未来に向かって
国王陛下の即位とご成婚から半年が経ってから、私とアレクの結婚式を行った。婚約式は慌ててやったのもあって慎ましく終わらせたけれど、結婚式の時にはアレクは王太子だったのでそれなりに豪華なものになった。
国王陛下の時は国同士の結婚でもあったから、近年稀なほどに大々的な式だった。予算どうするんだと散々悩んで苦労したのはまだ記憶に新しい。ちなみに今でもそのしわ寄せが来ていて、私たちの式は予算をかなり抑えている。それでいて見栄えは変わらないようにしたのだから頑張ったと思う。ちなみに今回も予算を担当したのは私だ。主役の筈なのに自分の準備よりもそれ以外のことで忙しかった。なんかおかしい、と思う。
「ああ、綺麗だな、エリー」
私のウエディングドレス姿を見て蕩けそうな笑みを見せたのは、夫となるアレクだった。既に王宮の王太子夫妻の部屋で夫婦同然に暮らしているから、結婚式といっても今更感満載だったりする。それでも国として形式は重要だということでこの式だ。
それでも……ウエディングドレスは気分が上がるし、着てよかったと思った。今回もマーメイドラインのドレスになるかと思ったら、今日はプリンセスラインのそれだった。スカートの広がりは抑えられているが。どういうことかとアレクに尋ねたら、こういうドレスも着せてみたかったという。完全に彼の趣味だった。忙しくてドレスも好きにしていいと周りに投げたけれど、こう来るとは思わなかったのでちょっと気恥ずかしい。
一方のアレクは、白を基調とした正装で、似合いすぎているなんてものじゃなかった。かっこいい、さすがイケメン、私の理想の花婿そのものがそこにいた。夢かと思うくらいにかっこよくて、思わず拝みたくなったのは内緒だ。
「エリー綺麗よ」
「いつの間にか、大きくなってたんだなぁ……」
「姉さま、とってもお綺麗です!」
復縁した両親とリアムも来てくれて、何だか不思議な気分だった。私の家族は母と弟の三人だけだった。父が加わって違和感が増すのは年月の長さ故だろうか。まぁ、母が幸せそうなので良しとしよう。
処女じゃないけれどバージンロードを父と歩き、アレクに交代した。私よりも親子のように親しげな二人に不思議な気分だけど、父のお陰でアレクが生きていられたのだから感謝しかない。歪だった関係はこれからゆっくりと取り戻せるだろう。アレクと国王陛下や、前国王陛下ご夫妻もそうだ。親子として兄弟としての関係は、今から再構築していけばいいと思う。
「エリーに出会えて、よかった」
「アレク……私もです」
誓いの言葉とキスを交わした。こんな日が来るなんて、再会した時には思いもしなかったけれど……どうやら私の初恋は、長い時間をかけてめでたしめでたしの結末を迎えられたらしい。浮気したら別れる気満々だけど、鬱陶しいほど構ってくるのでそれはない、と思う。思いたい。
その後、我が国はフランクール国の支援もあって、ゆっくりと持ち直していった。跡継ぎを切望されていた国王ご夫妻は仲睦まじいのにお子が出来ず、子が成せないと言われていた私たちには二人の子供が生まれた。
秘毒の影響どこ行った? と騒ぎになったが、決して私が不貞を犯したわけではない。その理由は未だにわからないけれど、生まれた息子は金髪青瞳でアレクとそっくりだったし、更に間を置かず二人目が出来たために、その疑念はいつしか消えていった。
そして……即位十五年目に国王陛下が体調不良を理由に退位され、その後にアレクがその座に就くなんて、誰が想像出来ただろう。さすがにその頃の私は肝が据わり、王妃になるのを躊躇することはなかった。王になって一層誘惑が増えたアレクだったけれど、彼の過剰とも言える愛情は健在で鬱陶しいほどだった。
その十年後、息子夫婦の男児が六歳になったのを機にアレクが退位して、息子が国王に即位した。二代続けて青い瞳の王が立ち、新たに王太子となった孫王子は私と同じ翡翠色の瞳の持ち主だったけれど、アレクの善政のお陰か立太子に反対する者はいなかった。今でも時々紫瞳の子は産まれるけれど、もう特別扱いする者は殆どおらず、ようやく我が国は紫瞳の呪いから解放されたとだけ記しておこう。
【完】
最後まで読んで下さってありがとうございました。
右往左往していた主人公でしたが、最後は肝っ玉母さんになった、と思われます。
再婚約後をどうしようか悩みましたが、皆様のご想像にお任せします。




