おはようございます。そして、お久し振りです。魔王様
「え? あ、ちょ!?」
これには慌てるしかなかった。
想定外の反応である。
まさか場所を聞いただけで泣かれるとは思いもしなかった。
何故女の子は涙を流すのか?
まるで意味がわからなかった。
わからなかったが、その子の泣き声が切っ掛けとなったのか、周りにいた怪物たちも水を打ったように静まり返った。
彼らは口々に、悲しみに沈んだ低い声で呟き始めた。
「ああ……そうか……魔王様の……ご記憶が……」
「無理もねぇ……あんな死に方をしたんだ……膝に矢を受けたどころじゃねぇんだ……」
「今回は復活まで暫し間があったしな……」
「くそっ! 前の勇者め! 絶対に許さねぇっ!」
「あの人間の王もだ! 約束を破りやがって!」
「よさんか! 魔王様も、こうなるであろう事は覚悟しておったはずじゃ……」
「それでも、私たちの為に……」
お祭り騒ぎは一転。お通夜ムードとなった。
辺りを見回すと皆が皆、一様に沈んだ顔になっていた。
空気が重くなった。
こうなるともはや質問どころでは無い。
これは困った。
大変申し訳無い気持ちでいっぱいである。
いっぱいいっぱいである。
何もわからず状況についていけず、折角の夢を楽しむどころではなくなってしまった……。
誰か説明してくれそうな者は……流石にいないか。
どうしたものかな……。
そんな風に途方に暮れたその時だった。
「ん?」
ガッシャン、ガッシャン。
ガッシャン、ガッシャン。
ガッシャン、ガッシャン、と。
やたらと機械的な音が聞こえた。
同時にモンスターたちが俺へと繋がる道を作るかのように左右に別れた。
何かが近付いてきている……。
その何かが何であるのかを確認しようと目を凝らした(目は無いので、正確には見ようと感覚を集中させたと言った方が正しいか)。
すると即座にその何かが確認出来た。
「な、なんだ……?」
それは褐色で銀髪でスーツを着てメガネを掛け、エリート感の漂う女教師的な格好をしていた。
女教師が何故ここに? などと至極真っ当な疑問が思い浮かんでくる前に、それの脚に目がいった。
俺は別に脚フェチでは無い。
なので黒ストッキングか網タイツかを確認しようとして視線を下げたのではない。
(ちなみに女教師風のそれは、ストッキングを履いていなかった。べ、別に残念だな。と思ったりはしていない)
気に掛かったのは脚の関節部だ。
女教師風のそれの、剥き出しの脚の関節部は、まるで人形みたいな球体関節だったのだ。
これは……一体……?
モンスターにしては人工的というか、周りのやつらとは雰囲気が違う……。
更なる疑問が浮かぶのと、女教師が口を開いたのはほぼ同時だった。
「まずは儀礼に則り発言させて頂きます」
「え?」
「おお! 魔王様! 死んでしまうとは何事だ!」
「は?」
「これにて儀礼は終了とさせて頂きます。改めまして、おはようございます。そして、お久し振りです。魔王様」
折り目正しく一礼して挨拶をしてくれた女教師的なやつ。
さっきまで聞こえてきた音に近い、機械的で無機質な声色だった。
しかも一礼という動作の中でギュイーンとかガチャガチャとかガッショーンとか、そういうこいつもう絶対ロボットじゃん。モンスターの仲間っぽいからゴーレム的なものだろうと一瞬だけ思ったけど、違う。
こいつ女教師の格好をしたロボットじゃん。
ロボットじゃん!!!
的な音が過剰なくらいに聞こえた。
すごくどうもでいい余談。
私は日夜コスプレというものについて考えを巡らせており色々とレイヤーさんの写真などを真剣に眺めているわけだが「コスプレって結構露出の多い格好する人が多いよなぁ〜なんでだろうなぁ〜」と何気なく友人に言ったところ「いやそれはお前が露出の多いレイヤーさんの写真ばかり見ているからであり、世の中には露出の少ないコスプレをする人も多いのである」と真面目に返され、なるほどなぁと得心がいった次第である。以前「一日十分おっぱいを見るとストレスが減る」という研究が話題になったが、どうやらあれはフェイクニュースであるらしい。それはそれとして、私は露出の多いコスプレが好きなのでこれからも真剣に眺めたいと思う。