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38 未知の穴

 ルイの作った異空間洞窟は小さな部屋が一つ、部屋の中央に酒壺が五つ置いてあるだけの簡素な作りだ。


「ここって地面の下に部屋があるわけ? 上を掘ったら地上に出れるとか?」

「ん~? 一応、位置的には地面の下って事になるんだろうけど……掘っても地上には出れないし、地上から掘ってもこの部屋には辿り着けない筈だよ。詳しい事はあたいにも分かんないけど」

「へ~」


 物珍しそうに土壁に手を触れ、確かな感触と土の匂いを感じたスバルは、ある疑問が浮かんだ。


「これって、いわゆるダンジョンとは違うの?」


 ダンジョンとは世界各地に存在し、内部には多数の魔物が徘徊する危険な場所である。


 そして人族の戦士はそのダンジョンに潜り、魔物を討伐してダンジョン内にある貴重なアイテムや鉱物資源を手に入れるのだ。


 人族の多くが持つ共通認識として、ダンジョンは魔族の仕掛けてきた大規模な罠の一種なのではないかという説がある。


 その理由は人族の欲望を刺激して多くの戦士をダンジョン深くへ誘い、凶悪な魔物や罠によって命を奪っている事。長らく戦士が入らず放置されたダンジョンは魔物の大軍を外に排出する事があり、その大軍が周辺の村や街道を行く人族に害をなす為だ。


 人族の多くがダンジョンの存在は魔族の仕業と信じているが魔族と深い関わりのあるスバルは、ダンジョンと魔族が無関係である事は知っている。


 何しろ魔族の領域にもダンジョンが存在するからだ。そして内部の魔物の強さも人族の領域に存在する魔物の強さとは異なり、非常に警戒されている。


 魔族達の見解としてはダンジョンとは、何かしらの切っ掛けで周辺の魔力が一ヶ所に集中し発生する一種の自然災害のようなものと見られている。


「ダンジョンとは違うけど……全く無関係とは言えないかな。ははは」

「どういう事?」

「大昔の妖精族が放棄した隠し部屋がある日変貌して……なんて事があったりなかったり?」

「えぇ! それ、本当なの?」

「大昔は妖精族の纏まりが悪くて世界中に散らばっていたらしいんだけど、何代か前の女王が各地の妖精族を説き伏せて今の地に郷を拓いたんだって……その時に集まった妖精達が残していった住み処がどうなったかはハッキリしてないんだよね」


 多くの妖精族が精霊とともに生活していた。精霊が活動すれば魔力が集まり流れとなる。一度流れが生まれれば、精霊が離れてもしばらくは残る。


 結果、時間の経過とともに消滅した所もあれば別の要因で残り続け、ダンジョン化する所もあった。


「まぁここがダンジョン化なんてするわけ無いよ。心配ないない」

「ふ~ん、それならいいけど。さあ、早く戻ろう。荷車も返さないといけないし」

「ほ~い、『酒宴の誘い』」


 ルイが出入りの合言葉を告げると二人は地上へと戻った。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 ルイが宿舎の傍に隠し部屋を作ってから数日、仕込んでいた蜂蜜酒の一部が出来上がり同室のコーネリア達を試飲に誘った。


「おほほほ、あたいの手作り蜂蜜酒が飲み頃なのよさ」


 静かな夜、スバル達を引き連れたルイが宿舎裏へとやって来た。


「密かに酒作りなんて……悪い奴だねぇルイ」

「う~ん。ボク、お酒は苦手だなぁ」

「蜂蜜酒は甘味が強いから水で割れば飲みやすいよ」

「ほいほ~い、そんじゃ行くよ。『酒宴の誘い』」


 異空間へと降り立った四人の前に五つの壺がある。発酵が進み以前より強くなった甘い匂いが四人の鼻孔をくすぐる。

 

「へぇ、美味しそうじゃん。早速飲もうよ」

「まぁ待ちなって、一番飲み頃の奴は……」

「あ、ボク干し肉持ってきたよ」


 コーネリア達が酒壺に夢中になっているが、スバルだけは別の所に目が向いていた。


「ん? どしたん、スバル。飲まんの?」


 コーネリアが二つのカップを持って、スバルに声を掛けてきた。


「穴が……開いてる」

「この穴がどうかした? この先が気になるん?」


 その視線の先には土壁にぽっかりと開いた大穴があった。ルイが隠し部屋を作った時には無かった筈の道が出来ていた。


「ル、ルイ! こ、これを見て!」

「え~、なぁに? 酒のお代わりが……ぶぅほぁ!!」


 陽気に蜂蜜酒を飲んでいたルイがスバルに促されて大穴を見て盛大に吹き出した。


「え、えぇ、あえぇ! 隠し部屋が広がってるぅ!! な、何で? どして?」

「理由は分からないけど……放置出来ないでしょ。この場所を閉じた方が良いんじゃない?」

「う、う~ん……そうだねぇ。でも閉じる前に穴の先を確認しておかないと、後々面倒臭い事になっちゃうかも」


 暗闇が続く大穴の先がどうなっているのか。魔物がいるのか、別の部屋でも出来ているのか、確認しておかなければ隠し部屋だけ閉じても何かしらの問題を残してしまう可能性がある。


「それじゃ、今から行っちゃう?」


 好奇心が刺激されたのかワクワク顔でコーネリアが提案してくるが、ユーリとスバルは首を振った。


「ボク達、何の準備もしてないんだよ? 危ないって」

「そうだよ、この先にどんなものがいるか分からないんだから。本当なら教官に報告した方が良いのかもしれないけど」

「それは無し! 流石にこれはマズい! 大事になったら故郷の女王から更なる罰を食らっちゃうよ!! 全力で隠蔽の方向で頼ます!」

「そういう事だから、私達四人だけで確認しよう。準備を整えて、明日行こう」


 コーネリアも本気で突撃するつもりは無かったようで素直に翌日の出直しに応じた。



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