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俺たちの国造りはこれからだ!

「兎にも角にも、まずは地盤固めだな。白耳長族のあのジュリエットという女も言っていたが、交易は大きな問題だ。私が召喚されたあの国は、腐っていたからこそ大きな力を持っていた。勇者を召喚する事で魔王と魔族を抑え、魔獣を狩っていた。軍事を一手に担っていたと言ってもいい」


「へぇー、そうなんですか」


 この世界での武力を司っていたというわけか。

 だからこそ大きな国になれたのか。


「そうなのだ。そんな国を変えていくにあたって、周辺国との新しい関係性を構築していかなければならない」


「そうですねぇ」


 魔王と勇者が手を組んだを知れば、他の国はどう動くだろうか?

 危険を排除する為に、手を組んで戦争とか仕掛けてくるだろうか?

 それともへりくだって全力で胡麻をすってくるだろうか?


「商工業を主とする白耳長族の国に加えて、狩りを得意とする獣人が治める国や、武器の輸出や傭兵業を生業とする黒耳長族の国もある。これからどのようにしてそのような他の国と付き合っていくか……」


「袖の振り方が難しいところですねぇ」


「うむ。それに魔族と戦う為の軍が我が国にあるのが問題だ。当面はそいつらを魔獣への対処に当てるとしても……軍に入るくらいだからな、魔族に対して良くない感情を抱いていた者が多い。それを丸め込み、どうやって融和の雰囲気に持っていくか……」


「大変ですねぇ」


 上に立つ者というのは大変だ。

 考えることは多いし、やるべきことも多い。

 本当に大変だ。

 しみじみと思う。

 思っていたら、鋭い視線を向けられた。


「おい、魔王」


「はい。何ですか?」


「さっきから他人事のように頷いているが、これはそちらの問題でもあるのだぞ?」


「え?」


「え? ではない。我々は友好和親条約を結んだのだ。こちらの問題はそちらの問題でもあるという事だ」


「え? そうなんですか?」


「それはそうだろう。一番付き合いのある国はそちらになるわけだからな」


「はぁ……?」


「何だその返事は? ……わかっていないようだが、万が一戦争などが起こった場合、火の粉はそちらにも降りかかるということだぞ?」


「えぇ!? それは困りますね……」


「だろう? 無論、私はそのような事態が起こらぬよう粉骨砕身し全力で善処するつもりだが、今言ったような万が一が起こらぬようにする為にも、魔王と、そして魔族の力が必要なのだ」

 

 シズカさんは強い口調でそう言った。

 この言葉、ヤマダさんにも聞かせたかった……。

 感慨に浸りながら、俺は応えた。


「……そうですね。はい。もちろん、こちらとしても頑張りたいと思います」


「うむ。良い返事が聞けて嬉しいぞ。やはり魔王は私が見込んだ通りの良い魔王だな」


「そうですかね? 正直なところあんまり自信ないんですけど……」


 人の上に立った経験とかないし。

 実際のところ俺は魔王ってキャラじゃないし。

 復活の魔法の犠牲になったしがないオタクでしかない。

 成り行きでこんなことになったわけだから、自信はあまりない。ちょっとしかない。


「言葉を返すが、そういうところがいいのだ」


「え?」


 そういうところ? どういうところ?


