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68 大宴会

 ユピテルの誘拐から始まり、周辺の環境を荒らしてしまった氷竜の騒動も村や村人にも大した被害が出る事なく収まった。それを祝してその日の夕食は、村の広場で盛大に執り行われる事になった。


「せっかくだから私達も何か料理を出そうか」


 広場に幾つもテーブルが用意され、出される料理は各家で調理されている最中だ。


 一応、スバル達は主賓扱いでただ準備が整うのを見ているだけで良いと言われたが、どうにも暇を持て余していた。


「いいね。ムラサキ様から貰った干物でも焼く?」

「コーネリア、さすがに簡単過ぎない? もうちょっと手の込んだ物を……」

「はぁ? 何言ってんの! 干物を美味しく焼くのにもテクニックがいるんだよ!」

「わかったわかった。じゃあ、コーネリアは干物ね。ルイとユーリはどうする?」

「あ~、あたいは料理なんて出来んしコーネリアの手伝いでもすっかな」

「じゃあボクはスバルの方を手伝うよ」


 二手に分かれて料理を作る。コーネリアとルイは野外で焼くつもりらしく、石を積んで竈作りから始めるようだ。


「スバルは何を作るつもりなの?」

「牧場でミルクを貰ってデザートでも作ろうかなって思ってる」

「いいね、アイスクリームか。じゃあボクは牛乳か羊乳を貰ってくるよ」


 ユーリが牧場へ材料を調達しに行ってる間に手早く準備を整える。


 自前の調理器具を並べて、味付けには。


「え~と、樹海蜂の蜂蜜が少し……それからクレタの街で買った塩も使ってみるか」


 水棲族の作る栄養豊富な塩なら甘いアイスの味を引き立てる事だろう。


「メロディエンスの名の下に。水精よ、塊となれ 氷塊(アイスブロック)


 ボールの中に大きめの氷塊を作り出し、砕いていく。氷を砕いているといつの間にか興味を牽かれたのか白蜥蜴が近付いてボールを覗き込んでいた。


「あぁ、ちょうど良い。氷が溶けないように冷やしといて」


 スバルは白蜥蜴を掴むと砕いた氷の中に放り込んだ。意外と快適なのか白蜥蜴は気持ち良さそうに身体を丸めて目を閉じる。


 そうこうしているとユーリがバケツに白いミルクを入れて戻ってきた。


「羊乳、貰ってきたよ」

「おかえり。そんじゃ始めますか。まずは羊乳を温めないとね、ユーリにお願い」

「ちょっと待ってね……ユーリの名の下に。火精よ、我が手に宿れ 加熱手(ホットハンド)


 ボールに手を触れ徐々に加熱していく。十分に温まった所で羊乳、卵黄、砂糖を加えて混ぜ合わせていく。


「だいたい混ざったら、今度は冷やす」


 氷で満たした器の中へボールを移してかき混ぜていく。氷の中で寝ていた白蜥蜴が何事かと慌てて抜け出す。


「ユーリ、白蜥蜴を氷の中に戻して。もっと氷を冷やさないと」

「えぇ!? ちょっと可哀想じゃない? せめて外側から冷やすように頼んだら?」

「む……仕方ない。外側から冷やしてくれる?」


 逃げ出した白蜥蜴が渋々戻って来ると、口を開き緩やかな白い息を吐いた。


 白い息に当たったボールに霜が付き、内側の氷がみるみる冷やされていく。


「お? 良い感じに固まり始めたね」


 黄色い液体が少しずつ固まり、角が立つほど固まった所で味見をしてみる。スバルとユーリ、それから白蜥蜴が一口ずつ味見をする。


「ふむ……悪くないね」

「甘さが少し足りないような……でもこれでいっか」

「後から塩と蜂蜜をかければ良いよ。よし、完成」


 二口目が欲しそうな白蜥蜴を氷の中に突っ込んでスバルとユーリは広場のテーブルに出来上がったアイスを運んでいく。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 自分達の分を作り終えたスバルとユーリはコーネリア達の様子を見に行くと、アルスタの港町で買った他国の酒を片手に焼いた干物を齧りながらすでに酔っ払っていた。


「んな……何やってんの、コーネリア、ルイ! 夕食前だって言うのに、もう酔ってんじゃん」

「えへへ、最初はさぁ干物を焼くのに良い酒だと思ってたんだけどぉ……干物の焼ける匂いが堪んなくてさぁ……えへへ、飲んじったぁ」

「うえ~い、結構強い酒でさぁ……あたいもよっぱっぱだよぉ」


 赤ら顔で酒杯を傾ける二人に呆れ、スバルが酒を取り上げて焼き上がった干物はユーリが広場に運んでいく。


「全く、せめて皆が集まるまで待ちなさいよ」

「あ~い、とぅいまて~ん」

「きゃはは! て~ん」


 少し面倒くさくなった二人に水を飲ませて広場の隅っこに座らせておく。


 日が沈み、周囲に篝火が焚かれると村人達が広場に集まり、長老が乾杯の挨拶をすると盛大に会食が始まった。


「コーネリア、この串焼き、お姉ちゃんと一緒に焼いたの。食べて」

「へぇ上手に焼けたね……うん、旨い」


 ユピテルとミルキーがスバル達に料理を振る舞い、リゲルとミラがスバル達に改めて礼を言いに来た。


「娘達が世話になったねぇ。こうして家族揃って食事が出来んのも皆のお陰だよ。ありがとねぇ」

「本当にありがとよ。娘の事だけじゃなく、村の為に命懸けで頑張ってくれて……本当に感謝してるよ」

「いえいえ、私達は修行中だけど星騎士を目指す身ですから。たとえどんな相手でも全力で立ち向かいますよ」

「ほう! ステラ教団の星騎士を目指してるのかい。やっぱり君達は凄いねぇ」

「未来の星騎士様に料理を振る舞えるなんて嬉しいねぇ。さあさあ、どんどん食べておくれよ!」


 リゲルとミラから山盛りの料理を渡され、他の村人達からも何度も乾杯をせがまれて、その日は夜遅くまで大いに騒いだのだった。

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