なになに……魔族は……
まず目を通したのは、この世界の勢力図について。
「ふむふむ。そういうことか」
結論から言うと、この世界は二分されていた。
人間と、魔族で。
ノートに描いてあったのは、ざっくりとした図。
大きな円の上半分が人間の国で、下半分が魔族の国。
そして、人間と魔族の国の国境周辺には、魔獣と呼ばれる巨大生物が生息する地域がある。
魔獣の数はそう多くなく、一定のテリトリーから外には出て来ることはあまりないが、生半可な兵士では相手にならないくらいに強い。
そのような危険生物のいる地域が点在するので、人間は一気に魔族側を攻める事が出来ず、武力衝突は幾たびか起こっているものの、長い間領土に大きな変化は無いとの説明だった。
人間の領土の端っこには白耳長、黒耳長という耳の長い種族の国があるとか。
白耳長族は商工業で発展しており、黒耳長族は武力関係の仕事に付いている。とメモのように一言添えられている。
そこから少し離れたところに獣人の一族が住む森があるようだ。
これについては「魔獣を狩る狩猟民族」とあるだけで、詳しく記載されていない。交流があまりなかったようである。
これはかなりざっくりとした説明であり、詳細な地図は書庫にあるとのこと。
探検などを楽しみたかったらそれを使ったらいい。とアドバイスが書かれてある。
文末には「自分に絵心が無いせいでとてつもなく簡易的な地図になってしまってすまない……」という謝罪の文もあった。
「わざわざ謝るなんて、ヤマダさんは真面目で律儀な人だったんだろうなぁ……それにしても領土を争って戦争をしているわけか……単純だけど、だからこそ面倒そうな図式だな」
とりあえず概ねわかったので、ページを捲る。
次に調べたのは魔族についてだ。
「なになに……魔族は……獣人と人間の合いの子、か……ふーん……」
それで半人半獣なのか。納得した。
その昔、獣人という人と巨大な獣とが交わって生まれた種族が存在し、その者たちと魔法を使う人間の女が交わって生まれた種族とのこと。
ちなみに魔獣もその時に生まれたそうだ。
怪物的な側面が強く出てしまった者がいて、そういう者たちが人里を離れ森に入り、魔法を使う獣ということで、いつからか魔獣と呼ばれるようになったらしい。
一方で魔族は人型であるものの、ベースとなった獣人の身体的特徴を引き継いでいる。
例えば、竜種なら強靭な鱗。牙、爪、などを持ち高い戦闘能力誇る。
馬種なら、下半身が馬になり悪路も平然と走行する機動力を有する。
魔族は見た目はそれぞれ異なるが、交配は可能であり、その際は親同士の特徴が引き継がれるが、引き継がれる特徴はランダムであり、父と母の特徴が合わさっている場合もあれば父だけとか母だけの場合もあり、よくわからない……とある。
また、雄は身体的特徴が顕著に表れ、人よりもベースとなった魔獣に近い姿になるが、雌は人に近い女性らしい姿になる。
昨日の光景が思い出される。
無数の魔族がいたが、確かに雌は説明の通りの姿だった。
けれど、何故メイド服を着ているのか?
という事に関しての説明は無かった。流石に魔族特有の民族衣装ではないだろうけど……と思っていたところで、ノートの一端が発光しているのに気付いた。
「これは……メイド服についての説明か? わざわざそんなものがあるのか?」
確かに、大きな謎の一つではあるが……。
メイド服はメイドが着る服で、可愛い。
魔族はパッと見た感じ可愛らしい女の子? 雌? が多かったので、着せたら映えると思ったに違い無い。
俺はそう思う。誰だってそう思う。
だから、こんな感じのことが書かれているのだろう。
「……とりあえず、さきにこっちからだな」
この世界の根本的なところには関わりなさそうなので、一先ず置いといて。
俺は更にページを捲った。
すごくどうでもいい余談。
私は地図を見るのがすごく苦手である。以前デンマークを訪れた際に、地図を見ながら歩いていたのに有名な人魚像の場所を見落とし、近くをうろうろし、高台に登ってそこから像を目視し、大まかな当たりを付けて進みようやく目的地に辿り着いた。まず間違いなくこの「大まかな当たりを付けて進む」という行為が道に迷いやすい悪癖の原因であるとわかっているのだが、やはり癖なのかどこに行ってもこうしてしまう。まあ知らない土地を歩くというのはそれだけで楽しいので自分としては迷子になっているつもりなどなく観光しているのだと強がれないこともないが、友人と行くとなるとブチギレられるので注意した方がいい。いつだったか友達と車で出かけた際に私が道案内をしたのだが、最初に右折する所を左折するという初手からのミスで全く違うところに行ってしまい猛烈にキレられたことがある。「ここどこ?」「わからない」「わからないじゃねーよ!!!」あの殺伐とした車内は思い出すだけで辛い。本当に申し訳ないと思う。今はスマフォにナビが付いてるし、もう大丈夫だと思う。たぶん。いやもう本当にあの時はすまなかったですと猛省しております。




