む! むむむ!
「そういうわけで、だ」
「は、はい……」
「我々の王としての権力を行使し、今度こそ停戦を結ぼうではないか」
「それは……はい。よろしくお願いします」
権力を行使するという言い方は悪党っぽいが、目的は平和だ。
働いているときは権力を行使する側に回るなど考えもしなかったが、世界が変われば全てが変わるものだなぁ。
何だか感慨深い。
「では、全軍に引くよう連絡するとしよう」
「わかりました。こちらも連絡します」
ゴレ子を通して、全軍への通達は瞬く間に終わった。
流石は高性能だ。看板に偽りなし。
シズカさんもテレパシー的な魔法を使ったようで、人間の軍も足並みを揃えて平野から去っていっている。
これで戦争は終わった。
会話だけだったのでとんでもなくあっさりとしたものだが、どちらも納得しているようだし、これでいいのだろう。たぶん。
さて、後は城に帰って……帰って……何をしようか?
何かやることあるのかなぁ?
自問した。
その時、
「よし。折角だ。記念すべき停戦の日の最後は、魔王に締め括って貰うとしよう」
不意に、シズカさんはそんなことを提案した。
「え? 俺にですか?」
「そうだ。どうか私のように皆の前で棺を破壊して欲しい。出来るだけ、派手に」
「派手にって……」
「景気付けの花火みたいなものだ。頼めないか?」
「うーん……」
花火みたいなもの。と言われましてもね……。
俺みたいな地味な魔王は、そういうことしませんよ……。
装甲は派手ですけど……。
これめっちゃノリノリで造ったので、凄いカッコいいと自負していますけども……。
それ以外は地味ですよ……。
俺はシズカさんみたいに自分に自信のある人物じゃないので……。
などと言って良いものかどうか。
いやでもまあシズカさんは神殿をぶっ壊してその一部をここまでぶん投げたわけだから、派手なことをやっているわけだし……。
シズカさんがここまで派手なことをやってくれたのに俺が何もしないというのは流石に不味いか……?
仮に、やりません。と言ったら、怒って停戦が白紙にされるとか……ってことはなさそうだけど……。
勇者だし……シズカさんはそんなキャラに見えないし……俺がやらないって言ったら「じゃあ自分がやろうではないか!」とか言いそうではあるような気がしないでもないような……。
俺は悩んだ。
悩んだけど、やっぱり自信が無いので「控えめなやつでもいいですか?」と尋ねようとしたところ、
「む! むむむ!」
不意にシズカさんが鋭い視線を背後に送った。
「どうかしました?」
「どうやら謀反が起きたようだ」
「え? 謀反?」
「クーデターと言い換えてもいい」
「はぁ……?」
「勇者の力が闘争の気配を感じ取ったのだ」
「へぇー。すごいですねぇ」
魔王も魔力で色々出来る。それと同じで勇者も色々出来るのだろう。
「場所は王宮だ。……なるほど、くだらない権力に群がる貴族どもめ。私がしばき倒した王を解放し、国を取り戻させ、その時に助力しましたからと王に胡麻を擂るつもりだな」
「解放しないでクーデターを起こしたやつが王になるのとかもあり得るんじゃないですか?」
「この国の貴族とやらは屑だ。責任は取らず、権力の旨味だけを吸う」
「あーなるほど。それでお飾りとしての王を取り戻そうとしているわけですね」
どうしようもないやつらはどこにでもいると思う。が、人間の国は上層部にそういうやつらが多いらしい。
ヤマダさんが裏切られたのも頷ける。
ヤマダさん……。
そんなやつらのせいで死んでしまったなんて……。
「やれやれだな。すまないが魔王よ。棺の破壊は少し待って貰ってもいいか?」
「それは構いませんが……シズカさん、もしかして……」
「うむ。ちょっと謀反を鎮圧してくる」
「あ、そうですか」
言うと思った。
「そうだ。良ければ魔王も付いてきてくれないか?」
「俺もですか?」
俺は驚いた。
こんなことを言われるとは思わなかった。
「これも折角の機会だ。知らしめてやろうではないか。我々が停戦協定を結び、世直しを行うという事を」
「はぁ……?」
いやそれ世直しっていうか逆に魔王と勇者が手を組んで世界を滅ぼそうとしていると思われそうじゃないですか?
世界を半分ずつに分け合って支配しようとしてるとか思われないですかね?
とツッコミを入れたかったが、それも無粋というものか。
個人的には、付いていってみたい気分ではある。
ヤマダさんのこともあるし。
「共に来てくれるか? 魔王よ」
「はい。もちろんです」
あっさりと返事が出来た。
ヤマダさんが交わした約束を破ったやつらを許してはおけない。という気持ちが強いのだ。
まさか自分が他人の為に怒れる人間だったとは……驚いたけど、力を得たせいなのかもしれない。
気が大きくなっている。
今の俺には何でも出来る。
だったら、やりたいことをやってやる。と、そう思えているのかもしれない。
「では行くぞ!」
「はい! 行きましょう!」
何にせよ、ヒーローっぽくとんでもない勢いで垂直に飛び上がったシズカさんの後に、俺も続いた。
そして右腕を突き出してビューン! と飛んでいくシズカさんを追いながら、空中でゴレ子に報告を済ませて(ゴレ子さんは特に何も言わず「承知しました」とだけ言ってくれた)、俺も王宮へと向かった。
すごくどうでもいい余談。
この「すごくどうでもいい余談」をタグに登録しようとしたら11文字でギリギリ入らず結局「余談」で登録することになった。残念である。すごくどうでもいいが、これは「なんかスペースがもったいないしなんか書いとくか」とか「後書きあると読後感が失われるとか言うけどこれギャグパロやし別に後に残るものとか特にないしええやろ」とか「スナック菓子食った後になんとなく成分表示眺める感じで読まれたらいいなぁ」とか「ちょっとしたエッセイ書く練習しとくか」とか「WEB小説やし好きに書いたろ!」とかそのようななんか色々な理由で書いているわけである。すごくどうでもいいので、別に読み飛ばしてくれても構わない。物語の本筋に関わる話は滅多にない。ただ、なんとなく読んで「ふふっ……」と小さく笑ってくれたら幸いである。




