実の妹って…誰が?
(…え?じ、実の妹って…誰が、誰の?)
副団長から出てきた言葉を処理しようとした私の頭は、途中で停止してしまった。もしかして聞き間違えたのだろうか…今の言い方だと、王女殿下が副団長の妹みたいに聞こえたのだけど…
(実の妹って、本当の妹って事、よね?両親が同じって事?両親が同じ?あ、あれ…?)
私の知る実の妹とは、両親が一緒と言う意味だ。私とリアムのように。いや、中には父か母のどちらかが違う異父や異母の妹も存在するだろうけど、一般的にはそれを実の妹とは言わない、と思う。多分…
副団長はランベール公爵家の三男だ。異母兄弟なら陛下の血を継いでいるので王子として扱われていた筈。そうじゃないとすると陛下の血は引いていないから異父兄?え?だったら王妃様の御子という事になるけど…そ、それって…?まさか…王妃様が公爵…と?もしかしてこれって…王室のとんでもないスキャンダル?
「おい、何を考えているかは知らないけど、多分違うぞ」
あり得ない思考に陥っていた私を現実に戻したのは、副団長の声だったけど…ちょっと待って、知らないのに多分違うってどういう事よ?いや、今はそうじゃなくて…
「アリソン王女殿下、いい加減にして下さい。俺は貴女を結婚相手とは到底思えません。いくら共に育っていないと言っても、繋がりは確実にあるのです」
「で、でも…アレク様は御子が出来ないのでしょう?だったら…」
「そういう問題ではありません」
「でも…子が出来なければ問題ありませんわ」
「そういう行為そのものがダメだと言っているのです。いい加減に理解して下さい」
話している内容が飛んでもなくあり得ない内容だった。王女殿下…何を仰っているのですか…?子が出来なければ問題ないって…実の兄妹だったらそういう次元の話じゃないですよ?いや、副団長が実の兄って、そこから説明求む!なんだけど…
「近衛騎士!王女殿下がお帰りだ!」
混乱する私の前で二人は尚も問答のような言い合いをしていたけれど、埒が明かないと思ったのか、副団長が部屋の外にいる騎士に声をかけた。
「アレク様っ!」
「王女殿下、この件は陛下にもご報告致しますので、そのおつもりで」
「そ、そんな!お、お父様には言わないで!お願い!」
「だが、先に約束を破ってここに来たのは殿下です。前回忠告いたしましたよね、次はない、と」
「…そ、そんな…ま、待って!アレク様っ!」
「さっさとお連れしろ」
「はっ!」
副団長の言葉を受けて、騎士たちが王女殿下を連れて行ってしまった。部屋を去っても王女殿下の副団長を呼ぶ声が聞こえたけれど、それも程なくして聞こえなくなった。私は目の前で起きたやり取りに呆気に取られて、王女殿下が去っていったドアを呆然と見つめるしかなかった。きっと今の会話を消化するのを、脳が拒否しているのだろう。副団長が実兄って…それっ重大な王家の重大な秘密なんじゃ…嫌な汗が流れた…
「まぁ、飲め」
「ど、どうも…」
王女殿下が去った後、仕事部屋に戻ろうとして引き留められ、副団長にお茶まで淹れられてしまった。いいのだろうか…と思ったけれど、先ほど聞いた会話のショックが大き過ぎて言われた通りに腰を下ろしてしまった。二人きりなのが非常に気まずい…
「…あ、あの…」
「今の話は本当だ」
「え?」
何も聞かなかった事に…と言おうとしたけれど、その前にその道は閉ざされた。
「俺は、国王と王妃の実子だ」
「…え?」
陛下と王妃様の実子って…それじゃ、第二王子殿下という事に?ええっ?じゃ、本当に王女殿下の兄君なの?
「で、では、どうしてランベール公爵家に…」
「それは俺が、紫瞳を持たなかったからだ」




