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10 セントナード 

 城壁都市セントナード。十年前、勇者パーティーがこの街で長期間滞在し、数々の逸話を残した街だ。


「お話しはわかりました。ギルドマスターも交えて詳細を確認したいと思いますので、別室でお待ち下さい」


 セントナード到着後、二人はゴートンと別れて冒険者ギルドへやって来た。受付の職員に『災禍の盾』の登録証を提出し、昨夜の犯行について報告すると別室に案内された。


 部屋に通されてしばらくすると扉が開き、ギルド幹部らしき数人が入ってきた。

 顔に大きな傷が刻まれ片目が潰された元冒険者とおぼしき体格の良い老人がギルドマスターのようだ。その傍に立つ神経質そうな細身の男がサブマスターのようだ。最後に女職員が扉を閉めてスバルの傍に立つ


「待たせてすまんな。カペラ、始めよう」


 ギルドマスターに促され、スバルの傍に立っていた職員のカペラが頷いた。


「スバルさん、コーネリアさん、これから幾つか質問します。嘘偽りなく答えて下さい……カペラ・カルテの名の下に。心精よ、偽りを暴け 『真実(トゥルース)』」


 カペラが準備を終えたギルドマスターに視線を送る。それを受けてギルドマスターがスバルに質問を始めた。


「まずコーネリア、『災禍の盾』のオーストの話を信じて密輸の証拠を掴む手伝いをする目的で盗賊達と行動を共にしていた。間違いないか?」

「はい、間違いない、です」


 少し緊張気味にコーネリアが答えた。

 ギルドマスターがカペラを見ると、カペラは軽く頷いた。


「では、次にスバル。『災禍の盾』と盗賊達が襲ってきた為、応戦しこれを全滅させた。間違いないか?」


「間違いないです」


 スバルが答え、カペラがその真偽を確かめてギルドマスターに伝えると、ギルドマスターは疲れたように溜め息をつき、横にいたサブマスターも苦虫を噛み潰したよう顔になった。


「どうやら真実のようだな。やはりあの計画は失敗だったようだなロートマン」

「……はっ、申し訳ありません」


 何の事かと訝しんでいるとギルドマスターが重い口調で話した。


「巻き込まれた以上、君達も被害者だ。知る権利はある……これから話す事は他言無用で頼む。今回の騒動の主犯であるオーストは元々、うちのギルドが盗賊討伐の為に潜り込ませていた密偵だったんだ」

「え? じゃあコーネリアに言っていたギルドの密偵って話は本当だったって事ですか?」

「まぁそうなる……だが、奴に命じていたのはあくまで盗賊に潜り込み情報をこちらにリークする事だけだ。間違っても旅人を襲う事など許可していない……まさか、盗賊団を乗っ取り更なる被害を出していたとは」


 盗賊の被害を抑える為に冒険者を送り込んだのに、逆にギルドの情報が悪用されて被害が出ていた事に憤りを感じているようだ。


「そういえば『調子に乗りすぎた』『ギルドに怪しまれた』って言ってたのは……」

「芳しい成果が得られず計画の再検証が必要ではないかと考えていたのだ。奴からの報告では盗賊の頭から疑いの目を向けられていて難航している、もう少し時間をくれ、なんて言っていたが……本当はとっくに頭を始末して盗賊団を乗っ取り、我々を裏切っていたとは」


 頭を抱え思い悩むギルドマスターに、サブマスターのロートマンが深々と頭を下げた。


「重ね重ね、申し訳ありません。今回の計画は反対を押し切って進めた私に全ての責任があります」

「いや、責任はギルドマスターであるワシにある。事の顛末をギルド本部へ報告し、罰を受けるつもりだ。スバルとコーネリアには慰謝料を上乗せした賞金を払うので、今回は納得してくれんか」


 スバルとコーネリアが視線を合わせて頷きあう。


「わかりました。元より騒ぎ立てるつもりもありませんし、問題ありません」

「すまんな……カペラ、処理を頼む」

「はい、ではお二人はこちらへどうぞ」


 ギルドの受付カウンターで盗賊に掛けられた賞金額の二倍をスバルとコーネリアの二人に支払われた。


「この度は当ギルドの不手際で、お二人にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。今回の支払い以外にも我々で力に成れる事があれば何でも言って下さい」

 

 改めてカペラが頭を下げた。


「そう言う事なら、カペラさんは勇者様関連の情報を何か知りませんか? 出来れば誰も知らないような秘密の情報みたいな」

「あははは、スバルは勇者様好きなんだねぇ。ウチはこの街に伝わる特殊修行を受けたいな」

「コーネリアさんの言う特殊修行というのは、勇者様も受けた『鏡の法』と呼ばれる修行ですね。この修行はスバルさんもお受けしますか?」

「はい、お願いします」

「では、そのように用意しますね。それでスバルさんの欲しがっていた情報ですが……すみません、誰も知らないようなレアな情報というのは思い当たりません」

「そうですか……」


 勇者が滞在した街として有名なのだ。勇者関連の情報など、すでに多くの人に知れ渡っている。そう上手くはいかないものだ。


 気を取り直し、カペラの案内で冒険者ギルドから少し離れた場所にある修行場にやって来た。大きな門にはステラ教の紋章が刻まれている。


「ここがステラ教国とセントナードが共同管理する修行場です。『鏡の法』については、中にいる管理人が説明してもらいましょう」


 門をくぐり、敷地内に入ると訓練をする兵士や冒険者、戦士の声があちこちから聞こえてくる。

 カペラの後ろを歩いていると、時折殺気の籠った視線が飛んでくる。


 単純に見知らぬスバルとコーネリアに興味があるのか、或いは特別な場所に向かうから興味があるのか。


 奥まった区画に到着すると、そこには一人の戦士が訓練に汗を流していた。


「クレス!」

「……? あ、カペラ姉さん」


 クレスと呼ばれた戦士が訓練の手を止めて駆け寄ってきた。かなりの長身で一般女性よりも背の高いコーネリアよりさらに頭一つ分、背が高い。それに剥き出しの太く逞しい腕を見ても相当に鍛えているのがわかる。ここに来るまでに訓練していた者達と比べても、その強さは段違いだと感じられた。


「紹介しますね。彼は私の弟のクレス・カルテ、この修行場を管理するステラ教国の星騎士です」

「へぇ、星騎士」

「なるほど、強いね。この人」


 クレスとカペラ、二人が並ぶとよく似た顔立ちをしている。


「姉さんがここに来るなんて珍しいね、何か用?」

「えぇ、ちょっとね。こちら冒険者のスバルさんとコーネリアさん、二人に『鏡の法』を受けさせて欲しいの」

「……『鏡の法』を? 悪いけど、例え姉さんのお願いでも未熟者にあの修行を受けさせるわけにはいかないよ」


 クレスは腕を組み、不躾な目で二人を見下ろした。クレスが成人したばかりの幼さの残るスバル達を見て、未熟者と断じるのも仕方ない。


「クレス、二人を推薦するのは冒険者ギルドの意志よ。管理者としてちゃんと判断して」

「やれやれ……おい、そこのチビ」


 この中で一番小柄なのはスバルだ。必然的にスバルの事だろう。


「スバルです」

「どうでもいい。『鏡の法』を受けるに足るか見てやる。来い」

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