「自信が無いと言い切れるところが良い。無責任、無根拠に『出来ます! 任せてください!』などと言うやつほど信用出来ないやつはいないからな」


「そうですかねぇ……?」


「そうなのだ」


 シズカさんは強く断言した。


「だから、魔王には今まで通り慎重であって欲しい。焦り決断を下す事もせず、落ち着いて冷静に物事に対処して欲しい。そういう事が出来る人材だと、私は信じている」


「うーん……そうだといいですけど……」


「そうであって欲しいと私が思っているだけだが、私のこういう事に対する勘は冴えているからな。魔王はそういう人物であるのだ。間違いなく」


「……そうですか」


 自分のことなのに、他人に断言された。

 でも悪い気分はしない。

 俺のことを信頼してくれている人に信頼されることほど嬉しいことはない。


「故に、私が暴走しそうな時は諌めて欲しい」


「……あぁ、はい。まあ……善処します」


 貴族たちに殴り込みをかけたところは暴走と言っても過言ではない。だから既に暴走しているところを見逃しているのだが……それについては何も言わなかった。


「良い返事だ」


「ははは……」


 はっきり言ってしまうと、シズカさんが暴れていたら止められる気は全然しないけれど。

 でも、頑張りたいとは思う。

 声くらいは掛けてみよう。

 それちょっとやり過ぎじゃないですか? みたいに。

 そんな程度でシズカさんが止まるとは思わないけど。

 一応はやってみようと思う。


「何にしても、そういうわけだ。魔王よ。これからも色々とよろしく頼むぞ」


「……はい。よろしくお願いします」


 マキシマムマイティデュラハンダブルエックスを脱いでの、むき出しの黒い体での、握手。

 俺には肉体は無い。

 五本の指は線でしかない。

 それでも、握った手からは暖かな温度を感じた。

 勇者であるシズカさんの熱い心が、俺に流れ込んできているように感じた。

 俺なんかに何ができるかわからない。

 きっと多くの失敗を重ねることになるだろう。

 それでも……だとしてもっ! 

 この世界から逃げることは出来ないのだし、魔王という役職から降りるわけにはいかないのだから、やってやるしかないのだろう。


「この世界の平和の為に、共に力を尽くしていこうではないか! 魔王よ!」


「はい! シズカさん!」


 シズカさんくらいの熱血さはないけど。

 平和を望む気持ちは同じだ。

 

 こうして、俺とシズカさんは——魔族の国と人間の国は——和平を結んだ。

 互いに手を取り、世界の平和に向けて、なんやかんや色々と頑張っていく事になったのだった。


 俺たちの国造りはこれからだ!


 なんて。

 そんな打ち切りみたいな終わり方をしないように、せいぜい頑張るとしよう。

 一人の魔王として。


すごくどうでもいい余談。

くぅ〜疲れましたw これにて第一部完結です! 実は (以下略)

そんなこんなで、第二部の更新開始は2〜3ヶ月後くらいになるでしょう。たぶん。詳しくは活動報告にでも書いておこうと思います。第二部についてですが「熱血!魔王のマンガ道!」編になる予定です。国造りなのにマンガってどういうこと?と思われるかもしれませんが、国とマンガって、切っても切れない縁がありますからね……たぶん。いや、マンガにはその国の国民性が出るというのは本当ですけど。ちなみにフランスではマンガは「バンド・デシネ」と呼ばれており日本よりもアート性の高い作りになっており、読書するみたいに部屋で静かに読む感じらしいです。そんな感じですが昨今は日本のマンガがブームになっているとのこと。大英博物館で展示会があったのが記憶に新しいですね。フランスはオタクの方も多いと聞きますし。芸術の国ですからマンガも好きなんでしょう。たぶん。アメリカはアメコミが有名ですけど、アメコミ読んだことないんですよねぇ……映画は色々見ているので興味あるんですけど、どこから手を付けていいのかわからないので未だにノータッチです。いつか読んでみたいなぁと思っています。中国では武侠小説のコミカライズが以前人気だったらしいです。武侠小説好きなので友達から借りてちょっと読みましたけど、中国語よくわからないんでよくわかりませんでした。なんか技の演出が小説版より明らかに派手になっててすげぇと思った記憶はあります。六脈神剣が完全にビームでした。いやまああれは小説で読んでもビームみたいなイメージでしたけど。降龍十八掌とかすごかったです。マジでドラゴン出てました。

まあそんなわけで。

これからも読者の皆さまに楽しんでいただけるよう頑張っていきますので、今回お付き合い頂いた方は是非次回もよろしくお願いします。ではでは。

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