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34 呪いのアイテム

「生きたまま迷彩鳥を捕獲出来るとはな……こりゃ俺らの勝利で間違い無しだろ」


 蔦に巻かれて身動きが取れなくなった迷彩鳥は木の籠の中に大人しく収まっている。


「ここら辺ではこれ以上の魔物はいないんですか?」

「そうだなぁ……いるにはいるが、他の奴らが都合良く見付けられるとは思えねぇよ。迷彩鳥の素材は錬金術師に人気で、この辺で取れる素材としてはかなりの高値が付く上に、コイツは生きているからなぁ……マニアに売れば、倍……いや三倍はイケるか」

「はぁ、なるほど。とはいえ勝敗を判断するのはミオン教官ですから、もう少し別の魔物も探しますか」


 審判役のミオン次第で、勝敗の基準が変わる可能性もある。狩った魔物の金銭的な価値ではなく個体の強さ、あるいは数の多さになるかもしれない。


 狩りを始める時にハッキリとしたルールは教えられておらず、ミオンからは終了の合図が上がるまで狩りを続けるようにと言われていた。


「別の魔物ねぇ……元々、このアスター草原にいる魔物なんてどれも小物だから、それほど都合の良い魔物なんて……」


 周囲の魔力残滓を探っていたハロルがある箇所を見て動きを止めた。


「何か、見付けました?」

「ああ、微弱だが魔力の流れがある。この先に魔力を取り込んでいる何かがいるぞ」


 ゆっくりと歩を進めていくと進行方向に大岩があった。ハロルが追う魔力の流れは大岩の陰まで続いており、そこに目的の魔物がいるようだ。


 武器を手に取り、いつでも戦闘が行えるように用心しながら大岩に近付いていく。


「これは……冒険者の遺体?」

「だな。一部白骨化している冒険者のミイラか、ずいぶんと長く野晒しになってたみたいだな……」


 大岩の傍で横たわる枯れ木のような細身の死体。軽装の鎧と革の盾を身に付け、近くには抜き身の剣が転がっていた。


 安物の鎧と違い、剣の方は凝った装飾が施された高価な品のようで、もしかしたら魔法具の類いかもしれない。


「目立った傷は見当たらないようですが、魔物にやられてここで力尽きたんでしょうか」

「初心者でも安心して狩れるような低級な魔物しか出ない場所でか? ……まぁ、どこか別の場所で毒でも食らったのか、強力なはぐれとかち合ったのか……どちらにせよ、運の悪い奴だったんだな。登録証くらいは回収してやるか」


 ハロルが首にかけられた銅の登録証を引っ張り出し、そこに刻まれた名前を見て驚き、思わず息を飲んだ。


「……馬鹿な、コイツは……ダナートなのか」

「誰です?」

「ここ数日、姿を見せなかった同業者だ。こんな所で……」

「数日? でもこの遺体は死後、数ヶ月は経過したように見えます。登録証だけ別人の物なのでは?」

「いや、よく見りゃコイツの鎧も見覚えがあるし、顔もずいぶんと様変わりしているが面影がある……間違いねぇ、コイツはダナートだ」

「……危ない!」


 ハロルがミイラの顔を凝視している最中、動かない筈のミイラの手が地面に転がる剣を握り、振り抜いた。


 ハロルはスバルの声に反応して身を捩ったが、近過ぎて躱しきれず右腕に深手を負った。


「っつぅ! コイツ……アンデッド化してやがる」

「ハロルさん、大丈夫ですか?」

「……情けねぇ、利き腕をやられた。あの剣、妙な魔法が付与してやがるな」


 土を溢しながら立ち上がったミイラの力無く垂れ下がった右手には禍々しい輝きを放つ剣が握られ、切りつけて浴びたハロルの血を吸い上げるように吸収した。


「ちぃ、ダナートの馬鹿野郎が呪われた剣を使いやがったな」

「呪いの剣……それで衰弱死して、死後もあのようにアンデッド化してしまったわけですか」


 ノロノロと動いたかと思ったら時折、鋭い斬撃を放ってくる。十分に警戒しておけば躱すのは容易い。


「まだダナートの身体を完全に掌握し切ってねぇ! スバル、今のうちに剣を切り離せ!」


 スバルが回り込むとミイラも合わせて動こうとするが間に合っておらず、ミイラの右腕をスバルの剣が両断する。


 衝撃で宙を舞い、地面に刃を突き立てた剣の柄には切り飛ばした右手がしっかりと握られていた。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「ハロルさん、右腕の治療を……」

「薬は自前のがある。それより警戒を怠るな」


 二人の前には右手を失くしたダナートのミイラが倒れていた。剣から切り離されて元の骸に戻ったように見えるが完全に浄化されたわけでは無く、元凶の呪いの剣が近くにあると再び動き出すようだ。


「迂闊に剣に触んなよ、ダナートの二の舞になるかもしれねぇからな」

「それなんですけど。ハロルさん、この剣は有害過ぎるから破壊した方が良いと思うんですけど」

「そりゃ俺もそう思うが、呪いの品を破壊するには聖魔法が必要だが俺もお前も使えねぇだろ」

「確かに聖魔法は使えないんですけど、ハロルさんに剣の魔力が集中する部分を見付けてもらって私がその部分を叩き切ればイケるんじゃないかと思うんです」

「……なるほどな。剣に施された呪いの魔法を維持している部分には微細な魔力が集まっている。それを俺が見極めて、お前が切るってわけか。面白れぇじゃねぇか」


 スバルの提案に同意したハロルが呪いの剣に集まる魔力の流れを見つめる。

 呪いの魔法の中心点を的確に破壊しない限りダナートのアンデッド化は止まらず、いずれ完全な魔物と化してしまう。そうなった時、この呪いの剣がどれだけ破壊されていても同時に復活する事になる。


 それが呪いのアイテムに取り憑かれた者の末路であり、呪いのアイテムの厄介さなのだ。


「……よし、ここだ。剣の柄の内部に魔力の集中点がある。ここを破壊すれば呪いの魔法は崩壊する筈だ」

「分かりました……メロディエンスの名の下に。火精よ、刃に宿れ 『熱刃』」


 ハロルの指し示した場所目掛けて、スバルの剣が振り下ろされた。

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