18 試験開始
「……………………」
「…………辛ぇ」
カレーを一口食べただけでスバルは無言になりスプーンを持つ手が震えた。
同じくカレーを食べたルイも身を震わせて一言、感想を述べた。二口目が進まないスバルとルイとは違い、猛然と食べ進めるコーネリア。
「はふ……んぐ、ふぅ、かなり辛いけど美味しいね」
「嘘でしょ……口の中がヒリヒリして味なんかわかんないよ」
「ぐへぇ……あたいも無理~。コーネリア、食べて」
一口でギブアップした二人は残りをコーネリアに託し、追加で別料理を注文した。
「うぅ~……まだ、辛みが口の中に残ってるよ。甘い果実水を頼も」
「スバル~、あたいにも果実水」
強烈に残るカレーの辛さを紛らわし為に注文した果実水を一気に呷る。
「ふぅ……ちょっとはマシになった」
「あぁ~、うま。やっぱ甘い果実水最高」
「むぐむぐ……ルイは辛いのより甘いのが好きなんだね。ウチは逆に甘いのより辛い方が食が進む気がするぅ。すいませ~ん、カレー三人前追加で」
「マジかよ、コーネリアの腹どうなってんの?」
積み上がるカレー皿を前にしてルイが呆れ果てた顔でコーネリアの腹を見た。
「すいません、お客さん。カレーは後、二人前しか出せないんです」
「あ、そうなの。え~と、じゃあカレー二人前と串焼きの盛り合わせ三人前で」
「はいはい、あたいも串焼き一人前!」
「あ、私も一人前お願いします」
「は、はい。少々お待ち下さい」
注文を受けた店員は空になった食器を下げていった。
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食事を終えた三人はそのまま二階の宿屋に泊まり、翌朝都市中央の塔を目指して出発した。
大通りを進み、幾つかの曲がり角を曲がって大きな門の前にやって来た。
開かれた門の前で、通り抜ける人々を見張っている兵士にスバルは声を掛けた。
「すみません。星騎士になる為の試験を受けにきたのですが、どこへ行けばよろしいですか?」
「試験の受験生か。それなら入って塔の右側、東区画の広場に行きなさい」
「ありがとうございます」
兵士に礼を言って門くぐって中に入り、教えられた東区画の広場を目指した。
途中、何人かの観光客や兵士とすれ違いながら歩いているとスバル達と似たような武装をした者達が列をなしていた。
近くにいた監視員に尋ねる。
「すみません、この列は試験に参加する為の列ですか?」
「そうだ。君達も参加するのか?」
「はい……あっでも、こっちの子は」
スバルはコーネリアの頭にいるルイを見た。
連れて監視員も視線を向けて、驚いたようにルイを凝視した。
「よ、妖精族? 何で……あ、いや。妖精族だろうと推薦状が有れば試験は受けられるが」
「違う違う。あたいは妖精族の女王陛下から親書を預かってんのよ。教団のお偉いさんに渡して欲しいの」
肩掛け鞄から親書を取り出し、監視員に渡した。
「よ、妖精族の女王陛下……! わかりました」
その場を仲間に任せて監視員は親書を持って、大急ぎで塔へと向かった。
「これにてお仕事しゅ~りょ~。暇潰しに二人の試験を見学してくわ」
「いいの? 使者として呼ばれるんじゃない?」
「いいのいいの。どうせすぐには返事出来ないでしょ、お偉いさん集めて会議やら何やらして時間が掛かるんじゃない?」
「それもそうか」
妖精族との交流を持つという事は、ステラ教国の国力をさらに高める意味を持つ。
おそらく拒否する事はないが、どう対応するかの協議は必要になるだろう。
ステラ教国の返事待ちで、数日はこのポラリスに滞在しなければならない。
「次の方、こちらへどうぞ」
「は、はい」
受付係に促され、スバル達は推薦状を渡した。受付係は素早く推薦状をチェックし、内容を検めると軽く頷き。
「確認しました。この先に進んで下さい」
受付係の指示に従って広場へと進むとちょうど試験の説明を始める所だった。
「受験生諸君! 君達にはこれから三つの試験を受けてもらう。第一試験は水晶破壊、魔法耐性を高めた特殊な水晶を一回の攻撃でどこまで破壊出来るか見せてもらう。第二試験は呪い耐性、こちらで用意した呪いのアイテムを装備してどこまで耐えられるかを見せてもらう。最後の試験は受験生同士の模擬戦となる」
試験内容を聞かされた受験生達は移動し、水晶柱が並ぶ第一試験場へやって来た。
何人かの受験生がそれぞれの水晶柱の前に並び、挑戦していく。ある者は自前の武器を使い、ある者は素手で水晶柱を攻撃している。水晶柱を見て、直接的な魔法攻撃ではなく身体強化や武器の攻撃力上昇で破壊出来ると考えたようだ。
「か、硬い……」
「おかしい、こんな筈じゃ……」
「もう一度やらせてくれ! 俺の力はこんなもんじゃないんだ!」
しかし攻撃した受験生達は結果に狼狽し、試験を監視している試験官に詰め寄る。思った以上に水晶柱が破壊出来なかったようだ。
「最初に言ったようにチャンスは一回だ。この試験内容だけで合否が決まるわけではないから、速やかに下がりなさい」
新しい水晶柱が用意されると次々と受験生達が挑戦していく。
最初のグループが思ったような成果を出せなかった様子を見て、水晶柱の魔法耐性の高さを考慮したのか今度は全力で攻撃している。
水晶柱を吹き飛ばす者やヒビを入れる者、なかには出力を高めた攻撃魔法で水晶柱を破壊する者も現れた。
「よし、次は私達の番だね」
「二人とも、がんばれよ~」
水晶柱の前に立ったスバルとコーネリアは精神を集中させ、身構えた。
「うりゃぁ!」
コーネリアの気合いともに放った正拳が水晶柱を砕き、細かな破片を飛ばして水晶柱は半壊した。
「メロディエンスの名の下に。火精よ、刃に宿れ 『熱刃』」
スバルの剣が赤く染まり、一気に振り下ろされた。斜めに剣が走り、水晶柱が音を立ててずり落ちた。




