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12 勇者の残した物

 次に戦ったスバルは残念ながら勝利出来ずに五分経過して時間切れとなった。


「ふぅ……これは難しいね。コーネリアはよく勝てたね、凄いよ」

「でへへ」


 コーネリアが照れくさそうに笑った。


「クレスさんもこの修行をしたんですか?」

「えっ……あ~……まぁな」


 何気なくスバルが尋ねると決まりが悪そうにクレスが言葉を濁した。

 その様子にスバルは首を傾げ、コーネリアは思い至った事を呟いてみた。


「もしかしたら、まだクリアした事ないんじゃない?」

「あ~、なるほど」

「言っておくが俺ぐらいのレベルになれば同じ修行法でも格段に難易度が上がるんだからな! それに勝利したかどうかが重要なんじゃない! 自分の限界を見つめ直し、壁を超える事が大事なんだ! わかったか!!」

「は、はい」

「ぅわ、怒った。図星?」


 触れて欲しくない部分に触れられて不機嫌になったクレスを何とか宥め、建物を出たところでスバルのお腹がキュルルゥと鳴った。


「うぅ、お腹減ったな」

「ウチも~」

「お前達はセントナードに来たばかりで右も左もわからないだろ。ここはおれが飯を奢ってやろうじゃないか」

「わ~い、やったぁ!」


 クレスの好意で食事に誘われたコーネリアが喜びの声を上げた。

 しかし、スバルの脳裏にタグレスの大食いイベントで見せたコーネリアの爆食を思い出し、こっそりクレスに耳打ちした。


「あの、クレスさん。コーネリアはかなり食べますよ。大食いイベントで優勝するくらい」

「そうか。まぁ、獣人族がよく食べるのは種族的特徴で俺も知ってる。そのくらい、何でもない」


 気にせず付いて来いとクレスが二人を行きつけの食堂へ案内した。

 

 時間は昼をやや過ぎた頃で店内に食事する客は少なく、空いているテーブルに着くと店員がメニュー表を持ってきた。

 お気に入りのメニューを覚えているのか、クレスはメニュー表に目を通さず店員に注文した。


「俺はレイン鳥の燻製とジャガー芋の揚げ物、あと水を瓶でくれ。ほれ、お前達も好きな物を注文しな」

「え~と、このルパ魚のスープとパンのセット、果実水を下さい」

「ウチは……こっから、ここまで」

「!!」


 店員が本当にいいのかとクレスに尋ねるがクレスも承諾し、店員は戻っていった。


「お前達は修行を終えた後はどうするんだ? また別の街に修行しに行くのか?」


 注文した料理が来るまでの暇潰しにクレスが口を開いた。


「私はここでの修行を終えたらステラ教国へ行くつもりですよ。コーネリアも真っ直ぐステラ教国へ行くの?」

「うん、そのつもり」

「二人ともステラ教国へ……て事は、星騎士の試験を受けに行くつもりか」

「はい。ちなみにどんな試験を受けるのか聞いてもいいですか?」


 スバルの質問に少し考えてクレスが答えた。


「う~ん、毎年試験の内容は異なるから参考にならんかもしれんが……俺の時は星騎士との模擬戦だったな。星騎士一人に対して受験者三人で組まされて戦った」

「へぇ~、それで勝ったん?」

「……負けた。幸い、内容が良かったから試験は合格したがな。急遽組まされた三人組で連携が上手くいかず、散々な結果で試験に落ちた連中もいたな」


 当時を思い出して、あれは大変だったと愚痴を溢すクレスは二人に苦言を呈した。


「いいか、星騎士の試験は単純な結果だけでなく試験での行動も重視される。どんな試験かはわからんが言われた内容だけではなく、星騎士としての品格も問われていると思って心して行動するんだな」

「はい、わかりました」

「は~い」


 そうこうしているうちに頼んだ料理が運ばれてきた。

 あっという間にテーブルを埋め尽くす料理を前にコーネリアの目が輝く。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 コーネリアが四回目のおかわりを止められたところで店を後にした。

 会計は三等分する事になった。


「あれ? 奢りって言ってなかったっけ?」

「馬鹿野郎! メニューを二周するような代金を払えるか!? ……ったく、食欲はドラゴン級だな」


 セントナードで滞在する宿屋へ向かう途中、屋台を見付けたコーネリアが夜食用の食料を買い込む姿を見て、顔を青ざめるクレスであった。


 クレスの紹介で訓練場近くの宿屋に泊まる事にしてクレスと別れる間際、駄目元でスバルはクレスに尋ねた。


「クレスさん、この街には勇者様に関するお話が多く残っていますけど、普通の人が知らないような貴重なお話を何かご存知ありませんか?」

「ん? そうだなぁ……そういう事なら良いものがある。明日見せてやるから楽しみにしておけ」

「えっ! 有るんですか? 一体どんな……」

「そりゃ明日のお楽しみだ。じゃあな」


 クレスはそう言って去っていった。

 思いがけず情報の手掛かりを見付けて、スバルは順調に集まる情報にほくそ笑み、その日は眠りにつくのであった。


 翌日、日が昇り窓の隙間から光りが差し込む頃に目が覚めたスバルは大きな欠伸をしながら身体をほぐして、出掛ける支度を整えると部屋を出て隣室の扉を叩き、コーネリアに声を掛ける。


「コーネリア、起きてる?」


 しばらく待つが返事が無い。もう一度、扉を叩く。


「コーネリア? もう朝だよ?」

「……ん」

「ほら、起きて。朝ごはんにしよ」


 扉の向こう側でドタバタと騒ぐ音がして、扉が開いた。

 コーネリアが扉にもたれかかり眠気と戦いながらうっすら目を開けた。


「お、あ……よ~」

「はい、おはよう。顔を洗ってしゃんとして」

「うぅ~……ごあ~ん」

「ご飯は逃げないから」


 その後、身支度を整えたコーネリアを連れて朝食を終えるとさっそく訓練場へとやってきた。


「おはようございます、クレスさん」

「おはようございま~す」

「おう、おはようさん。修行を始める前に昨日言っていた良いものを見せてやるよ。付いて来な」


 クレスの後を追って建物に入る。昨日降りた階段を今度は二階へと登っていく。


「ここはステラ教国が管理している資料室だ。一般には公開していない珍しい物がある」


 クレスが鍵の掛かった扉を開けて二人を中へと招き入れた。

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