表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/44

折角だし、気分転換にやってみるか

 ゴレ子は明朝この部屋を訪れると言っていたが……そうすると、明日の朝から魔王として働かなければならないということになる。


「明日の朝までに、答えを出さないといけないわけか……」


 外の景色は見ていないし、ここには時計もない。

 朝まで後どれ程時間があるのかわからないが、疲れを取るくらいの休憩時間が与えられているはずなので余裕はある……と思う。思いたい。


「とりあえず魔王ノートを読んで……この体や、この世界……それと、こなさないといけない業務について調べてみてから自爆するかどうかを決めるか……俺なんかでもやれそうな仕事ならやればいいし、そうじゃあなかったら……」


 ……自爆もありだ。

 選択肢の一つだとヤマダさんも言っていたし。


「あ、そうだ。ついでに何でモンスターがメイド服を着ているのかとかゴレ子が女教師みたいな格好なのかも調べておきたいなぁ」


 色々と知りたいことはあるが、個人的には服装のことが結構気に掛かっている。

 こんな状況でも服装が一番気になるのは自分でもどうかと思うが……死ぬ前に知っておきたいこの世界の謎の一つである。


「さてと、それじゃあ……ん?」


 ノートに手を伸ばそうとして体を横向きにしたところ、壁際に立てられている鎧が視界に入った。


「黒い鎧……カッコいいなぁ……。黒ってところが良いよなぁ。闇っぽくて。魔王の装備か? でも……何だ?」


 近くで改めて見て、ふと感じた違和感。


「鎧……だけど……何というか、装甲っぽいような……」


 フルプレート、と呼ぶものだろう。

 全身を包む漆黒の鎧。

 しかし西洋にあるそれとは少しばかり雰囲気が異なっているように感じる。


 近代的というか、メカニカルというか。

 刻まれている模様がエネルギーラインみたいに見える。

 これはただ鉄を打って造ったのではない。

 そういう単純な形ではない。

 デザインのセンスが、この部屋とはそぐわない。


「最近造られたものなのか? これは?」


 ベッドから身を起こし、俺は鎧に触れた。

 すると——


「うおっ!?」


 血のような赤い光が、鎧に彫ってある模様の上を流れていくではないか。


「な、何だ? 俺に反応しているのか?」


 驚いて指先が離れたが、それでも鎧の各部が赤く発光している。

 エネルギーラインにエネルギーが満ちた雰囲気。

 まるで起動したてのロボットのよう。

 これは何らかの魔法が起動したということなのだろうか?


 俺は急いでノートを掴んで「黒い鎧」のことを思い、光ったページを捲った。


「なになに……黒い鎧は……初代魔王が身を守る為に造った物理、魔法に対して高い防御能力を誇る鎧。魔王の姿は実態のない霧状なので、着脱は自在。これまでの魔王も白兵戦用に使用している。それを我輩は……改造しただって? 名は首無し騎士と書いてダークナイトデュラハン……良い名前だ。……改造の内容は……相手の攻撃に対するオートガードと、オートカウンター。攻撃時に各部位を魔法で瞬間的に加速させ、打撃能力を高める局所ブースト機能。自動追尾するロケットパンチ。どんな攻撃を受けても退け反らないスーパーアーマー……魔王自身が致命的な攻撃を受けた場合、鎧が盾となりダメージを一度だけ肩代わりする身代わりの術……なるほど。ヤマダさんは、近接戦闘に特化した機能を付けたというわけか。まあ、鎧が必要なのはそういう状況だしな」

 

 接近戦の為にそういう機能を付けるのは当然だ。

 俺はうんうんと頷いて、今一度鎧に目をやった。

 内蔵された機能を知ってからだと何だかとても頼もしく見えるのは、俺が単純だからだろうか?


 などと、そんなことを考えつつ残りの部分に目を通していると、気になる記述が見付かった。


「なにっ!? 機能の追加も可能だって!?」


「我輩は我輩の好きなようにこれを造った。君も君で、自分好みにこれを使ってくれ。カスタマイズは自由自在だ! 君だけの鎧を造り上げろ!」とノートには書いてある。


「機能追加の方法は、鎧に触れた状態で『機能の追加』と言い、それから追加したい機能を言うだけ。それだけでいい……なるほど。言語入力か。結構簡単だな。……ん? 外装の追加も出来るのか? 鎧を置いてある倉庫に行き、好きなものを選び、子供の頃遊んだブロックの玩具のように自由に組み合わせればいい。重力制御の魔法で鎧を宙空に浮かせ、物を引き寄せる魔法を使えば倉庫内を歩き回らずに済むので、作業がしやすい。ふーん……溶接や模様を入れるのは炎の魔法を駆使すれば可能……へぇ〜……」


 俺は自由度の高さに素直に感心した。

 そして何だかわくわくしてきた。


「これは……面白そうだな」


 男心をくすぐられるというか、何というか。

 自分の好きなようにこういう物を作る。というのは誰だって憧れていたはずだ。

 デカいプラモデルみたいなもんだ。


「折角だし、気分転換にやってみるか」


 ここでベッドに寝転がったまま魔王ノートに目を通すのは絶対にやっておかなければならない事だという自覚はある。あるのだが……憂鬱な気分だし、まだ混乱している。

 そんな状態では情報もまともに頭に入らない。

 だから、気分転換は必要だ。

 これは必要な事なのだ。

 と、俺は自分を納得させて、ノートのページを捲った。


すごくどうでもいい余談。

以前モンゴルに旅行に行った際に鎧を着る事があった。それはフルプレートというか、全身を覆うような厳しいものではなく、頭からばさっと被れるタイプの非常に簡易的なものだったのだが……それがかなり重たく「これは落馬したら自重で死ぬ」と思った。実際に戦場などで剣や弓を防ぐわけだし、柔らかかったらお話にならないのだろうが、それでも成人男性である私が「重い」と思う程度の重さの金属を纏うというのはかなりキツい。こんなものをフルで装備して戦闘を行っていたらと思うと……当時の戦士の肉体の強度の凄まじさに戦慄するばかりであった。ちなみに鎧を着込んだ私がすぐに剣を構えて適当なポーズを取ったところ、一緒にいたモンゴルの友人が「いいポーズだ。やはり日本人はコスプレ慣れしてるな」と感心していた。私は当然の如く「日本人はみんなオタクなのだ」と言っておいた。日本人をみんなオタクにしてしまって本当に申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