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63 冷宝山の宝

 日が暮れる頃、夕食を摂る為にミルキーの家に招かれたスバル達を一家が温かく出迎えてくれた。


「さぁさぁ、沢山用意したで食べてくれな」


 デカいテーブルの上に羊料理を始め、様々な焼き物、煮物が並ぶ。


「あい、コーネリアここね」

「はいはい、そんじゃ座るよ」


 ユピテルが自分の横の椅子を叩き、コーネリアを座らせた。


 動物好きのユピテルは思う存分遊んでくれたコーネリアをすっかり気に入り、頻りに世話を焼こうとする。


 コーネリアの皿に山盛りの料理をよそっても瞬く間に消えていくのが面白いのか、あれもこれもと乗せていく。


 ユピテルがコーネリアばかり構っていて、自分の食事が進んでいない様子に、リゲルが一言叱る。


「ユピテル、お客さんはいいから。ちゃんと食べな」

「は~い」


 それからしばらく食事を楽しんでいるとユーリが冷宝山の話をリゲル達に聞いた。


「そういえばこの辺りで雪があるのは冷宝山だけですよね。何か理由があるんですか?」

「そうだなぁ。御山の頂上にある神殿にゃ、この村を開拓したご先祖さん達の残した宝があってその影響で御山は雪と氷に覆われているって話だねぇ」

「へぇ……地形に影響を与えるほどの宝。それってどんな物なんですか?」

「さあ?」


 好奇心で尋ねたユーリにリゲルは首を傾げた。


「実は神殿はあるんだが、そこには何にも無いのよ。言い伝えとして宝があるって残ってるけど、誰も見た事がないんよ。多分、昔に誰かが持って行ったんじゃないかねぇ」

「そうなんですか、ちょっと見てみたかったな」

「いいじゃない。雪景色なんて滅多に見れるものじゃないんだし、それだけで宝だよ」

「それもそっか」


 ユーリは少し残念そうだが、雪を見た事の無いスバルやコーネリアからしてみれば、白い景観を眺めるだけでも十分価値ある体験であった。


「この村の人は冷宝山を崇めているって聞きました。広場にあった木像なんかも面白いですよね」

「そんだねぇ。私らは後から引っ越して来たんだけど、村に最初から住んでる開拓組からしてみると御山の存在は心の励みになったんだろうねぇ。神様っちゅうか、頼もしい隣人みたいな感じなんだろう。お客さん達は御山に登るんだろうけど、汚さず荒らさずでお願いしますね」

「はい、分かりました」


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 翌日、晴天の空の下。スバル達は冷宝山の頂上への道を歩き始めた。


「頂上への道は幾つかあるようだけど、せっかくだし少し遠回りして景色を楽しみながら登ろうか。ミラさんがお弁当を作ってくれたから途中で食べよう」

「燻製肉のサンドイッチとチーズ、それから……く~良い匂い。どこで食べる?」


 スバルが持っている包みから漏れる匂いを嗅ぎ、コーネリアが期待に胸を膨らませている。


「まあ、どこか適当な所でね。さ、行こう」


 それほど標高は高くない冷宝山。山の裾野を回りながら少しずつ頂上を目指していく。


 冷宝山の力なのか、道中に現れる魔物はどれも小型で、あえて討伐するほどの狂暴性は無くこちらの姿を見ると慌てて逃げ出していく。


 しばらくは景色を楽しみながら進み、時折見かける自生している果実や茸を手に取る。


「ねぇねぇ。これさぁ……イケるかな?」

「コーネリア。その茸は止めとこ」

「でもさぁ……見た目が派手だからって毒茸とは限らんじゃん」

「食料に困ってないし、こんな所で賭けに出ないで」


 倒木にびっしりと生えた毒々しい茸に手を伸ばそうとするコーネリアをスバルが止める。


「ねぇ、ルイ。あそこの実、取れる?」

「どれどれ。ん~、甘い香り。おやつにしよ」


 背の高い木の上に成っている小さな実をルイがもぎ取り、ユーリの広げる袋の中に次々と落としていく。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 スバル達が冷宝山に向かっている頃。麓の村に新たな旅人が現れた。


 武装した男が三人。冒険者のように思われるが、どこか不穏な雰囲気を感じさせる男達だ。


「あそこが噂の冷宝山か。本当に雪が積もってやがるぜ」

「けどよぉ、マジで宝なんてあんのか? 有名な話なんだろ。だったら誰かが先に奪っていてもおかしくねぇだろ」

「あぁ、山頂の神殿には何も無いってのは知られた話だ。だがその話には裏があってな、神殿には隠された場所があるらしく、そこは封印されているんだと。で、封印を解く鍵ってのが宝を残した奴らの子孫。つまりこの村の連中だと言われているらしい」

「マジ話か、それ? 胡散臭い話だ」

「俺はあると思うぜ。なんせ、あの山は常に雪に覆われている。何かが無ければ、ああは成らねぇだろ」


 男達は神殿に眠る宝を求めて、村へやって来たようだ。冷宝山の宝の噂はこの辺りでは有名なようだが、宝が存在しない事も確認されている。


 それでも失伝した情報をかき集め、推測を重ねて男達はここへ来た。


「あれば良し、無ければ無いで一暴れして金を稼ぐさ」


 欲に溺れた目で男は村を見回した。


「小せぇ村だが、少しくらい金目の物があんだろ」

「そんじゃ行くか。封印を解くにはここの村人が必要なんだろ。若い女でも拐うか?」

「上まで連れていくのは骨が折れる。楽しむのは降りてからにしようぜ」

「……となると運ぶのに面倒がねぇ奴にしよう」


 ニヤリと笑う男の前に、ポツンと立っているユピテルがいた。

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