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1000文字小説

その温泉、入るべからず

作者: 赤月白羽

 小説家になろうラジオの「タイトルは面白そう」のお題に上がりました”温泉”で、ちょっとホラー路線で1000文字小説を書いてみました。文字制限なしのフルヴァージョンも現在執筆中で、ホラー以外のアレンジも検討中です。

 世界にはかつて様々な神秘が存在し、みな神や精霊もしくはその存在の御業として畏れ敬っておりました。近年、それらを科学が解明して今では迷信とされることが増えているようでございますね。


 しかし、この世には未だ解き明かされぬ謎が潜んでおりますようで、今からお話しいたしますのも、そんな不思議の一つにございます。


 とある山奥に一軒の温泉宿がございまして、このお宿が話題に上った時に必ず語られるのがこの宿自慢の露天風呂。展望する景色は絶景、効能も美容と健康に大変宜しいと、不便な場所にありながら再来する客もある魅惑の露天風呂にございます。


 ただ、この温泉には決して一人で浸かってはならぬと云う決り事がありまして、決り事を破った者はその姿を失ってしまうそうにございます。


 どこかで温泉の噂を聞きつけ、お宿にやって来た七人の若い男女がおりました。その中の男が一人、皆にけしかけられ温泉に入ることになりました。


 あとの六人がいくら待っても男は戻ってこず、仲間の男が一人、様子を見に行きましたところ、脱衣所には男の衣服、浴場には猿が一匹いるのみ。


 さてはどこかに隠れているのだろうと浴場を探っていると、背後から頭部を殴られ気を失ってしまいました。


 二人が戻って来ぬのでいよいよ心配になり、皆で様子を見に行こうとした時、様子を見に行った男が戻って参り、あの男は止めるのも聞かず帰ってしまったとため息混じりに説明いたしました。


 皆は男を怒らせたと後ろめたく思いながらも「噂は客を呼ぶためのホラ話」と、噂のことは誰も気に留めなくなりました。


 その夜、一人で温泉に行った女の一人が朝になっても戻って参りませんで、仲間の一人が見に行きましたところ、脱衣所には女の服はなく、浴場には猿が一匹。


 皆、女を探してあちこち回っておりましたところに、何事もなかったかのように女が戻って参りました。


 しかし、今度は最初にけしかけた男の様子を見に行った男がいなくなり、いくら探しても見つかることはございませんでした。


 お話はここまでにございます。男は一体どこに行ったのでございましょう…? 誰にも知られぬところに不思議は存在するものにございます。思わぬ災厄に合わぬよう、ゆめゆめ、お気を付けくださいませ……


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私も温泉が大好きなので、こちらの短編は実に興味深く拝読させて頂きました。 景色も良くて様々な効能のある温泉ならば、一人でゆっくりと浸かれるのは最高の贅沢と言えそうですが、この温泉での一人湯…
[良い点] 昔話によくあるような、理由が分からないからの怖さ、みたいなものを感じます。 なんだかどこか知らない空間に迷い込んでしまったような気持になりました。
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