魔王の体、及び魔王の持つ能力について
『魔王の体、及び魔王の持つ能力について』
かつて魔族に生まれた者の中に、人間と戦う為に限界まで魔力を高め、その限界を突破した者がいた。
それが魔王である。
……余談だが、魔王はずっと魔王と呼ばれているようだ。
我輩はヤマダだが、魔王としか呼ばれなかった。
魔王の名前が以前と違う! などと言われて問題になるのを避けたかったので、わざわざ本名を名乗らなかったというのもあるが、気になって初代の名を調べてみたところ魔王の名に関する記述は無かった。
魔王は魔王。という事なのだろう。
閑話休題。
生物としての枠を超越した魔王の体は生命エネルギーのようなもの。
いわば、魂そのものであると我輩は解釈している。
靄のような、実体を持たない肉体。
しかれど、その形は人型を保っている。
恐らく、魂とは誰もが想像する円形(所謂人魂的なもの)なのではなく、人の形をしているのだろう。
それで、魂だけの存在となった魔王は靄の如き人型となるのだろう。
靄である事の説明については、こんなところである。
もしこの姿に不満があるなら、マントや鎧を着るといい。
見た目がよくなり、相手への威圧感が増すはずである。
だろうとか、はずだとか、推測ばかりで申し訳ないが、これまでの魔王に関する記述を読んでもよくわからない事が多かったのである。
初代魔王は敵に体の秘密を知られてはまずいと考え記録を残さなかったのだと思われるが、その後の魔王達はどうも体がもやもやである事を気にしなかったらしい。
故に、これまでもここからも全ては我輩の調べによるものである。
間違いはあるかもしれない。
だが、私は謝らない。
もし間違っていた場合は、君が書き直してくれる事を信じているからだ。
次に、食事や睡眠について書いておこう。
この世界に来て、君は飢えを感じたか? 眠気を覚えたか?
答えは、否、であろう。
三大欲求から解放された事を君も感じたはずだ。
睡眠欲、食欲、性欲。
肉体を失ったのだ。
そういうものがなくなるのは至極当然だと考えられる。
ただ、魔力をエネルギー源としているので、一度に大量の魔力を消費すると疲労感を覚える。
まあしかし、魔王は魔法を極めていたらしく、その体の内から常に魔力を発生させている状態であり、更には敵の放った魔力をも吸収出来るので、魔力の枯渇はまず起こらないと考えていい。
この体についてはこんなところだ。
最後に、主に戦闘に関係する能力についても少し記述しておこう。
まず、体は靄なので物理攻撃を完全に無効化出来る。
敵の剣も槍も拳も、体をすり抜ける。
ただし、達人と呼ばれる部類の凄まじい力量を誇る使い手の中には、命そのものを捉え、そこに——所謂精神体的なところに攻撃を叩き込む事が出来る者も存在する。
防御不可の技を持つ者だ。
初代魔王が鎧を造ったのも、我輩がダークナイトデュラハンへと凄まじき改造を施したのも、そういう者への対策の為である……が、安心して欲しい。
こういう手合いは逆に魔法に滅法弱いので、遠距離から攻撃し続ければ勝てる。
仮に魔法を掻い潜って接近戦に持ち込まれても、ダークナイトデュラハンのオートカウンターの餌食になるだけである。
故に、何も心配はいらない。
序盤中盤後半、魔王に隙はない。
魔王は無敵である。
すごくどうでもいい余談。
私が高校時代に住んでいた学生寮は飯がとてつもなく不味かった。私の食への欲求はそこで死んだと言っても過言ではなく、不味い飯を食い続けたことによりイギリスでのホームステイ生活中も普通に過ごすことが出来た。一緒に行っていた友人は「イギリスってマジで飯不味いのな。トマトしかまともに食えねぇわ」とぼやいていた。私の経験上、フィッシュ&チップスは日本で食べた方が100倍美味かった。話を戻そう。寮の飯は不味かった。朝は生卵とご飯とわかめしか具のない味噌汁と味付け海苔だった。昼は気持ちの悪い色をした揚げ物しか入っていない弁当が配られた。夜はサラダという名のゆでキャベツが頻繁に登場した。ドレッシングはない。冷凍らしきコロッケ。掛けるものは醤油だけでソースなどなかった。しかも全て作り置きなので冷えていた。流石の私も三年目には受験に集中したいからと言って飯を全部断り、近くの弁当屋やコンビニを利用した。コンビニの弁当の方が食堂より10000000000億倍美味かった。二年も我慢していた自分が馬鹿みたいに思えた。けれどもその時の経験により大抵の国の料理を食えるようになったのだと思う。「変わった味だけど、高校の頃に食ったものよりはマシだな」みたいな。だから高校の食堂には感謝……などするわけない。あんな不味い飯を出し続けたのに自分たちはアイスとか食ってたし食中毒を発生させて学生を恐怖のどん底に落としたのはマジで一生許さねぇぞ。あの時代にTwitterがあったら晒して炎上させてたと思うくらいには許せない出来事である。




