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プロローグ
あたしの名前がアリスやマリアなら、このクソッタレな街から連れ出してくれる、白馬の王子さまに出会えただろうか?
ときどき、地獄を知らない少女みたいな甘い夢を見る。
子どものころゴミ山でひろった、泥まみれの絵本には、キレイに咲き誇る白いバラを赤く塗りつぶしていく、カワイイ少女の絵があった。
それはバラ園で、少女の名前は、アリス。
バラ園と、アリスという名前と、そしてその少女が着ている青いワンピースに、昔は無邪気に憧れたものだった。
だけど、あたしの名前はハナコ――
――ハナコ・プランバーゴ。
気に入らない名前だけど、あたしはそれを背負って、クソッタレな今日を生きている。