる為~研究施設の増設の為~と言われていましたが、もしかしたら増設された階層に何かあるかも~しれないですね~」
「その階層には誰でも入れるんですか?」
「いいえ~。候補生は勿論、教団関係者でも~一部の者だけですね~。因みに私も入れませ~ん」
「つまり、入れるのは大星師ベガとベガが許可した者だけ……悪さするには最適な場所じゃん」
「うん、コーネリアの言う通り。調べてみる価値はありそうだね。どうします、ミオン先生」
「そうですね~……正直、時間的猶予が~どれほどあるのか不安ですが~焦っては私の二の舞になりますか~。分かりました、ダンジョンを調べましょう~」
宿を引き払い、スバル達は目立たないように塔近くまで移動した。
公式には星騎士ミオンが何者かに殺害された事になっており、教団施設はどこも厳重警戒態勢となっておりミオンの部下であるスバル達も教団関係者に見付かれば簡単には行動出来ない状態になると予測される。
ミオンがベガに反抗した事で、ベガの疑いの目はスバル達にも向けられている可能性がある。何かしらの名目で身柄を拘束されるかもしれない。
「バレないように地下ダンジョンへ侵入するには~正規の入り口はまず無理ですね~」
「何処かに非常口みたいな所は無いんですか、先生」
ユーリが背中に背負ったミオンに問い掛けたが、ミオンは首を横に振った。
「あるにはありますが~、当然そこも無人ではありませ~ん」
「う~ん、強行突破するしか……」
「何言ってんのさ、ユーリ。ここはあたいの出番でしょ。入り口が無ければ、作ればいいんだよ」
「……あっ、そうか! ルイなら隠し部屋を作れるんだっけ……でも、その為には敷地内に行かないとだね」
「いえ~地下ダンジョンは広範囲に拡がっていて~実は敷地の外にも~延びているんですよ~。ですからルイさんには~適当な場所で『抜け穴』を~開けてもらいましょう~」
人気の無い路地裏を通り、敷地の正門から外れた場所へやって来た。
「この辺りでいいでしょう~。ルイさん、お願いします~」
「あいよ。水精、地精、火精、風精、光精、闇精。数多の精霊を従えて、ここに悠久無限の起点となせ。精霊の友、妖精族のルイが願う 『蜃気楼部屋』」
ルイの詠唱が完了し、光る魔法陣がスバル達を飲み込んだ。
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魔法陣を越えた先は、狙い通り地下ダンジョンの通路に出た。
「よし、上手くいったね。ミオン教官、最深部への道は?」
「正規ルートだと~誰かに見付かる可能性が高いですね~幹部用の直通ルートを~行きましょう~」
「じゃあそこまでは姿を隠そう。メロディエンスの名の下に。光精よ、我らの身を隠せ 『透明形態』」
スバル達の身体から色が抜け落ち、周りの景色と同化した。とはいえ完全に消えた訳でもなく近くにいると違和感がありバレてしまうが、よほど近付かなければ問題ない。
ミオンの案内の下、徘徊する魔物とは極力戦闘を避けて進み、無事に目的の幹部用のルートがある部屋の前まで来た。
「あの部屋の中に~階層移動の特別装置があるんですが~さすがにそこは無人ではありません~」
「むぅ……どうやって制圧しようか」
「中に何人いるか、ルイ分かる?」
問われたルイは精霊から情報をもらい。
「男が二人だって。どうする? 殺っちゃう?」
「彼らは~ただ職務を~全うしているだけなので~出来れば、あまり無体な事は避けて下さ~い」
「は~い、そんじゃ窒息させて気絶してもらおうか。ふぅちゃん、やっちゃって」
ルイが風精霊にお願いして数秒後、部屋の中から物音がした。
スバルが恐る恐る扉を開けると、二人の男が床に倒れていた。
「よし、コーネリアとユーリは彼らを縛っておいて。ミオン教官、装置を動かせますか」
コーネリアとユーリが床に倒れている男達に目隠しと猿轡をした上で動けないように手足も縛っていく。扉をしっかりと施錠しておけば魔物の侵入も防げるので、このまま彼らを放置しても身の安全は保証されるだろう。
一方、床に設置されている魔法陣が刻まれた大きな円盤に乗ったミオンはスバルに抱きかかえられながら操作盤を弄っている。
「ふむふむ~やはり、知らない階層が増えてますね~。恐らく、最深部の一歩手前の階層がベガの研究施設でしょう~。皆さん、行きましょう~」
ミオンは操作盤に手を触れ、魔法陣を起動させた。




