#5 presto(プレスト)
書けば書くほど、小説って難しいなというのを実感しています。第5話スタートです。
特別棟地下1階に着いた。なんていう広さなのだろう。高さは40m程あるだろうか。床壁一面コンクリートむき出しって感じだ。この広さなら思う存分戦えそうだ。
「奏くん。無理はしないでね…。」
桐島さんが心配そうな目を向け言う。
「そこは、頑張れって言って欲しいよ」
「うん、そうだね。だけど、あいつ相当ヤバそうだよ。」
確かに、あいつは口だけでは無いようだ。どうやってあそこまでの力を…。
♢
「試合のルールを説明する。勝利条件は、対戦相手の戦闘不能、または降伏。男の試合に水を差すようなことはしたくないが、あまりに危険な状態ならこちらから止める場合もある。構わないな。」
『『構わない。』』
まずは相手の固有魔法が何かっていう所から探って、後は僕の固有魔法でたたみかけよう。
「それでは両者、位置について。試合開始!!」
試合開始直後、動き始めたのは冬樹だった。冬樹の頭上に巨大な氷の塊が生成されている。
なんだあのバカでかい氷塊は。あんなものくらったら死んでしまう。
「紹介が遅れたね、俺の固有魔法は10歳の時に発現したものなんた。名を氷。簡単にいえば、水分を凍らせる魔術さ。さぁ避けないと死ぬよ!(見せてみろよお前の固有魔法!)」
生成された氷塊が奏へと落ちてゆく。
そしてものすごい轟音とともに着弾した。
しかしその瞬間、滑らかなバイオリンの音色が聞こえてきた。
これは、ベートーヴェンの交響曲第3番だろうか。
「これが蒼原の固有魔法…。」
途端に氷塊が粉々に弾け飛んだ。舞い上がった煙の中には人影が見えた。
「この曲は”英雄”っていうんだ。ベートーヴェンがナポレオンのために書いたんだけど…ってこんな話は興味無いよね。僕の固有魔法は8歳の時に発現したよ。名前は独奏音符。音を具現化する。」
♢
固有魔法についての話をしよう。固有魔法の発現は決して簡単にはいかない。発現には2つ方法がある。1つ目は鍛錬だ。気が遠くなるような程修行をして、やっと発現する。(才能に左右される部分は大きい)
2つ目は過度のストレスだ。身体、または脳や精神に大きな負荷がかかることによって稀に発現することがある。
2人は共に後者だ。この年で固有魔法を有しているというのは壮絶な過去があったことを表しているのだ。
♢
「音を…具現化…か。ならば、これは受けきれるか?
氷針!」
冬樹が手を天井に突きつけると、天井を数百、いや数千のつららで覆った。突き上げていた手を下ろすと全てのつららが奏へ落ちていった。
「…ッ!”presto”(きわめて速く)!」
僕が出来る最速の速さで音を叩き出しているが、…くっ、なんて量だ。受けきれない…!
…ッ!2発のつららをくらってしまった。右足と左腕にくい込んでいる。だが…。
「…!左頬から血が…?まさか、あれを受けながら攻撃までしていたのか!」
2発受けちまったがな。本当は顔面を潰す気だったんだが無意識に避けたらしい。
「蒼原、強いんだな。」
「そう言いながらも、、嬉しそう顔してるな。」
「ふっ…分かるか。」
おそらく冬樹は僕が固有魔法を使えると聞いた時から僕の実力を認めていたはずだ。それでも戦いを選んだのは、
「分かるよ。自分より強いかもしれない相手が現れたんだもんな。ワクワクするよ。僕も同じだ。」
「全てお見通しってわけか、蒼原が思っている通り、初めから蒼原の実力を疑っていたわけじゃあない。試したかったんだ。俺と蒼原、どっちが強いのかってね。」
「なら続きを始めよう。君の本気が見たい。」
「いいだろう。俺もそう思ってたところだ!」
部屋の気温が下がる。息が白い。
「実は俺は遠距離戦闘が苦手なんだ。」
氷の渦が冬樹を包む。…渦が晴れると白い装備を身にまとった冬樹が現れた。
「名を”白騎士”。近接専用モードだ。」
読んでいただきありがとうございます。後から読み返すと自分でもなんかイマイチだと感じてしまいます。
アドバイスがあればよろしくお願い致します。
次回蒼原VS冬樹 決着です。