23 再試験
食堂へ訪れたフーマに案内されて三人は試験会場となっていたステラ教団の教団施設にやって来た。
会場跡には先客がいた。アクアマリンとトロワ、それと数人の試験官だ。
「フーマ、ご苦労だった。わざわざ呼び出してすまないな、二人とも。もう少し待ってくれ」
スバルとコーネリア、ついでに付き添いのルイと向き合うように試験官たちが立ち、その横にフーマ達も並んだ。
スバルは試験官の横に立ち並ぶフーマ達の姿に思うところがあったがとりあえず口には出さず、静かに待っていると慌てた様子のユーリが駆け寄ってきた。
「す、すす、すいません! 遅れましたぁ」
「いや、急な呼び出しだったからな。彼女達の横に並んでくれ」
息を切らしたユーリがスバルの横に並び、それを見届けて試験官は姿勢を正し、同じく並ぶ試験官とフーマ達も倣った。
「さて。君達の第三試験について上層部の決定を伝える。スバル、コーネリア、ユーリ、以上三名はパーティーを組み、指定する魔物を討伐せよ。なおパーティーには星騎士候補生のアクアマリンを同行させる事とする」
「候補生……?」
「ここにいるアクアマリン、フーマ、トロワの三人はすでに試験を突破して一年以上訓練を重ねた星騎士候補生でな、今回の試験では受験生に混じって支援活動をする筈だったのだ。まぁそれはさておき、上層部としては今回のゴーレム撃破という結果は無視出来ないが、ハッキリとした記録が無い以上評価もしにくい。そこでアクアマリンを含めた四人でパーティーを組み、魔物を一体討伐してきて欲しい」
「わかりました。それで討伐する魔物というのは?」
「狂える巨人『単眼鬼』だ」
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「つぅーわけで、よろしくな。お前ら」
相変わらずの不遜な態度ではあるがアクアマリンは三人と握手を交わし、コーネリアの頭の上にいるルイにも手を伸ばした。
「妖精族が別件で来てるってのは聞いてたけど、おチビも試験に参加すっか?」
「あたいはルイだ。面白そうだから参加すっぞ」
「俺ぁアクアマリンだ。よろしくな、おチビ」
パーティーを組んだ五人はポラリスの冒険者ギルドへやって来た。
討伐目標であるサイクロプスの生息地へは転移魔法陣で跳んでいくが、その前に冒険者ギルドで討伐依頼を受けておく事にした。
「試験とはいえ野生のサイクロプス討伐は高難易度の依頼だからな。冒険者ギルドで依頼を受けとけば儲かるぜ。ちなみにこの中で冒険者登録してる奴いるか?」
アクアマリンが問い掛けるとスバルとコーネリアが手を上げ、ブロンズの登録証を見せた。
「ふ~ん、ブロンズかぁ……俺はシルバーだぜ」
「冒険者登録かぁ……今まで訓練ばっかりで他の活動とかしてないんだよなぁ。ボクも登録してみたいかも」
「おう、取っとけ取っとけ。星騎士つっても高給取りってわけじゃないし、副収入が無いと装備品を揃えるのも苦労するからな。おチビはどうすんだ?」
「興味な~し」
冒険者ギルドでユーリが登録をしている間にスバル達は依頼票を確認する。
サイクロプス自体は街の付近には生息していない為、討伐依頼は出されていない。だが、その素材に関しては高値で取り引きされるようで、特に眼の部位が一番高い。
「錬金術師がアイテム化したり、コレクターが収集したり、呪術師が呪いに使ったり、用途は様々だがそれだけ需要は高い。眼の部分が無事かどうかで報酬額が変わる、絶対に傷付けるんじゃねぇぞ野郎どもぉ!」
「おっほほぅ、これなら五等分しても……ぐふふ。おいしいじゃ~ん」
若干二名ほど欲に眼が眩んでいるようだが、ユーリが登録を済ませると早速、サイクロプス討伐へと向かった。
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「ここがサイクロプスの生息地……この岩山の何処かに居るんですか」
転移魔法陣で跳んできた場所は草木も生えていないような殺風景な岩山だった。
スバルが辺りを見回しても生物が居るような気配は無い。コーネリアが耳を澄ませても何の反応も捉えられなかった。
「お前らも星騎士候補生になったら座学で学ぶ事だが、世の魔物の中には食事が必要ない巨大生物ってのがいる。そういった魔物は魔力を取り込んで生命維持をするそうだ」
「ふ~ん、じゃあここに住むサイクロプスも魔力だけ食べて生きてる奴なんかぁ……ウチだったら絶対満足出来んよ、そんな生活」
「あたいも無理~、こんな石コロだらけのはげ山なんてつまんな~い」
移動しながら周辺を探索してみるが、目的のサイクロプスの姿はない。
探索に飽きたルイがお菓子を摘まみ、ユーリがお茶を淹れて小休憩の準備をする。
スバルとコーネリアがユーリの淹れたお茶を飲んでいる間も一人、探索を続けていたアクアマリンだったがなかなか現れない獲物に舌打ちして休憩を取ることにした。
「だ~めだ。全っ然、出てこねぇ」
「縄張りじゃないのかも?」
「いや、そんな筈は……これだけ縄張りを荒らされてんのに姿を見せないのは不自然だ。こりゃあ、もしかしたら……」
「あ、もしかして別の魔物にやられちゃったのかも」
アクアマリンは何か思い当たる事があるようだが、ユーリが予想した答えには首を振った。
「もし別の魔物に縄張りを乗っ取られたんだととしたら、その魔物が出てくる筈だ。サイクロプスが出て来ないのは、身動きが取れない状態だからだな」
「身動きが取れないって……怪我してるから?」
「いや、魔物が多少の怪我ぐらいで縄張りへの侵入を許す筈が無い。サイクロプスが動けないのはズバリ、進化の最中だからだ!」
「進化……つまり、さらに強くなろうとしてるって事?」
「ああ、その通り! サイクロプスの上位種だと属性持ちか……くっくっく、報酬が跳ね上がるぜぇ」
頭の中で降り注ぐ金貨の雨を妄想し、気持ちの悪い顔になるアクアマリンをよそにスバル達は何処かに潜んでいるサイクロプスをどうやって見つけるかを悩んでいた。
「けっこう歩き回ったのに痕跡一つ見つけられないね。どうしよっか」
「ウチの耳と鼻を使ってもわからんし、本当にここかな」
「サイクロプスって、かなり危険な魔物だからステラ教国がしっかりと調査してるって話だよ? ここが生息地なのは間違いないかも」
どうしたものかと悩んでいると、お菓子を食べ終えたルイが三人の前に飛んできた。
「お困りみたいだね。ここは一つ、このルイ様に任せときな!」




