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えぇ……? マジでこんなんなの? 俺って……?

 これは夢だ。

 明晰夢とかいうやつに違い無い。


 思い返せばさっきまでいた現実で、俺はつまらない仕事を終え、疲れた体を引きずって家に帰って、コンビニで買ってきた慎ましい飯を食って、録画していたアニメと特撮をだらだらとしながらも真剣に鑑賞し、明日も仕事行きたく無いなぁ。週休三日制になんないかなぁ。プレミアムフライデーじゃなくて、中日の水曜日が休みになるハッピーウェンズデーになんないかなぁ。絶対そっちの方が効率よくなるんだよなぁ。けどまあそうなっても働きたくないなぁ。てかほんともう働きたくねぇんだよなぁ。働いたら負けなんだよなぁ。ニートが一番なんだよなぁ……とかなんとか思いながら、布団に入り、寝た。


 寝たのだ。

 そしてその次が、これだ。

 

 目を閉じて、開けたら、これだった。


 で、あるからして。

 つまりこれは夢で間違いない。


 と言うか、夢でなければこんなことは有り得ない。


 ファンタジーとか萌えアニメとか……それと特撮の敵キャラを見たせいで、モンスターとメイドが同時に存在するカオスな世界観が構成されてしまったに違いない。


 夢は人の深層心理の影響を受けてどうたらこうたらなんとかかんとかみたいな。

 詳しい事はわからないが、俺の趣味が反映されているのは間違いない……はず。


 だからこんな夢を見ているのだ。


 そう思う事にした。


 そう思うと自然と心に余裕が生まれた。


 周りはモンスターだらけなのだ。

 ならば特撮好きの俺の体にも何か劇的な怪物っぽい変化が起きているに違いない! 

 と、変に強気になれたので、即座に自分の腕に視線を向けてみたが……目に映ったのは、黒い影だった。


「……は? え? ……は? なに? なにこれ?」


 のっぺりとした黒一色。

 刷毛はけで黒ペンキを綺麗に真っ直ぐ引いた風なのが、俺の腕……のようだ。


 一見するとどこが関節部かわからないくらいに真っ直ぐなのだが、腕を動かすと曲がったのでそこが肘なのだろう。

 

 そのまま黒に視線を這わせると、指が見えた。

 ちゃんと五本ある。

 手の甲はどこだかわからない。

 腕の先端から五本の黒い線が伸びているだけだ。

 爪の白もない。

 でも、普通に指の関節部的なところを動かせたので、黒いだけで体の機能に異常はなさそうだ。


 しかしこれは……何と言うか……フワフワしている。とでも言えばいいのだろうか?


 ただ腕が黒く塗られているだけではなく別のものに変質している感覚……いつもより体が軽いような……一次元的な絵みたいな体だけど、ちゃんと厚みはあって感覚もある。

 あるが……実体はないような軽さというか……。


 厚みのある影……そういう表現が適当だろうか?

 と、そんな事を考えていた丁度その時。

 

 どんちゃん騒ぎをしているスライムの姿が目に入った。

 メイド服を着ていないので、オスだろう。たぶん。

 体はゼリーみたいな透明度の高い薄い青色

 

 まるで水面のように、そこには周囲のモンスター達の姿がうっすらと映っている。

 当然、そこには俺の姿も……映っていた。

 

 あまりにも周囲のモンスター達と見た目が違うので一目でわかった。

 だが、だからこそ……俺は困惑の声を上げずにはいられなかった。


「えぇ……? マジでこんなんなの? 俺って……?」


 まあ、予想はしていたが……腕だけではなく、全身が真っ黒だった。

 影かと見紛うくらいに真っ黒な人型。

 シルエットとも言えるかもしれない。


「な、なんだよ……これ……」


 俺は絶望した……。


すごくどうでもいい余談。

「明晰夢 見方」と打ち込んでネットの海を泳げば、その方法について記したサイトがいくらでも出てくる。しかしそれを読み込んで色々と試したものの私は今まで一度も明晰夢というものを見たことがない。プレミアムフライデーについても同様である。この単語自体は目にしたものの、今まで一度も体験したことがないイベントである。それは今も尚確かに存在しているはずなのだが、諸君らの記憶からも消えているのではないだろうか? 見たはずなのに覚えていない、まるで夢のようである。

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