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33 スバルとハロル

「はぁ? 魔物狩りだぁ? 知るかよ。俺が受けた仕事は道案内だけだ。ガキの尻拭いなんぞやってられるか」


 スバルがハロルに追加の仕事を頼みに行くと案の定、ハッキリと断わられた。


 サリーの方はユーリが話をすると快く引き受けてくれた上に、追加の報酬無しで話がまとまった。


「あのですね、今回の道案内の報酬以外にも魔物の素材を売った時のお金も上乗せしますので……」

「だから、そういう事じゃねぇんだよ。俺は今回、道案内としてここに来た。だからこれ以上、仕事をするつもりはないんだよ」


 ハロルは頑なに仕事を拒み、スバルから背を向けてしまった。


「そんな~……」


 困り果てたスバルが助けを乞うようにミオンを見ると、ミオンは笑顔で拳を握り楽しそうに励ましのポーズを取るばかりだった。


 すでに他の二組は出発し、スバルだけが出遅れている。

 このままハロルの協力を得られなかった場合、スバルの最下位が決定しペナルティが与えられる事になっている。キツいペナルティを回避する為にも、何とかハロルを心変わりさせないといけないのだがその方法が思い付かない。


「う~ん……報酬の上乗せがダメ、実力行使というのも気が乗らないし……後は、色仕掛け?」


 あれもダメ、これもダメとなり、いよいよ打つ手がなくなって追い込まれたスバルがおかしな想像をしたが、生憎と色事に縁のないスバルでは不可能な手段だ。


「う~んう~ん……どうしよう……ハッ!」


 頭を抱えて困り果てたスバルの頭にある閃きが舞い降りた。


 ハロルから少し離れた場所に移動すると。


「……『魂接続』」


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「ハロルさんハロルさん」

「何だよ、しつけぇな。幾ら積まれようとテメェの手伝いなんざ……」

「お金の上乗せでなく、レア素材ならどうです? 例えばこれとか」


 そう言うとスバルはポーチの中から手のひらサイズの鉱石を取り出した。艶やかで深い銀色をした鉱石、一目見ただけではそれの正体に思い至らなかったハロルだったが、ジッと見つめるうちに脳裏にある名前が浮かんだ。


「……嘘だろ。まさか、これ……ミスリル、か?」

「さて、どうでしょう。実際に鑑定してみなければわかりません。それでも追加の仕事を引き受けて下さるのなら、前金代わりにお渡しします。必要なら魔物素材も上乗せしますよ」


 実際、スバルが持っている鉱石はスバーニャに連絡して送ってもらった正真正銘、高純度のミスリル鉱石だ。


 魔力濃度が濃い魔族領では、この手の素材は豊富にある。そしてそういった素材は人族の世界では極めて希少かつ高価な物でもあった。

 用意しようと思えばもっと貴重な物も用意出来るが報酬として渡すには過剰過ぎる為、ミスリル鉱石辺りが妥当だろうと判断した。

 

「さあ、どうです。仕事を受けてくれますか?」


 これでダメなら最早、素直にペナルティを受けるしかない。


「ちっ……しゃーねーな。そのミスリル鉱石で手を打ってやるよ。ついでに魔物素材は要らねぇ、この石だけで十分過ぎるからな」

「鑑定書とか無いですけど、大丈夫ですか?」

「はっ。テメェみてぇなガキに詐欺られるほど落ちぶれちゃいねぇよ。多少、魔力感知能力があればこいつから感じる魔力に気付かないわけねぇだろ……むしろ、こんな物をホイホイ出すお前がアホかって話だよ」

「いやぁ、どっかの誰かさんがヘソ曲がりな所為で、苦労して手に入れた物ですが手放す事にしました」

「……ふん。言っておくが魔物狩りの結果が振るわなくても返さねぇからな」

「わかってますよ。それより出遅れていますから急いで下さい」


 スバルからミスリル鉱石を受け取ったハロルはようやく重い腰を上げた。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「確か、一番価値の高い魔物を狩れた組が勝ちなんだっけ?」

「そうです。だから早く魔物を探さないと」


 他の二組に比べ、スバル組は大幅に遅れを取っている。折角、苦労してハロルのやる気を引き出したのだから勝ちを狙いたい。


「まぁ落ち着け。手当たり次第に歩き回っても時間を浪費するだけだ」

「でも……」

「腕の良い狩人は無闇に場を荒らしたりしないのさ。スバル、オメェは魔力の残滓を感知出来るか?」

「魔力の……残滓?」


 初めて聞く言葉に首を傾げるスバルを見て、ハロルは得意気に語った。


「魔力の高い魔物が残していくもんだが……例えば、ここにも残っているんだが分かるか?」


 ハロルの指差す地面には魔物の足跡らしきものがあるが、スバルにはただの足跡にしか見えず、どう目を凝らしても魔力を感じる事は出来なかった。


「う~ん……全然、分からないです」

「ふふん。まぁ、しょうがねぇ。この技術はセンスがないと無理だからな。分かる奴には分かる、分からない奴には分からないのさ。実際、俺より魔法に長けたサリーでも無理だったからな。オメェが分からなくても落ち込むな。はっはっは!」


 スバルにマウントを取る事が出来て上機嫌なハロルは魔力の残滓を追って獲物を探し始めた。


「濃い残滓を残す魔物ほど魔力量の多い魔物って事で、そういう魔物は大概、価値の高い魔物ってわけさ……こっちだな」


 地面の足跡や木に付いた傷を見比べながら進んでいくハロルの後ろに着いていくスバルは、ハロルが目を向けた場所を注視するがやはり何も感じ取れない。


「おっ? あれを見ろ」


 立ち止まったハロルが小声で、スバルに遠くの木を指し示した。


 その木の枝で一羽の鳥が羽を休めていた。


「何だか派手な色の鳥ですね」

「あれは迷彩鳥だ。敵に見付かると羽の色を変化させて風景に溶け込む能力を持ってる。変化前に見付けられたのはラッキーだな」


 早速、捕獲を試みようと行動を開始する。音を立てないように少しずつ近付き、数メートル移動すると迷彩鳥がキョロキョロと警戒し始めた。


「これ以上は無理だな。ここから石かナイフで狙ってみるか」

「魔法はダメですかね」

「俺は使えないし、迷彩鳥は割りと警戒心も高くて俊敏だから半端な魔法だと避ける。威力の強い魔法だと換金素材の羽根を傷つけてしまうぞ」

「なら、攻撃系の魔法で無ければ良いんですよね」


 スバルは近くの木に手を添えると意識を集中させた。


「メロディエンスの名の下に。木精よ、その手を伸ばし捕らえよ 『捕獲(キャプチャー)』」


 スバルが手を添えた木の根を通じて、迷彩鳥が止まっている枝に魔法が発動する。


 異変を察知して飛び立とうとした迷彩鳥より一瞬速く、蔦が脚を捕らえ枝が伸びて檻となった。


「やるじゃねぇか」

「えへへ、無傷で捕獲出来ました」

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