見守り続ける
しゃっくりを引きずりながらも、ようやく落ち着いてきたのか、居舞はようやく顔を上げた。
「本当に、ごめんなさい・・・。
せっかくの楽しい時間が・・・」
実際、彼女が思っているほど変化も無かった。むしろ、ずっと緊張してしまっていたのがいい塩梅で解けたくらいだった。
「まあまあ、エエっちことよ。
どうする? 新しく、料理頼む?」
「・・・・ううん。
流石に、いいかな・・・」
「そっか。俺も食い終わっちゃったしなぁ。
どうする? 一旦出て、なんか買い物にでも行こっか?」
気分転換にでもと思って咄嗟に提案したが、どうやら居舞も同意だったらしい。俯いたまま小さくこくんと頷くと、清は伝票を手に、彼女の手を取って席を立たせた。
居舞の顔は、全体的に赤く染まってしまっていた。目の周りと鼻は恐らく先程の号泣が原因なのだろう。若干腫れており、しばらく引きそうにもなかった。頬も同様に赤くなっていたが、何故だか分からず、少なくとも涙の影響ではなさそうだった。
レジでは若いウェイトレスに笑顔で頑張ってくださいねと、よくわからない激励をもらいながら、財布を出そうとする居舞を遮るように会計を済まし、呆気にとられる彼女の手を引いて、そのまま隣のショッピングモールへと入って行った。
「加納くん」
軽く二~三時間ほどモール内を連れ回し、疲れたところで休憩所にてベンチに座っていると、だいぶ立ち直ってきたのか、居舞の方から声を掛けられた。
「ん~?」
「・・・・ありがと。
おかげで、だいぶ落ち着いたよ」
「ほうか。そいつぁ良かった」
居舞は彼の目を見て、微笑みと共にそう呟くように言った。まだ元気になりきってはいないようではあったが、強がりでも笑えるくらいにまでは回復したらしい。
「ウィンドウショッピングっち言うんかいね?
見て回るだけでも楽しいもんなんやな」
もはや彼女の化粧は先刻の号泣で跡形もなく、お色直しで全て落としきってしまい、既にすっぴんだったのだが、それでも彼女は美しかった。淡く微笑む彼女を見て、ひとまず清は安心した。
「・・・ねえ、加納くん」
「ん~?」
「・・・ごめんなさい
ちょっと、呼んでみたかっただけ」
「ほ・・・? そ、そうすか」
その後も、居舞は小さく清の名を繰り返し呟いていた。たまに清の方に目を向けては、彼がそれに気が付き「ん?」と目を合わせると、慌てて彼女は目を逸らしていた。
そうやって十数分が過ぎたあたり。清はおもむろに立ち上がった。
「そろそろ行こっか?
もう、疲れは取れた?」
「・・・・うん。
もう、大丈夫」
そう言って立ち上がる彼女に手を差し伸べながら、二人は再びモール内を歩き回り始めた。




