狩人の隠れ里・前編
「助けていただいてありがとうございます。僕の名前はカケルです。あなたの名前は?」
「イノウェーだ。君のような子供を助けられて嬉しいよ。私はドラゴンハンターを生業としている。そして、たまにこうやって人を救う仕事も一緒にやっているわけさ。」
「すごいですね。」
「だろぉ。」
イノウェーは随分嬉しそうな顔をしていた。
「ぐぅ〜」
急にカケルのお腹が鳴った。
「そういや村から外に出て、ろくなもん食べてないんだった。腹減ったよう。」
「なら、私達のアジトに来い。どのみち誘うつもりでいたがな。」
2人が歩いていると一本の木に立ち止まった。辺りは草原だったがそこだけ不自然に木が一本立っていた。
「何もないけど。」
「いや ここだ」
「天にまします我らが祖よ 祖の力をお貸しください。」
すると目の前に集落が現れた。
「すごい、まるで魔法だ。」
「そう、魔法だよ。私達がエルフより授かりし力だ。そして、ここにいる者達は皆魔法が使える。」
「すげぇ」
カケルが集落の中に入ると、集落が透明な壁のようなもので包まれていることがわかった。
「まるでシャボン玉の中にいるみたいだ。」
「そうだ。外部からはこちらは見えない、触れることさえ出来ない。これもエルフ様の力のおかげだ。」
「エルフ様の力? これも魔法のおかげなんですね。」
「あぁ そうだ、詳しいことはまた後で話すよ。」
「それより食堂へ行こう、まずは君の腹ごしらえが先だ。空腹じゃあ、何も出来んだろう。」
「ありがとうございます。イノウェーさん!」
イノウェーに連れて行かれ、カケルは食堂へと向かった。
「イノウェーさん また新しい子を連れて来たんだね。」
「カケルっていう子だ。シェリルさん、この子にたらふく食べさせてやってくれ。」
「よろしくお願いします。シェリルさん。」
「あら、かわいい子だね。私も料理作るの頑張っちゃうわよ。」
笑顔が優しい食堂の叔母さんは、シェリルさんというらしい。
「おう、お前も来てたのかソラ。こっちに来てくれ。」
「お父さん、また新しい人連れてきたの? 」
「カケル君って言うんだ。歳もお前と近い、仲良くしてやってくれ。」
「よろしくねカケル君。私はソラって言うの。ここは安全なところだからゆっくりしていってね。」
彼女はにっこりしながら、嬉しそうに喋った。
「なんたってこの里には、お父さんがいるからね。ここがドラゴンに襲われたり、危険な目にあったりしないよ。」
「それにお父さんにはエルフの血が流れてるの。清き尊き血だよ。そして、もちろん私にも流れてるのよ。だから、私も偉いのよ。」
「ソラ! 変なことで威張らんんでいい…」
そんなことを話しているうちに、カケルは食事を終えていた。