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一夜を共にしたからって結婚なんかしませんから!  作者: 灰銀猫


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親友との女子会

 副団長達との話し合いから一夜明けた今日。母達は揃って王宮に行ってしまった。王妃様とお茶会をするそうだ。一度は王宮の中を見てみるのもいい経験だと母が言って、リアムも一緒だったけれど…王宮って簡単に見学できる場所じゃないのだけど…深く考えるのは止めた。

 

 そんな私は、久しぶりに連絡してきたクラリスと副団長の屋敷で会った。アリソン王女殿下は未だに貴族牢で、クラリス達侍女は休暇扱いになっていた。


「やっと侍女を辞められるわ」


 そう告げた彼女の表情は、意外にも晴れやかで安堵感が強く見えた。


「そうなの?自慢の王女殿下だったんじゃなかったっけ?」


 そう、クラリスはいつも、アリソン様がいかに素晴らしいかを私に語っていた。そんな彼女に王女殿下もよく懐き、クラリスは彼女のお気に入りだと言われていたけど…


「…それは対外的なものよ。実際は我儘で絵に描いたような嫌な王女様だったわ。他国から縁談が来る可能性もあるから隠していただけよ」


 なるほど、王女が困った性格では国のメンツに係わるから、周りが必死に誤魔化していたのか。お陰でクラリスもストレス三昧の日々だったらしく、今は解放されて清々していると言った。


「しっかも、やらかした相手がエリーなんだからびっくりよね」

「ええ、まぁ…」

「怖いわよね。恋はここまで人を狂わすのか、って思っちゃったわ。あの王女ならやらかしそうだったけどね」

「そっか」


 クラリスは副団長が実の兄であることを知らないから、純粋に恋情の末の暴挙だと思っている。まぁ、事実を知ったらもっと驚くだろうし、軽蔑するだろうな、と思う。守秘義務があるから言わないけど。


「それで…クラリスはこれからどうするの?」

「…実は…王太子殿下の妃候補にってお声がかかって…」

「ええっ?!」

「やっぱり驚くわよね?既に行き遅れの年だし、他にも向いていそうな令嬢はいくらでもいるんだから…」


 クラリスはそう言ったけれど。彼女はルナール侯爵家の令嬢だ。彼女も私と同じく結婚よりも仕事がしたいと言った変わり者だったが、下手な相手と結婚するよりも王女殿下のお気に入りでいた方がずっとメリットが大きいと侯爵が考えたのか、結婚を強要されずに済んでいた。


「今更王太子妃とか、勘弁して欲しいんだけど…」

「でも、クラリスは王女殿下の侍女もしていたし、王宮内の事にも明るいじゃない。悪くないと思うけど…」

「だからって、今更困るわ。そんなつもり全くなかったんだから…」


 そう言ってため息をつくクラリスだったけれど…そう言えば王太子殿下に求婚されたっけ、と私は夜会でお会いした時の殿下の様子を思い出した。確か殿下は二十五歳におなりだけど婚約者すら決めていなくて、どうなるのかと国中が気を揉んでいるのだ。ご本人は慌てる必要はないとのらりくらりと躱しているとも聞く。


「それよりも、エリーはどうなのよ」

「は?私?」

「ブーランジェ伯とはどうなっているの?あの王女がいなくなったんだから、障害はなくなったんでしょう?」


 キラキラした目を向けてきたクラリスだったけれど、ご期待に添えられるような話はなかった。対外的には私は副団長の婚約者のままだから、クラリスが気にするのも尤もだけど、色々と込み入った事情があるので話す事が出来ないのがもどかしい。モヤモヤばかりが募り、誰かに話を聞いて欲しいと思うのだけど、話せないからストレスが溜まる一方だ。


「いい報告を待っているわよ」


 そう言ってクラリスは帰っていったけれど、その期待に添う事はないだろうな、と思う。母達が何を言ったところで、副団長の意思は固いし、彼には恋人だっている。無理やり結婚しても誰も幸せにはならない事くらいは、私にも十分に理解出来た。





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