45 呪病
「まず、ここにいる患者達は私の聖魔法で一度は快癒する事が出来ました。ですがすぐに病が再発し、患者数も日に日に増え……今は病の治療よりも体力を回復させて時間を稼ぐのが精一杯なのです。お願いです……どうか、患者た……ちを…」
震える手でミオンの服を掴み、必死に問題解決を訴えていたディーネの体力も限界となり不意に意識を失い、膝から崩れ落ちた。
「ディーネ様っ!」
村人達が慌てて彼女を支えながら地面に寝かした。力無く横たわるディーネの姿を村人達は悲痛な思いで見守るしかなかった。
「ディーネ様はもう体力も魔力も枯渇しているのに……少しでも魔力が回復すれば全て使ってしまうんです。何度倒れても、患者達の命を繋ぎ止める為に」
疲労が蓄積し生気の失せた半死人のような状態のディーネの奮闘により、今はまだ死人は出ていない。だがそれも限界が来ている。
数日のうちに状況を変えなければ、患者達の命は潰えるだろう。
「場所を~変えましょうか~」
建物の外に場所を移し、ミオンはスバル達に今後の行動を指示した。
「今回の病は~自然発生したものでは~ありません~。島の何処かにいる~魔物の放つ魔力が原因で引き起こされた『呪病』という呪いなのです~」
「魔物の放つ魔力……相手はアンデッド系という事でしょうか?」
「または~強力な呪いが付与された~武具の可能性もありま~す」
「あるいはその両方、ですね」
強力な呪いが掛かった武具を普通の魔物が使うのはデメリットが大きい。だが、アンデッド系の魔物ならば装備するだけで命に関わるような危険な武具でも問題無く装備出来る。
聖魔法の浄化を跳ね除けて広範囲に呪病を撒き散らす存在となると、それはユーリの言う通り呪いの武具を装備した強力なアンデッド系の魔物の可能性が高い。
「私は~倒れたディーネさんの代わりに~患者さんの延命に尽力しま~す。魔物の方は~皆さんにお任せしましたよ~」
「それは分かりましたが、大丈夫ですか? ディーネさんと同じようにミオン先生も倒れてしまうんじゃ……」
ミオンの身を案じたユーリが思わずミオンに声を掛けた。
「大丈夫ですよ~。役立ちそうなアイテムを~山ほど持って来ましたからね~」
ミオンは持っていた魔法鞄の中から、馬車に積んでいた木箱を取り出して蓋を開けた。
「広範囲を浄化出来る~魔法具と大量の魔石~魔力回復薬~体力回復薬~各種活性薬~魔法効果を高める~法衣に~身代わり人形~などなど~」
ミオンが用意したアイテムの幾つかを貰い、スバル達は原因究明の為に行動を開始した。
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「呪病の原因となる不浄な魔力を生み出している魔物かぁ……ルイは何か感じないの?」
「う~ん。島全体が霧に覆われているような感じで、薄~く何かあるのは感じるけど発生源を感知出来るほどじゃないね」
スバルは妖精族のルイならば魔力の流れから何か察知出来るのではと考えて尋ねてみたが、ルイは魔力の存在は感じ取れても発生源となっている魔物の居場所までは分からないようだ。
以前、アスター草原で一緒に活動した冒険者のハロルが言っていたように、微細な魔力の探知というのはかなり特殊な技能で、誰にでも出来るようなものではなかった。
「覚えようとしても無理だったけど、あの時の技能があればなぁ……」
無い物強請りになってしまうがあの技能を覚えられなかった事を大いに悔やむスバルであった。
それぞれが知恵を絞っているとコーネリアがルイに尋ねた。
「ルイ、風の精霊に頼んで島全体を索敵出来ないかな。魔力から察知出来なくても、島の何処かにはいるんでしょ?」
「そうだね。多少、時間が掛かるけどやってみるよ……ふうちゃん! 行ってきてちょーだい」
応えるような声は無かったが、一陣の風がスバル達の間を吹き抜けた。
ルイが風精霊に探索をお願いしてから数分後、不意にルイが困惑の声を上げた。
「えぇ! 何処にも姿が見えないぃ?」
「ルイ、それ本当?」
「う、うん。普通の小型魔物の姿はあるんだけど……島全体を魔力で覆うような強力な魔物の姿は無いって」
「…………島、全体」
スバルとルイが思わぬ結果に困惑しているとユーリが何かを考え込みながらポツリと呟いた。
「どうかした? ユーリ」
「うん……島全体を魔力で覆うとしたら、一番効率的なのは島の中心で放出する事だと思うんだけど」
「でも、ふうちゃんは島の中心部には変な魔物は居なかったって言ってるよ?」
「うん……だから、平面的な『円』じゃなくて立体的な『球』の中心じゃないかなって」
「球……つまり、球の中心部に魔物がいるなら、魔物の姿が無い島は球の中心部ではない……もっと下……地下? もしかして地下空間が存在してるって事?」
「多分、そうじゃないかな。ルイ、風の精霊さんは地下まで索敵してる?」
「ううん、索敵は地上部分だけだよ。そっか下か、ちぃちゃん! 調べて」
ルイが地精霊を動かして索敵を開始すると、すぐに反応があった。
「あ、凄い! 通路がある。そこまで複雑じゃ無いけど、結構深くまで延びてる」
「ルイ、通路の出入り口が島の何処かにある筈だよ。見付けて」
「任せといて……近い! こっちだよ」
地下への入り口を発見したルイがスバル達を案内した。




