言葉の壁
本格的に自分が訳のわからない田舎にいることを理解した。
そしてさらに恐ろしいことに気がついた。
「やばいやばいやばいなにがやばいって本当にやばい」
チラッと村を覗いてみるとそこにいたのな目鼻くっきりの外国人である。
そこまではよかった。
しかし、明らかに獣の姿で二足歩行する生き物や翼が生えたやつなんかもいる。
姿は様々でトカゲからライオンのようなやつまでいる。
「こっわ」
確実に人を食べるフレンズだよねあれ。
ダッシュで村から離れて、少し離れた木の陰で休みながら状況を整理する。
「なるほど。ここは地球でないと。」
詰んでら。
つまり異世界。
「異世界転生?死んでないし。異世界移動という方が正しいのか?
あれは、あれ。あの神様やら女神様からもらえる特殊能力みたいやつ。あれないんすか。」
試しに空に話しかけてみたが何とも返事がない。
ものすごく虚しい。
ハタから見れば空に話しかけている青年である。
ママー、あの人何してるの?シッ!見ちゃいけません!なんて声が聞こえてくる気がする。
「どうすっかなぁ。」
色々考えてみたがまずはコミュニケーションであるという考えに至った。
恐ろしい獣人のようならやつらはともかく人間にならば話しかけてみることができるだろう。
人間と獣人たちが普通に街を歩いていることから考えるにあの獣人たちは人間を襲わないことがわかる。
よし!いける、いけるぞ!
まずは自然に挨拶からだな。
さっそく村に入り歩いている人間の女性に挨拶を試みる。
「こ、こんにちはー、、、」
「!???」
やってしまった!
完全に不審がられている。
当然だ。
もし俺が街中を歩いていて知らない人から突然「こんにちはー」などと言われれば少し恐怖する。
「え、知ってる人?いや知らないよこんな人何この人怖い」などと思ってしまう。
しかし、なんだか不審がっているとともに困った顔をしている。
ん?なんて言ったの?みたいな顔。
まさか言葉通じてない?
そんなまさか。
神さまその辺はなんとかしていてよおねがぁい!
日本語なんて通じるわけがない。
英語ならワンチャンか?
いや無理だな。さっきからよくわからない言語を発している。これは地球のどの言語にもなさそうな感じだ。
話は変わるが何で外人は日本に来て英語で道聞いてくんの?俺らが海外行ったら英語の本持って「エクスキューズミー」って言いながら道聞くじゃん。
なんであいつら日本来ても英語で話すの?
今度海外行ったら「よう!こんちにわ!道教えてくれねぇか?」って言ってやろう。
今の俺はまさにそれだ。
なぜ異世界に来て自分の世界の国の言葉が通じると思ったのか。
とりあえず「ソーリー」とだけ言ってその場を後にしようとする。
すると、「ーーーーーーーーーーーーー!!」
なんて言ってるか分からないがなんだか手を掴んで引き止めてきた。
なんですか、あなたのお店可愛い子でもいるんですか。お金なんてありませんよ。
どうやら俺がよほど困ってそうな顔をしてたらしく家に案内してくれた。
そんな困り顔でしたか?生まれつきなんですけど。
おそらく寝巻きに裸足というのが目に付いたのだろう。
「訳あり少年を保護」みたいな母性溢れる行動なのだろうか。バブみ最高。