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42 勇者

「とにかく、この隠し部屋は~すぐに閉鎖。お酒に関しては~没収」

「やだやだやだぁ! あたいの酒ぇ!」

「仕方ないですね~では、一つだけ~返してあげます~。本来なら~罰として全没収~なんですからね~」


 ポロポロと涙を溢しながら地上に出たルイが隠し部屋を閉じている間、ユーリが自慢気にミオンへ話し掛けた。


「聞いて下さいよ、ミオン先生! 私、ついに使えたんです、あのスキル!」

「……! それは本当ですか?」

「はい! ボクとスバルが凄く硬いスライムに襲われて、スバルがピンチだった時に発動したんです!」

「そう、ですか~……」


 嬉しそうに語るユーリとは違い、ミオンは少し考え込むように黙った。


「え、何々。ユーリは、なんか凄いスキルを持ってんの?」


 横で聞いていたコーネリアが質問するとユーリは得意気に答えようとしたが、寸前で何かに気付き口を押さえてミオンに視線を向けた。


 ユーリの突然の行動に理解が及ばず首を傾げるコーネリア。答えに窮して狼狽えたユーリがミオンに助けを乞うような視線を向けると、小さく溜め息をついたミオンが全員の拘束を解き、咳払いをしてスバル達に向き直った。


「ここで~誤魔化しても~意味がありませんね~……今から話す事は~決して誰にも~漏らしてはいけませ~ん。いいですね~?」


 静かではあるが有無を言わせぬ圧力が込められた言葉に、コーネリア達は神妙な面持ちで頷いた。


「ユーリ……岡 侑李は~異界より召喚された~当代の勇者なので~す。そして~ユーリの言っているスキル~というのが、勇者だけが使える~ユニークスキル『奇跡』なのです~。召喚されてより~訓練に明け暮れていたユーリが~ユニークスキルを使ったのは初めて~でしたね」


 ミオンの説明を聞いて驚愕し、その意味を理解するとコーネリアは絶叫した。


「うえぇぇっ! ゆ、ゆゆ勇者ぁ! ユーリが勇者ぁ? まま、マジぃ!?」

「ほ~ん、なるほどねぇ」

「ちょっと、ルイ! 何でそんなに落ち着いてんの!? 勇者だよ、勇者ぁ!」

「うるさっ。十分、驚いてるって……スバルだってリアクション薄いじゃん」

「私は一足先にスキルを見てるからね。最初に気付いた時は驚き過ぎて思考が停止したけど」


 騒ぎ始めたコーネリア達を鎮める為、ミオンが両手を叩いて再び意識を自分に向けさせた。


「これは~内々に決まっていた事ですが~、ユーリのパーティーメンバーは~この四人で組んでもらいます~。今後ユーリが~勇者として~活動する時には~アナタ達が支えて下さ~いね」

「ボクからも。まだまだ未熟な勇者だけど全力で頑張っていくから、これからもどうかよろしくね」

「お、おぉ……ウチも頑張るよ。よろしくな、ユーリ」

「えへへ、あたいも協力するよ。勇者に協力したってなれば、郷の女王陛下もあたいに恩赦を出すかも……いや、褒美だって貰えるかも。うっしし」


 緊張した面持ちでユーリに答えるコーネリアと欲望が漏れ出るルイ。


 そして、スバルは。


「ユーリがどんな勇者になるのか。すぐ傍で見守っていくよ……ユーリの後ろに着いていくから」


 色々な意味を持つ言葉を送った。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 隠し部屋騒動から数日、スバル達は遠征準備を整えてミオンの到着を待っていた。


 勇者としての成長を促す目的でユーリに試練を与える為、教団よりとある地域への遠征が命じられたのだ。


 その地域では謎の病が流行し、近くの教団支部から聖魔法使いが派遣されて治療に当たったが完治せず、一時的に回復してもすぐ元に戻ってしまうという奇妙な病に頭を悩ませた教団支部が本国へと救援要請を出したのだ。


「これってユーリの『奇跡』の効果を期待しての派遣って事なんかな?」

「ん~だとしたら責任重大だけど、ユーリはあれからスキルが使えたの?」

「いや、全然……どうしよう、ボクの所為で病人達を助けられなかったら」

「聖魔法でも治らなかったんでしょ? 別にユーリの所為ってわけじゃないって! それに例のスキルに頼るのは最後の手段で、まずはその病の原因を突き止める方が重要なんじゃない?」


 地下ダンジョンで初めて使えたユーリのユニークスキル『奇跡』。やはり自由自在に使えるわけではなく、何度試しても二度目の発動はしなかった。勇者としてのプレッシャーを感じて、やや弱気になっているユーリに励ましの言葉をかけるスバル達。


 そこへ二頭立ての馬車の手綱を握ったミオンが到着した。


「は~い、皆さん。乗って乗って~。出発しますよ~」


 ミオンに促されて荷台に乗り込むスバル達は荷台に載せてある荷物を見付けた。


「何ですか、これは」

「それは向こうで~必要になるかもしれない物で~す」


 大きめの木箱が三つ。中に入っている物はなかなかの重量物のようで、スバルが持ち上げようとしても容易には持ち上がらなかった。


「さ~て。では目的地のミーノ島に向けて~まずは港町アルスタですね~」


 スバル達を乗せた馬車は港町アルスタを目指してポラリスを出発した。

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