少年の誓い・後編
少年の名はカケル
村で10歳になったばかりの少年であった。
少年は思っていた。いつかこの村を出て行っていろんなところを旅してみたいと。
「青い空がこんなにいっぱい広がってるのになんで村を出ちゃいけないんだろう。」
「青い空なんかあるものか。」
通りがかった男が言った。
「村の外に出たら、ドラゴンに焼き殺される。そこから帰って来たものはいない。それに1年に1度は生贄を捧げなければならん。これでは人間は増えん。完全に人間はドラゴンによって支配されている。」
「だからって、一生このままこの村で過ごしていいの?」
少年は言葉を返した。
「…」
男は黙った。
「だけどな坊主、命あっての物種だ。この村で出来ることだってあるはずだ。この村でその仕事を一生やるっていうことも大事なことなんだ。」
「僕はやだよ。意気地なしなんて。」
少年は村の門へ走り出した。
(僕が村を出ていったら、この人だってきっと気持ちが変わるはずだ。)
「おい、待て 少年」
少年は村の外に出た。
するとそこには1匹のドラゴンが待ち構えていた。
「なんだ ガキかよ、身がすくねぇ」
「たまに村から出て来るアホな人間食うのが俺の日課だってのに 今日のおやつはしょっべなぁ。俺は人間の足が好きなんだよ。長くてしゃぶれる奴がよ。」
言葉が出なかった。何も考えることができなかった。
ただ、僕は無我夢中で逃げていた。なぜか、森の方へ。ドラゴンの眼から見えなくなることだけを考えていた。
「なんだあのガキ、食おうとしてたらすぐどっか行っちまった。まぁ クソみたいな肉しかないからどうでもいいか。」
するとまた門が開く。
「おい 大丈夫か! 少年!ドラゴンの声が聞こえたが…」
(おっちゃん!)声が出なかった。
「おっ うまそうな足見っけ これこそおやつって奴だ」
「なんだ! うぁっ」
「やめろ やめてくれ!うわあぁぁぁ」
(おっちゃん… 俺のせいで)
俺は途方に暮れていた。 ただ、生きなきゃならない。
そして ドラゴンを倒すんだ おっちゃんのためにも。自分のためにも。