少年の誓い・前編
「絶対に竜を退治してやる」
10歳の少年の誓いである。
暗黒の世界 世界の大部分はドラゴンによって支配されていた。
人間が住める世界はごく僅か 世界の片隅に追いやられていた まるで学校の教室のすみっこにいる気分だ。
しかし ドラゴン達は完全に人間達を滅ぼそうとしていたわけではなかった。
元々 この世界は人間が頂点に君臨していたのだが どこからともなくドラゴンが現れ あっという間に世界を支配していった。
そして ドラゴン達は人間を世界の片隅に追いやると この状況を楽しみ始めた。
「世界の頂点に立っていた人間たちは追い詰められるとどんな反応をするのか 非力な自分達を憎むのか それとも団結しあい 新たな力で私達を圧倒するのか」
ある意味 そんな考えがドラゴン達の余興になっていた。
高い知能を持ち この世界を長い間支配してきた人間達を追い詰めてはいたが全滅させるには惜しい存在だと思っていたのだ。
やがて ドラゴンの中には人間を研究する者やペットとして飼いたいと思うものまで現れた。
この考えこそがドラゴンの余裕の現れであり 怠慢なのであった。