#2 fortissimo(フォルティッシモ)
書きながら考えているので内容がくどいかもしれません。もしその場合はアドバイスをよろしくお願いします。
「不協和音は嫌いなんだ。」
そう言ってファントムの前に現れた少年は、奏だった。
「…ッ!俺の攻撃を、、人間風情が防いだだと…?な、なんなんだテメェは!?」
すると奏は、何も無い空間からバイオリンと弓を取り出した。
「ただのバイオリニストさ。ちなみに、不協和音っていうのは、平和な毎日を乱す君のような存在のことを言うんだよ。」
「おいおい、まさかそんなオモチャでこの俺に勝つつもりじゃないだろうなァ?この俺の固有魔法、”炎”にィ!」
「そのオモチャにこれから負けるんだから、あまり墓穴を掘らない方がいいよ。」
別に意地を張って言ってる訳では無い。ちゃんと勝てる確証があるつもりだ。しかし、あの炎弾の火力を目の当たりにした少女からすると勝ち目はないと思われているらしい。少女はファントムに聞こえないくらいの小さな声で喋り始めた。
『ちょっと、あんまり挑発しない方がいいでしょ!あなたには関係ないんだからもう逃げて。さっきの攻撃を防いだのはビックリしたけど、あんなまぐれ、そうそう起きないわよ。』
ー大丈夫。僕は。あいつより強いー
奏がそう言ったような気がした。
「ファントムさん。どうせなら一曲聞いていってよ。」
そう言うと、奏はバイオリンを構え、深く息を吸う。そして息を吐くと同時に、演奏を始めた。
「これは…!?幻覚…かッ?」
「…!」
驚くのも無理はない。言葉にするのは難しいが、その場に居たものは後にこう語った。”音が宙を舞っていた”と。
「残念だけど現実だよ。僕の固有魔法は”独奏音符”。音を具現化し操る力。」
「音を具現化だとォ?おいおい、そりゃあ音楽家としては最高の魔法だがよォ。俺に勝てるとは到底思えないぜ?
…ッハハハハハハハハ!そろそろ死ぬかァ?」
ファントムは、先程少女に放った炎弾の数倍はあろうかという大きさの炎弾を作りだした。
「気持ちよさそうに演奏してるとこわりぃけどよォ、もう失せろ。」
奏に向かって巨大炎弾を放つ。そしてそれは、残りコンマ数秒で奏に当たってしまう、そんな時だった。
「”-fortissimo-”(きわめて強く)」
「…ッガハ…。」
奏の目の前で炎弾は消滅し、ファントムの腹には風穴が空いていた。
「音楽は心。音楽は表現したい気持ちや心がダイレクトに伝わる。それは僕の魔法でも同じことなんだ。」
きわめて強くという意味を持つフォルティッシモを意識して放つ音符は、今までの魅せるだけの音符と違い、しっかりとしたパワーと重さを持つ攻撃魔法へと変化したのだ。
「す…すごい…。」
こうして奏の活躍により、ファントム襲撃事件は幕を閉じたのである。
♢
桜のつぼみが開花し始める少し寒さの残る春。少し早いが桜花私立第一魔術学園では入学式が行われる。
ファントム襲撃事件からは2ヶ月程経ったが、いまだにマスコミが来ることもある。ハザードレベル2のファントムを中学生が倒したということはなかなかあることではないのでちょっとしたニュースになっていた。
クラス分けの掲示物を眺めていると誰かから声をかけられた。
「あー!君…、もしかしてもしかして、あの時私を助けてくれた蒼原 奏くんじゃない?」
あの時…?あ、あの女の子か!僕を覚えてくれてるなんて、恩を売っておいてよかったなぁ。ってなんで僕の名前を…?
「あ、なんで君の名前を知ってるかだけど、新聞に載ってたから覚えちゃったのよ!かなでくん!」
「え!読心魔法!?」
「なにが!? あ、そうだ、私も自己紹介してなかったね。
私の名前は桃葉。桐島 桃葉。よろしくね!」
ん?あれ、そういえばどこかでこの名前見たことある。
どこだっけ。あ、そうだ。
「桐島さんってもしかしてA組?」
「そうだよ!奏くんも一緒だったみたいだね!」
僕は小さくガッツポーズをした。可愛い子と同じクラスってことだけでなく、友達が出来なくて一人ぼっちで弁当を食べるという状況を回避できたことが何より嬉しかった。
♢
こうして僕の学園生活はスタートを切ったわけだけど、初めに事件が起きたのは学園内で行われたスポーツテストの時だった。
お疲れさまです。読んでいただけてありがとうございます。自己満の小説になってきた気がします。
20話くらいは書きたいので、末永くよろしくお願いします。