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私に叩きのめされた者が悪だ

「こうも簡単に貴族の位を取り上げてしまっては領地内での様々な仕事が滞ってしまいますぞ」

 

 俺がシズカさんのヤバさに戦慄している間に、次の論戦バトルロジカが始まっていた。

 相手は長老っぽい白ひげを生やした爺さんである。

 暴力には長けていないとひと目でわかる。

 でもその分論戦には強そうだ。が、シズカさんは一歩も引かない。


「諸々の仕事は暫くの間私が引き受けよう」


「如何に勇者様でも全ての領地を管轄するなど出来るわけが……」


「出来る。勇者の力を駆使する」


「勇者の力と貴族の為すべき仕事とは何も関係が無いと……」


「貴様が貴族である事と働かない事は何か関係があるのか?」


「貴族は管理者であり、そういう立場の者であって、それは身分の差によって予め……」


「身分制度は廃止とする」


「なっ!?」


「そしてこの先、管理者は私が選出する」


「なんですとっ!?」


「働きぶりや民の信頼。投票による多数決。様々な方法を駆使し、様々な要素を考慮した後に、私が選んだ者に領土の統治権を与える」


「……そ、そのような方法では……勇者様が賄賂などで買収されてしまう事も考えられますぞ」


「私は常に公平であると約束しよう」


「口約束に意味など……」


「文句があるのか?」


 シズカさんが拳を握った。


「このような老人に対して、暴力に訴えるおつもりか……」


 老人は言葉で防御を試みた。

 だが——


「貴様が老人である事を盾とするのならば、私は躊躇なくこの拳を剣とするしかないな」


「……働きます」

 

 あえなく論破ロジカルブレイクされ、老人もすごすごとその場を後にした。

 シズカさんはなんか良いことを言った風な雰囲気を醸し出しているが、全然そんな事はないような気がする。

 つまりは、これからお前をぶっ飛ばす。

 右ストレートでぶっ飛ばす。

 と言っているようなものだ。

 恐喝である。

 情け容赦ない脅しだ。


「勇者様! あなたは今のように力で民を抑えつけるおつもりか!」


「論理を飛躍させるな。私が力を持っている事と、その力がどこに向けられるのかは、全く別の問題だ。私が叩きのめすのは悪党だけだ」


「ではあなたにとっての悪とは何か?」


「私に叩きのめされた者が悪だ」


 いやもうそれ力こそが正義って言ってるようなものじゃん……。

 俺は呆れた……が、一方で正しくもあると思わないでもなかった。

 結局の所、勝てば官軍なのだ。

 強いやつが世の中を支配するのは当然だ。

 一口に強さと言っても色々なものがある。

 権力とか暴力とか。

 この世界ではわかりやすい暴力が幅を利かせているというだけだ。

 強い力を持つ者が全てを支配出来る。

 だから王は、元の世界に帰すという条件を付けて強大な力を持つ勇者を操っていたのだろうが……今回は召喚した相手が悪かった。

 まさか元の世界に帰らないでこの勇者の力で世界を変えるとか言い出す者がいるとは夢にも思わなかったに違いない。

 まあ、勇者に選ばれた者がこんな形での世直しを望んでいるとは、誰も想像出来なかったと思うが……。

 俺が王だったとしても想定外だ。

 勇者がこんなのだったとは……。

 これ本当に平和な世の中つくれるの? と俺は内心ビビっていたその時、


「一つお聞きしてもよろしいかしら?」


 艶のある高い声が、場を駆け抜けた。

 全員の視線が集まったそこにいたのは、透き通るように肌が白く、尖った耳をした、幻想的なまでに美しい女性だった。


すごくどうでもいい余談。

善悪の価値基準は人によって異なる。例えばあなたが置き引きされたとする。あなたは盗んだ方が悪いと思う。一方で盗んだ方はあんなところに無防備に置いていたあなたが悪いと言う。一般的な社会から見れば盗みは悪なのであなたの意見は正しい。しかし世の中にはそのような一般常識の通じない相手は無数に存在する。身近なところで例を挙げると、いじめなどがそうだ。いじめは悪いと教えられるにも関わらず、それはどこからともなく発生する。いじめた方はいじめられる方にも問題があるなどという。いじめは悪いと教わっているにも関わらずそんなことをいう。自身が悪ではない。相手が悪いのだという論理展開。善悪の基準が狂い、一般常識は機能を失う。こんな恐ろしい出来事を避ける為に、善について説かなければならないが、果たして絶対なる善を敷く方法があるのか?と常に考える。善人は確かに存在する。では善人になるためにはどうすればいいのか?結局のところは利益を求めない生き方がそうなのではないか?と思わないでもない。良いことをしても良いことはない。けれど良いことをしようと心がける。見返りを求めない生き方。自身の内に絶対の善を設定し、行使できる者。果たしてそういう人間になれるかどうかわからないし、そのような生き方を他人に強要するつもりもないのだが、人としてそういう風にしようという心がけを忘れないようにしたいと思う。

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