ジャンヌ
その女性はおそらく20〜23ぐらいの年齢で超絶美少女とは言わないが綺麗なお姉さんであった。
しかし、少しほっとけないような印象を抱かせる。
見ず知らずの俺を助けてくれるあたりかなりお人好しなのだろう。
言葉が通じず名前を聞くこともできないのでこの人の事は勝手に聖母ジャンヌと呼ぶことにした。
聖母ジャンヌは村から少し離れた木造一軒家に住んでいた。
かなり立派な家だが、一人で住むには広すぎる。
靴や家具などから見ても両親と一緒に住んでいることがわかる。
だが、両親がいるような気配はない。仕事にでも出ているのだろうか。
ジャンヌがタンスから服を取り出してなにか話しかけてきた。
「ーーーーーーー」
これを着ろと言うことなのだろうか。
おそらくお父さんのものであろうその村人Aのような服を着る。
なかなか様になっている。
勇者様でも来たら「この村はとってもいい村ですよ!」と話しかけてくるたびに言ってやろう。
案内されるがままに椅子に腰掛ける。
ジャンヌはお茶を用意してくれ、ひたすら俺に話しかけてくる。
「ーーーーーーーー」
「ーーーーー!?」
「ーーーーーーーーー!!!」
なるほどなるほど。
さっぱりわからん。
とりあえず抱いてくれって言ってる?
言ってねぇか。
表情からみるに言葉が通じなくて焦っているようだ。焦るのはわかる。だが、俺は焦りは通りこして余裕が出てきた。
自分より焦っている人を見るとすごく落ち着く。
あぁジャンヌが出してくれたお茶うめぇな。
するとおもむろに立ち上がりなにやらたくさん本を持ってきた。
そしてなにやら一文字ずつ発音しだした。
え。
もしかして語学の授業始まってる?
勘弁してくださいよジャンヌ先生〜。
英語は平均点以上とったことないんすよ。
スピードラーニングみたいなんないすか?
ジャンヌさんの必死に俺に言葉を教えてくれようとする姿を見て少し反省する。
この人はなぜ見ず知らずの俺になぜこんなにも優しいのだろうか。
少し異常なくらい優しい。
親切というよりも必死さが伝わってくる。
無理をしている。
笑顔で言葉を教えてくれる彼女はなぜだか少し寂しそうに見えた。
それを必死に押し殺して笑っている。
彼女は何なのだろうか。
そんなことを思いながらも、授業は進んでいく。