鈍色の明日
昨日と同じような、
なんの変哲も無い今日が過ぎていく。
そして明日は、今日と同じ1日になるのだろう。
そんな事をぼんやりと考えながら僕は傘を傾け、雨が降り落ちる鈍色の空を見上げた。
ぱたぱたと傘を雨が打つ音を聴きながら、傘を元の位置に戻し、バス停までの短いようで長い道を早足で歩く。
周りの景色などどうせいつも同じなのだから、そう思って周りが見えない程に傘を深く指し、腕時計に目をやった。
バスに乗り遅れない様、更に足を早め、一目散に道路を渡る。
車のヘッドライトに気が付いたのは、衝突するわずか2秒前だった。
永遠に感じる2秒の中で、数え切れない程の後悔が自分を襲う。
ああしていれば、こうしていれば、ああしていたら、こうしていたら、
ああ、やっぱり、
今日は昨日とは違うんだ。
何が起こるか分からないまま、少しの逡巡を思考に置き換える事も出来ないまま、立ち尽くした僕の思考と、視界をヘッドライトが白く染めていく。
痛みと衝撃が走ると同時に白は赤く染まり、 持っていた傘が赤い尾を引いて雨空を舞った。
硬い道路を感じたのも一瞬の出来事で、冷たい雨が顔を打つ。
綺麗な赤と灰色の雨が混ざりあい、僕の周りを渦巻いている。
空を見上げても、もう鈍色は見えず、どんどん暗くなっていく視界を目を打つ雨が奪っていく。
暗く、暗く、黒くなっていく。
昨日は、
「明日も同じ日になるんだろう。」
そう思っていたっけ。
同じ日なんて、
二度と、
来ないんだ。
もう少し、
ほんの少しだけで良かった。
あと少しだけ早く、
その事に気付けたら良かった