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何はともあれ。とにかく読んでみるか

「私の機能については一先ずここまでにしておきましょう。やはり魔王様はお疲れのご様子。何事もなくとも、明朝ご様子を見に伺いますが、よろしいでしょうか?」


「……あ、はい。お願いします」


「それでは、私はここで失礼いたします。おやすみなさいませ、魔王様」


「……はい。おやすみなさい」


 ホテルのフロントで説明を受けた時みたいに、とにかく俺は何度も頷いた。

 ゴレ子はそんなこちらの様子を見届けると再びウィーンと一礼して、ガッシャンガッシャンと音を響かせながら来た道を戻っていった。

 非常に姿勢のいい歩き方だ。

 流石はゴーレム。

 俺は感心しながらその背を見送って扉を開いた。

 ランタンの暖かな光に照らされている部屋の中は……。


「これが私室か……」


 普通のベッドが一つ。

 木製の簡素な机が一つ。

 壁には剣や鎧、それにマントが掛けられている。

 武具の色はどれもこれも黒が基調となっておりとても魔王っぽい。

 暗黒というか、漆黒というか。

 闇属性感がひしひしと伝わってくる装飾品の数々である。


「ふーん……」

 

 部屋自体は質素なものだが、置いてある物品の数々からは魔王の私物ならではの特有の貫禄が出ている……ような気がしないでもない。

 

 一通り部屋を見回して、俺は後手に扉を閉めた。

 それからすぐにベッドに身を投げた。


「ふぃ〜……」


 ビジネスホテルに入った瞬間についやってしまう行動なわけだが、ここはビジネスホテルではないしドスン! という重々しい音はしなかった。


 やはり俺に体重というものは無さそうである。

 ベッドからの反発が無いのは何だか哀しい。

 電気ポットも無さそうだし、お茶とかももちろん無いっぽい。


 そう言えばビジネスホテルに泊まるとまずは魔除けの御札探してたなぁ……。


 額縁の裏とか。

 引き出しの底の部分の裏側とか。

 そういうところを探して……それから次は冷蔵庫だ。

 

 冷蔵庫の中に水が入っているホテルは最高だ。

 冷えた水を一杯飲んで、それからどこに飯食いに行くか考えたりしたっけ……。


 ここではそんな事は出来そうにない。

 スマフォにWi-Fiのパスワードを打ち込んだりも出来ない。

 ただただ寝転がり、天井を見上げているだけ……。


「あぁ……疲れたぁ……」


 落ち着いて一息吐いた途端、魂の奥底から絞り出されたセリフがこれとは。


 疲れた。

 

 肉体的にではなく、精神的に。


 凄まじい疲労感がある。

 やっぱり緊張していたようだ。

 でもそれも当然か。


「夢じゃなくて現実か……」


 魔王ノートの記述。

 読んだけど未だに現実感は無い。

 けれど夢から覚めるような気配も無い。


 この体と同じく思考も闇に覆われているかのように緩慢だ。


 何も考えたくない。

 ……でも、そういうわけにもいかないだろうなぁ。

 

 俺は魔王になってしまったらしいのだから。


「とりあえず……どこから読めばいいのか……」


 呟いて、無理矢理頭を働かせる。

 知りたいことは何か。

 知っておくべきことは何か。

 それについて考えてみて、


「まずは……そうだな。ここはとりあえず、一ページ目にあったやつからにするか」


 一ページ目を捲った。

 さっきと同じ文章が目に入る。


「えーっと……あった。これこれ。これだ。復活の魔法についてだ」


 復活の魔法。

 俺が死んだのはこれのせいらしい。

 死んだ。と言っても全然死んでいる気などしないが肉体を失ったのは確かだ。


「推理モノとかも、最初は死因から調べるしな」


 この状況と推理モノとの関連性は全く無いよなぁ〜と思いつつもどこから手をつければいいのかわからないので、まずは「復活の魔法」について知りたい。と願った。

 すると本の一部が淡く輝いた。


「割と最初の方のページだな……」


 単に先に記しただけなのか。

 それとも早い段階から知っておいた方がいいということなのか。


「何はともあれ。とにかく読んでみるか」

 

 それを確認する為にも、俺はページを捲った。


すごくどうでもいい余談。

ビジネスホテルに泊まるとなぜだか物凄くテンションが上がってしまうのだが、風呂にお湯を貯めて流すとずっと水が流れる音がするから下の人に迷惑かなぁ……と思ってしまいシャワーで済ませてしまう。自分が泊まっている時には上の階から水が流れてくる音などしないのだから大丈夫だろうとは思うのだが、それでも「もしうるさかったらどうしよう……」と思い風呂にお湯を貯められない。なので温泉付きのビジネスホテルに泊まることを心がけている。ちなみに私は朝食をあまり食べないので素泊まり派である。朝はおにぎり一個とかしか食べないのに和食コースなどはきつい。しかし世の中のビジネスホテルは朝食無料プランなどをやっているところが多く、その親切心にはとても感心するのだが、私はコンビニでおにぎりを買ってくるのだった。

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