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平凡な人生を変えてみせます

自分が言うのもなんだが、極めて平均的な人生であると思う。勉強、スポーツ、交友関係のみならず、容姿や家族までが極々平凡なスペック。


このまま、それなりの会社に入り、それなりの妻を娶り、それなりの子育てを終えて死んでいくのだろうなと、学生の身ながら達観するほどの平凡ぶりである。


平凡なので別に不満があるわけでない。強いて言うなら不満がないのが不満だというヘンテコな状況。しかし、これと言って何かを成し遂げたいとも思わず、流されるまま人生を歩んでいる。


そんな日々を送っていたある日のこと、いつも通りに電車に乗り大学に向かうところ、車内に慌てた声のアナウンスが流れた。


「お客様にお知らせします。本車両に重大な故障が発見されました。本部に連絡しておりますが車両の停止が困難な状況です。お客様に置かれましては・・・・」


なにかの冗談かと思った。


自分の人生は平凡。そんなハプニングは起こるはずがない。きっと、何かのいたずらだろう。


しかし、電車は次々と駅を越していく。


次第に車内がパニック状態に陥った。大声で叫ぶ者。無理やり取り飛び降りようとする者。喧嘩を始める者。


結局、電車の前方からけたたましい汽笛のような音とともに目の前が真っ暗くなった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


ベットから転げ落ちるように目覚めた。


「ああ、ひどい夢だ。

でも、変だな。あの、変な乗り物なんだろう。それに、あの男の人だれだろう。

まあ、いいや。もう一回寝よう」


まだ、夜明け前だったからもうひと眠りには十分な時間。そのまま、床に就き、いつも通りの朝を迎えることとなった。


朝改めて起きると、夢の記憶があった。


「しかし、変な夢だったな。銀色の箱のような乗り物に乗って、石の板のような光るもの見たりして。いったい何だったんだろう」


「アル。いい加減、起きてらっしゃい。朝ごはん出来てるわよ」


一階から、かあさんのいつもの大声が聞こえてきた。


「あー。今行くよ。かあさん」


急いで身支度をして、食卓に着いた。


「今日は随分お寝坊ね」


「昨日変な夢を見てさ。変な世界の夢なんだけど、はっきりと覚えていて変な感じなんだよね」


「大丈夫なの。昨日、張り切って森へ行ってラクの実を獲りすぎて疲れてたんじゃないの」


「うーん。そうなのかな」


いつも通りだった。とうさんは既に食事を済ませた感じでテーを飲んでいるし、妹は心配そうに僕をのぞき込んでる。


「アル。今日は店の手伝いをしてくれないか。そろそろ、倉庫の整理もしたいしな。お小遣い弾むから一日付き合ってくれないか」


「うん。わかったよ。とうさん」


僕の家は道具屋を営んでいる。家族はとうさん、かあさん、僕と妹。近くに冒険者ギルドがあり、うちの道具屋はラクシュノの町でも繁盛している方だ。今のところ店の手伝い以外に生活に不自由はなく、昨日も森で思いっきり遊んできたのを覚えている。今でこそ僕の家は道具屋だけど、おじいさんが有名な魔法使いだったのが我が家の自慢となっていて、宮廷魔術師であったことから一代限りの爵位ももらっていたようだ。残念ながら、おじいさん以降は全員魔法は使えない。僕も12歳の成人の儀で魔力適性を計ってみたものの魔法は使えないということは解っている。つまり、平凡一家というわけだ。


「おい、アル。どうした?朝からボーとして」


「ああ、何でもないよ。とうさん」


うちの道具屋に向かいながら、とうさんが心配そうにこっちを見ていた。


「あまり具合が悪いなら今日は休んでいてもいいぞ」


「だ、大丈夫だよ。ちょっと、昨日の夢が気になってさ」


「また、それか」


怪訝な顔でこちらを見た後、


「今日は倉庫の整理もあるから、ぼやぼやしていたら危ないからな」


「大丈夫だって。もう心配しないでよ」


実は倉庫の整理はちょっと楽しみだった。おじいさんの魔法の道具が保管されていて、魔力がないから使えないことは解っているんだけど見るだけでも楽しかったからだ。

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