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32 オリオン兄妹

 ポラリスを出発し、アスター草原に向かう。街の外とはいえ街道の近くにある為、魔物の出現率も低く比較的安全な道のりだった。


「アスター草原なんて、初心者の雑用依頼でしか来ねぇよ。わざわざ金出してまで案内役が必要なのか?」

「もう、ブツブツ文句言わないの! 依頼を受けたんだから、ちゃんとやってよ」

「わかってるっつーの」


 スバル達の少し前を歩くオリオン兄妹。兄のハロルは出発時からずっと愚痴を溢している。彼はブロンズ級の冒険者の中でもギルドからの評価が高く、シルバー級への昇格も間近と噂される若者だ。


 一流の冒険者を目指し身を削るような日々を送るハロルにとって、アスター草原への案内役などただのお遊びとしか思えず、身が入らないようだ。


 今回の依頼は、一見すれば優位的立場のミオンがゴリ押しして雑用を押し付けられたのだ。それはハロルの嫌いな権力を乱用する貴族のようで、面白くなかった。


 それでもこの依頼を引き受けたのは、ギルドから指名された為で、もし断わればギルドからの心証を悪くするかもしれなかったからだ。


 妹のサリーはゴールド級の冒険者であるミオンの依頼を受けられて喜んでいるようだが、ハロルはそこまで前向きではなかった。


「あのよぉ、ミオンさん。依頼内容はアスター草原への案内って話だけど、あそこは小型の魔物が少し出るだけでゴールド級の冒険者が出向くような場所じゃないぜ」

「ええ、わかってますよ~。今回はこの子達に~経験を積ませる事が~主な目的ですから~」

「ふ~ん……ステラ教団の信徒か。大した経験にもならんと思うがね」


 ハロルはスバル達を一瞥し、興味無さそうに呆れた様子で肩をすくめた。


 そうして歩き進めていくと開けた草原に辿り着いた。


「ほらよ、ここがアスター草原だ。後はご自由に」


 それだけ言うとハロルは木陰に腰掛けた。素っ気ない態度を取る兄に思わず顔をしかめたサリーは、そんな兄をフォローするように努めて笑顔でスバル達に接した。


「ご、ごめんなさいね。うちの兄は不器用で……それにしてもアナタ達ってまだ若いのに、もうミオン様のお付きの従者になったのね。羨ましいわ、ミオン様の指導を受けられるなんて」

「え~と、従者じゃなくて……何だろ、部下っていうか弟子みたいなものかな」

「え? 星騎士のミオン様の弟子って……それじゃアナタ達って星騎士候補生って事!? 凄いじゃない」


 スバルと話すサリーが驚きの声をあげた。自分よりも年下のスバル達を見てサリーは今回の依頼は、ミオンが付き人の教団信徒の子に息抜きをさせる為に連れてきたものと思い込んでいた。それがまさか、過酷な星騎士試験を経て候補生となった者達だとは思いもしなかったのだ。


「へぇ……私達も前に試験を受けた事があったけど受からなかったんだよね……そっか、ミオン様の弟子かぁ。ねぇ、星騎士になる為の訓練って結構ハードなの?」

「それはもう、膝がガクガクになるほどキッツい訓練が連日続くんですよ」


 ミオンの訓練は毎回、気力体力を振り絞ることになり訓練終了後は遊びに出掛けるような余力など一欠片も残っていなかった。


「やっぱり星騎士の壁って高いんだぁ……前に星騎士を目指して試験を受けた時、兄のハロルはかなり自信があったみたいだけど、それでも落ちたんだよね。あれから実力も付けたし、再チャレンジを目指してはいるんだけど……スバルさんから見て兄さんは試験に受かりそう?」

「えぇ……どうでしょう? まだ私には相手の実力を正確に測る力はないので何とも……でも、諦めていないのならチャンスはあると思いますよ」

「そうだよね……うん、ありがと。今日はよろしくね」


 話が一段落した所で、集まるよう号令がかかった。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


「それでは~これから二人一組で~魔物狩りをしたいと思いま~す。クジを一本、引いてくださ~い」


 そう言ってミオンが差し出した右手には、六本の紐が握られていた。


「え、六? あのミオン教官、私達は四人ですけど」

「あらあら、あそこに二人いるじゃないですか~」


 ミオンが指差す方向にはハロルとサリーがいる。


「えぇ! あの人達は道案内だけじゃ……」

「いいですか~? これは訓練ですよ~。非協力的な人を~どうにか動かして、目的を達成する訓練です~。アナタ達が出来る範囲で~報酬を用意するも良し、力でねじ伏せて言うことを~聞かせるも良し。方法は当事者にお任せしま~す。では、一人ずつどうぞ~」


 差し出された紐をスバルから取っていく。スバルの選んだ紐は無印、コーネリアの選んだ紐は一本線の印、ユーリが選んだ紐は二本線の印だった。


「うわ、綺麗に別れたね」

「最後にルイがウチらの誰と組んで、残った二人があっちの二人か……う~ん、ウチはあんまり説得とか得意じゃないしなぁ」

「それじゃ、ルイ。選んじゃって!」

「おう、どれにし~よ~う~か~……なっ!」


 ルイが選んだ紐には一本線の印が入っていた。ルイのパートナーはコーネリアとなった。


「あっ! ウチがルイと組みか。そんじゃルイ、よろしくね」

「面倒なく課題を終えられそうじゃん、やったねラッキー」


 面倒な交渉を免れたコーネリアとルイは手を打ち合わせて喜んだ。単純な体力勝負なら幾らでもやる気は湧くが、今回は約一名ほど友好的ではない人物がいる。


「それでは~、私がサリーの代理として紐を引きま~す」


 ミオンが手に残った二本の紐のうち、一本を選んだ。


「え~、サリーと組むのは~ユーリさんですね~。はい、これで全ての組みが~決まりました~。スバルさんは~何とかハロルさんと交渉してくださ~いね」

「…………うぅ」

「えっと、ゴメンね。スバル」


 ユーリは慰めるようにスバルの肩を叩いた。

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