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48 聖なる波動

 意識を集中させ、ただ一つの事を念ずる。


「ボクは、アイツを……倒す」


 ユーリは目を見開き、コーネリアとルイが応戦している鎧騎士に向かって走り出した。


 正直、ユニークスキル『奇跡』を発動出来るかどうかは怪しい。だがそれでもユーリは剣を握り、敵を討つべく向かっていく。


 コーネリアとルイの攻撃でよろけた鎧騎士の腹部を横一閃に切りつける。


 鎧騎士の背後に回るとすぐさま身を翻し、捻りを加えた斬撃で鎧騎士の首を薙ぐ。


 ルイの水鞭が大剣を絡め取り鎧騎士の手から引き剥がそうとするが、大剣を手放そうとしない鎧騎士が大剣に魔力を溜め込み続け、黒い波動を放とうとする。


 いくら攻め立てられても鎧騎士の手から離れない大剣が纏う黒い波動は限界まで溜め込まれ大きく膨れ上がった。このまま放たれればその波動はこの空間全てを飲み込み、全員が呪病に冒されて戦いに負ける。


 全員が危機的状況を打破する為に力を振り絞る。しかし三人の足掻き嘲笑うように大剣から放たれた黒い波動が水鞭を破壊し、コーネリアとルイに迫る。


「させないぃ!!」


 二人の前に立ち塞がったユーリが盾を掲げ、眼前に迫る黒い波動に立ち向かった。


 命を蝕む黒い波動の中にユーリが飛び込んだ瞬間、ユーリの中から黒い波動と相反するエネルギーが迸り、黒い波動を押し返して空間全てを塗り変えた。


「何、この光り……」

「聖魔法の浄化の光りに似てるけど……威力が桁違いだよ」

「聖なる……波動」


 コーネリア達には無害な光りでもアンデッドである鎧騎士には効果抜群らしく、光りを浴びた鎧騎士は身体から煙りを上げて苦しみ、膝をついた。


 大剣が纏っていた黒い波動は消え去り、大剣も刃溢れし始めた。


 逆転のチャンスを掴み取り、ユーリが鎧騎士に切り掛かる。ユーリが振り下ろした剣を片膝を突いた鎧騎士が大剣を構えて防ぐ。


 ユーリの剣を受け止めた大剣にヒビが入り、剣の勢いを完全には止めきれず鎧の肩口まで刃が食い込んだがそこで止まり、そこから刃が進まない。


 ユーリの放った聖なる波動が消え失せ、逆に鎧騎士の宝珠から魔力が注ぎ込まれて大剣の黒い波動が少しずつ復活し始める。


「ぐ、ぐぅ……くうぅ……」


 歯を食い縛り、鋼鉄の鎧に切り込んでいくが刃が進まない。


 力を取り戻した鎧騎士がユーリの剣を押し戻そうとしたその時。


「メロディエンスの名の下に。地精よ、刃に宿れ 『重圧(プレッシャー)』」


 ユーリの剣の上からスバルの剣が重ねられた。


「スバル!」

「一気にいくよ! せぃやあっ!」


 魔法によって重さが変化したスバルの剣が加わり、ユーリの剣が肩から胸へと進み。


「これで、終わりっ!」


 大剣と宝珠を真っ二つに切り裂いた。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 地下のダンジョンから帰還したスバル達は病人達の様子を確かめる為に倉庫へ向かうと、出発前には弱々しい姿だった病人達が、皆穏やかな様子で眠っていた。


「お~戻ってきましたか~」

「はい、ミオン教官。島の地下で呪病の原因と思しきアンデッド系の鎧騎士を討伐しました。これが持っていたアイテムです」


 スバルが回収した大剣と宝珠の残骸をミオンに渡した。


「ふむふむ~宝珠の方はアンデッド系の魔石を~加工して作られた物ですかね~。大剣の方は……おや?」

「どうかしましたか?」

「いえいえ~何でもないですよ~お疲れ様でした~」


 大剣の残骸を見てミオンは何かに気付いた様子だったが、ハッキリとは言及はせずに流してスバル達を労った。


「少し前に~病人達の容態が~改善しましてね~。今、一番症状が重いのは~過労で倒れたディーネさんくらいですね~」

「そうですか、私達の方もミオン教官の持ってきたアイテムが無かったら危ない所でした」

「役に立ったのなら~良かったです~皆、疲れたでしょ~宿で休んで下さ~い」

「はい、お言葉に甘えて……ミオン教官はどうされるんですか?」

「私は~もう少し~調査をしたいと思いま~す」


 鎧騎士との戦いで体力、魔力を振り絞ったスバル達の体調も万全とは言えない。四人は宿へと移動し、一人残ったミオンは報告にあった地下の入り口から地下ダンジョンへと進入した。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「ここが島の中心ですかね~」


 ミオンがスバル達と鎧騎士が戦ったダンジョンの中心部に訪れる。


 激しい戦いの痕跡が残る中、ミオンは地面に倒れる鎧騎士の死体に近付いた。


 肩から斜めに鎧ごとバッサリと切断され、完全に沈黙している。


「どれどれ~」


 ミオンが鎧騎士の兜を取り、中身の顔を確認した。血の気が失せた死人の顔ではあったが、まだ年若い青年のように見える。


「確か……試験を受けていた」


 青年の顔を微かに覚えがあった。記憶の片隅に残るその顔は、試験合否の発表の際に揉め事を起こし最終的に大星師ベガの付き人に採用された青年だという事をミオンは思い出した。


 あの試験以降は一、二度、顔を見た程度でいつの間にか姿を見なくなっていた。


 大して興味の無かったミオンは、別の支部に転属になったか、クビにでもなったのだろうと思っていた。


「こんな所で~こんな姿に~」


 ミオンがスバルから渡された大剣を見て、以前スバルが遭遇した冒険者のアンデッドが持っていた剣と一部が酷似した作りになっている事に疑問を持ち、装備していた鎧騎士を調べてみたら姿を消した教団関係者。


「もしかしたら~……何か関係しているんですか~大星師ベガ様~?」


 短絡的に考えてはいけない事ではあるが、おそらく作り手が同一人物であろう呪い武具、考え方によっては使い捨ての駒として利用した青年。


 ミオンは底知れぬ悪意の存在を感じて、険しい顔で呟いた。

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