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マジかぁ……俺が魔王かぁ……

「どんだけ自作の漫画読ませたいんだよ……」

 

 復活の魔法に関するあれこれより先に、自然に口をついて出たツッコミがこれだった。

 やれやれ。

 多少は気にはなるが……今は漫画よりも……。


「それにしても、マジかぁ……俺が魔王かぁ……」

 

 一旦本を閉じると、自然とため息が出てきた。

 改めて、重い事実が伸し掛かる。

 

 いきなり魔王になってしまった。


 平魔族とか幹部の四天王とか、そういう段階を踏まずにいきなりの魔王である。


「俺、会社では平社員だったんだけど……」


 しかも就職活動に失敗した挙句にコネで入った会社だ。

 主な業務は事務……でいい。と言われたのに、人手が足りないからと現場作業に回された。

 免許を取りにいかされ、重機とかに乗せられてた。

 重いものを運んだりしてた。

 あれこれ外仕事を全般的にやらされた。

 インドア派だから全然向いてなかった。

 けれどもコネで入ったものだから責任感……じゃなくて負い目みたいなのがあってやめるにやめられなかった。

 土日にアニメを一気見することだけが癒やしだった。

 疲れていた。

 何度も何度も同じ日を繰り返すみたいに働いた。

 働きたくねぇなぁ……と毎日思っていた。


 その結果が、これだ。

 死んで魔王だ。


 あっちでは労災の話とかになっているのかどうか……だとしたら申し訳なく思う。向いていない仕事だったが、それは俺の問題であり現場の人には問題など無かった。

 俺の死で過労死問題に発展していたらと思うと……本当に申し訳ない。

 まあ魔界に来てしまったので俺にはどうしようもないのだけど……。


「というか……いきなりトップに立つとか絶対に無理だよなぁ……はは……」


 元いた世界の現実から逃避したら別の世界の現実が襲いかかってきた。


 単純な作業でもきつかったのに人を動かす立場になるなんてどう考えても無理だ。

 務まるはずが無い。


「はぁ……」


 マイナスな思考ばかりが脳裏をよぎる。

 目の前が暗くなる感覚に襲われる。


「自爆……するか?」


 面倒なことは避けてきた。

 嫌なことからは逃げてきた。

 これまでずっとそうだった。


 それは楽な生き方だった。

 とても。

 そういう生き方を変えようと思わないくらいに。

 でもその結果、苦労も多かった。

 特に就職活動中とか。


 何もしなかったから何者にもなれなかった。

 誰でも出来る仕事をする誰でもいい誰かのポストにするりと収まっただけだった。

 でもそれはそれでいいとさえ思っていた。

 単純作業。

 責任の無い役職。

 ウェットじゃない人間関係。

 付かず離れずというか。

 世間にいながらも明らかに世間から離れていたけれども、それはそれで良かった。

 肉体的にはきつかったが、心の深い部分では楽をしていた自覚はある。


 自分の事しか考えなくていいのは、ある種の解放感があって心地よかった。


 それなのに……。


「まさか……死んで、こんなことになるなんてなぁ……」


 要所要所で手を抜いて楽してきたツケだろうか。

 これまでの分をここで一括して払えという事なのだろうか。

 楽をしていたとはいえ、俺みたいなのが生きるのはそれなりにしんどかったのに死んでまでキツい思いをしそうな気がする……。

 そんな思いをするくらいなら、俺はもう死んでいるのだしいっそのこと自爆してしまうのもいいかもしれない。

 魔王ノートにある記述を読む限り、魔王の中にはそうやって自殺したやつもいるらしいし、俺が同じことをしても誰も文句は言わないに違いない。


「……」


 手にしたノートが淡い光を放っている。

 たぶん自爆の項目が光っているのだろう。

 俺はノートをベッドの上に置き、何となく天井を見上げた。

 石造りの天井だ。

 現代的な建築物ではない。

 別の世界を連想させる古めかしい造り。


「知らない天井だ……」


 さっきも内心では思ったが、一回は声に出して言ってみたかった台詞なので呟いてみる。

 もちろんこんな呟きには何も意味もない。


「俺は、死んだ」


 死について口にしてみた。

 でも現実感はこれっぽっちも無い。


「でも、生きている」


 これもまた不思議に聞こえる。

 死んだのに、生きている。

 姿を変えて存在している。

 これを生まれ変わったと言うべきなのかどうか……。


「死んだけど、生きてる。……なのに、また死ぬつもりなのか? 折角、生きてるのに……それでいいのか?」


 自分自身に問いかけてみた。

 声は部屋の壁に虚しく吸い込まれて、当然ながら答えは返ってこない。

 答えは自分で出さなければいけない。

 なのに、この問いに対する答えを俺は未だ出せていない。


「どうしたものかな……」


 本当にどうすればいいのか。

 一人、頭を抱えた。


すごくどうでもいい余談。

思い返してみれば最初に書いた小説は高校生の頃、日直が書く日誌の余白部分に書いたものである覚えがある。記憶を失った男、ジョンがわけもわからず敵に追われ、逃げる最中に記憶を取り戻し、大きな陰謀と戦う……みたいな。しかし日直は一月に一回くらいしか当番がこないので数行書いてやめた。担任から「おい。ジョンはどうなるんだ?」と聞かれたが「考えてません」と素直に答えて「いや考えてから書けよ……」と呆れられた。当時は本当に何も考えておらず、余白が勿体無いなぁと思ったので書いみただけだった。担任の先生には本当に申し訳なく思う。しかしその時の経験があるからこそ考えて書くようになった……というわけでもなく、プロットは組むものの実際書いてみると変化する部分が多かったりして七転八倒している毎日であるが、まあそれはそれで楽しいので良いではないかと思う。この作品も設定に矛盾が生じぬよう気をつけているつもりではあるが、読み進めていくうちに何かおかしなところがあったら感想にでもいいので書き込んで欲しい。と、この場を借りてお願いする。

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