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01 星騎士を目指して

 人々の住む大陸の西方部には地中より高濃度の魔力が噴き上がる特殊な地域があった。星全体に満ちる魔力は様々な形で人々に恩恵を与えているが、魔力の源泉と呼ぶべきその場所の過度な魔力に人々は適応出来ず、永らく誰も住まない土地であった。


 だがそんな場所にも、他の地域に生息する生物を遥かに凌駕する能力を持った『魔物』と呼ばれる強力な生物が誕生し、さらにその中から知性を持った『魔族』が誕生した。


 特殊地域に適応した魔族は徐々に増えたが、ある問題が浮き彫りとなった。魔族が住むその特殊な地域では鉱物も植物も魔力によって変質し、他の地域では手に入りにくい希少な資源が豊富に存在する代わりに、食料となる穀物が育ちにくい特徴を持っていた。人口増加による食料不足に陥った魔族達は問題解決の為、外の世界に広がって行ったが、そこで魔族と人族は衝突する事となった。


 当初は個々の能力で圧倒する魔族が戦況を有利に進め、人族を追いやりその土地を得たが、数で勝る人族は様々な方法で戦力差を埋め、ついには『異界の戦士』を呼び寄せる魔法を造り出した。


 異界より呼び寄せられた戦士は『奇跡』と呼ばれる特殊なスキルを使い、魔族を束ねる王を討ち、人族の世界に一時の平和をもたらした。その功績を称え、人々は異界の戦士を勇者と呼ぶようになった。


 しかし、王を討たれた魔族達の勢力は一時的に衰えはしても、次代の王が立つ事で再び勢いを増し、魔族と人族の争いは世代を経ても続く事となった。


 そして初代魔王が勇者に討たれてから数百年後。世界では変わらず争いが続き、魔族と人族双方が総力を挙げてぶつかり、五代目の魔王が勇者と相討ちになった大規模戦争より十年後。


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 魔族の国と国境を接する国マルデル。その首都にステラ教国の教会支部があった。人族の希望となる勇者を召喚し、人族の平和の為に戦うステラ教国の威光は世界各国に届き、マルデル国もその一つだった。


 その教会で朝の祈りを終えた星師が信者と談笑していると、一人の少女が教会に入ってきた。


 黒いショートヘアの少女は簡素な革鎧を纏い腰に細い剣を携え、剣士のような姿で教会に現れた。量産品と思われる装備品の中で少女の履くブーツだけは、宝珠が装飾された貴重な魔法具の類いのようだ。

 

 少女は教会の壁際に設置された寄付金を置く棚に硬貨の入った小袋を乗せると星師の下へやって来た。 


「初めまして、星師様。私は、スバルと申します」

「こんにちは、スバルさん。私に何かご用ですかな?」

「はい。私はステラ教国で星騎士を目指すつもりなのですが、まずはこの教会で星師様の推薦状が必要と聞きました。その推薦状を頂けませんでしょうか」

「! 何と……星騎士を目指すと言うのか」


 ステラ教国の星騎士。過酷な訓練を耐え抜き幾つもの死線をくぐり抜けた一流の戦士の称号だ。

 誰もが憧れる存在ではあるが、当然その道は狭き門である。世界中から星騎士を夢見る者達が集うが、その名を得るのは極僅かである。


「見た所、随分お若いように思うが……」


 星師の目の前に立つスバルは整った顔立ちで成長すればさぞ美しい乙女となるであろうが、今はまだあどけなさが残る少女だ。戦いの世界に送り出すのは些か躊躇われる。


「今年で15歳になります」

「ギリギリ成人の歳か……しかし、星騎士は常に魔物や魔族との戦闘で命懸けとなる。ご家族の反対は無かったのかな?」

「私に家族はいません。両親は十年前の戦いで亡くなりました」

「そうか、あの大戦で……当時の勇者パーティーすら全滅する激しい戦いだったからな。辛うじて魔王を討つことは出来たが、人族の被害も甚大であった……君の意志は分かった。まずは推薦状を与えるに相応しいかどうか、ここで第一試験を受けてもらうが良いか?」

「はい、お願いします」

「では、スバルさん。一角狼の角を一本、持ってきてもらおう。方法は問わないし、期間も設けない。何ヵ月掛かろうと構わないよ」

「分かりました」


 星騎士を目指す為の第一歩として教会支部の星師から試験を与えられたスバルは一角狼の情報を求めて、街の外で活動する冒険者達をサポートする冒険者ギルドへ向かった。


 その道すがら、建物の陰に隠れると目を閉じて意識を集中させた。


(…………『魂接続』)


◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️


 マルデル国首都から遠く離れた魔国領内にある魔王城の玉座の間。

 城の主、六代目の魔王スバーニャ・メロディエンスがいた。長く艶やかな黒髪の美女だが額に第三の目を持ち、髪の隙間から二本の角が生えた魔族の女だ。

 スバルに酷似した顔立ちで年の離れた姉妹と言われれば素直に納得出来そうだが、スバーニャは魔族であり、スバルは人族の姿であった。


(…………『魂接続』)

「ん? スバルか。何か進展があった?」


 玉座に腰掛けたスバーニャの心に外部からの干渉があった。

 魔族の王たるスバーニャの対魔防衛を突破して干渉出来るのは、スバーニャの血肉を元にして身体を造り、スバーニャの魂の欠片を核にして生み出された同一分身体たる人造人間だけ。それがスバル・メロディエンスだ。


(うん、無事にマルデルの支部で試験を受けられたよ)

「そうか、何か怪しまれたりはしなかった? 一応隠蔽はしているけど魔王と繋がりがあると見破られたら厄介だからね」

(何も言われなかったよ。家族がいないのも十年前の大戦のせいって言ったら納得してたし)

「よし、以後も十分に注意して行動して。人族の使う聖魔法も油断は出来ない、疑いを持たれないようにね」

(あいあい、了解)


 スバルとの接続が解けるとスバーニャは大きく息を吐いた。

 わざわざ人造人間の分身を作り、人族の世界に送り込んだのは数ヶ月前に魔王軍の観測班が忌まわしき『異界の戦士』を召喚する大魔法の波動を感知した為だ。


 魔族の驚異となる勇者が再び現れた。これを取り除くにはステラ教国に攻め入り、勇者が成長し危険な存在となる前に討つしかない。


 だが正面から攻め込むのは現実的ではない。今の魔王軍の戦力ではステラ教国までたどり着けない。故に、人族に偽装した人造人間のスバルを刺客としてステラ教国に向かわせたのだ。


 勇者と言えど十分に成長し、ユニークスキル『奇跡』を使いこなせるようになるには時間が掛かる。それに単独では活動しないだろう。これまでの勇者がそうしたように、ステラ教国の星騎士を付けてパーティーを組む筈だ。


 そこが絶好のチャンスとなる。勇者の供をする星騎士の座を狙ってスバルはステラ教国を目指すのだ。

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